表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

 夜遅く、青髪の少女が俺の元へ訪れた。

 侍女の話によると、都合がつくようなら、今、面会したい、そうだ。

 たかが、新人宮廷騎士が王に会いに来るということは本来あり得るはずがない。だが、消す前に一度会って、話をしてみたいとは思っていたので、彼女の要望を応えることにした。

『こんばんは、エイル三世陛下、いや、こう言った方がいいでしょうか?   』

 俺は彼女の口から自分の本当の名前が出てくるとは思わなかった。その時、俺の近くに控えていた彼は懐にある剣を握りしめていた。

『私は決して闘いに来たわけではありません。ただ詠いに来ただけです』

 それを聞いて、彼は勿論、俺はポカンと彼女を見た。話し合いに来たと言うなら、まだ話は分かる。彼の話によると、彼女は彼をこの城から出そうとしているのだから。

『話し合いで解決しているのなら、私はここまで回りくどいことをする必要はありません』

 彼女は俺の心の中でも読んだのではないか、と思うくらい適切なことを言ってくる。

『今回訪れたのは貴方に伝えたいことがあります。ただ、それは言葉では伝わるものではありません。だから、詠いに来ました』

『………てめえはいつの間に吟遊詩人になったんだ?』

 今まで、黙っていた彼がそんなことを言ってくる。確かに、彼女の剣の腕前は結構のものだが、彼女に唄の才能があったとは聞いたことがない。

『私はこれでもいろいろな特技を持っています。馬術は以前会った道楽貴族さんに教えてもらいましたし、狩りは父に教わりました。社交ダンスも一通り踊れます。唄は旅をしている吟遊詩人さんに教わりました。まだ吟遊詩人さんのように上手く唄を作ることはできませんが、一通りはできます』

 彼女はそんなことを言ってくる。いつも思うことだが、この少女は一体何者なのだろうか?

『………なら、詠って見せよ』

 俺は興味心が湧き、彼女にそう言うと、彼女は詠いだした。

 彼女が紡いだ唄は青い鳥を巡る少年少女の話だった。

 途中で、黒犬の訪問で、俺は最後まで聞くことはなかった。

 だが、俺は心の中でモヤモヤした気持ちが生まれる。

 彼女はあの唄を通して、何が言いたかったというのだ?

 黒犬は渡さないと言いたいのだろうか?もしそうなら………、

『………黒犬はだれにも渡さない』

 俺はそう呟く。

 例え、黒犬の心がもうあの少女の方へいっていたとしても、俺は渡さない。渡したくない。

 もう、俺を癒してくれる者は彼しかいないのだから。


***

 あの後、俺は翡翠の騎士に青い鳥が見つかったと、連絡すると、血相を変えて中庭までやってきた。翡翠の騎士による説教は免れないだろう。

 青い鳥はバツの悪そうな様子をして、翡翠の騎士に謝っていたが、彼の怒りはそれだけでは治まることはないだろう。

 なんたって、断りも入れずに敵の本拠地に行っていたのだから。

 翡翠の騎士に一言でも言えば、彼が口添えでもして、王に会うことができただろうに、あいつはその方法を取らなかった。おそらく、あいつなりの配慮だったとは思うが。

 そんなわけで、あいつは翡翠の騎士に連れていかれた。おそらく、彼によるお説教タイムは一夜越してしまうだろう。あいつはそれくらいのことをしたのだから、同情はしない。

 あいつが翡翠の騎士の後へ行く前に、俺を見て、『わざわざ探してくれてありがとうございます』とだけ言って、いなくなってしまった。

 俺は部屋に戻り、すぐに眠りに落ちた。


『あんた、大丈夫か?』

 俺はそう少年に声を掛ける。彼はフードを被っていた為、どんな容姿をしていたかは分からなかった。

『………ああ、ありがとう』

 少年はそう言ってくる。


 あれは五年前だっただろうか?いつの話だったかは覚えていないが、その日、俺は赤犬さんに魔法を教わる為、王都に来ていた。そして、その日は何故か、青い鳥も付いて来た。青い鳥は「王都は今、騒がしいです。何かいいことがあります」と、良く分からないことを言っていたが、王都に着くと、青い鳥の話通り、お祭りモード一色となっていた。青い鳥はそのままお祭りで騒いでいる人だかりの中へ消えて行った。

 あいつのことだ。気が済んだら、帰ってくるだろうと思い、赤犬さんの家に向かったわけだが、あいつはお昼になっても帰ってこなかった。仕方なく、俺はあいつ捜索のため、王都を歩いていた。その時、数人のガラの悪い少年達に絡まれていた一人の少年を見つけた。

 俺は青い鳥と違って、ああ言った連中をあしらう方法を知らなかった。とは言え、そのままにして置くわけにもいかないので、俺は習ったばかりの魔法を使って、突風を起こし、彼らが怯んだうちに、その少年の手を引き、走った。

 彼らの姿が見えなくなったところで、俺はその少年を見た。彼の容姿は分からないが、彼のきているフードは高価そうな生地を使っていたので、何処かのいいところの出だということは分かった。

『ここまでくれば、追ってこないだろう。あんたみたいな奴は一人で歩かない方がいいぞ。王都と言っても、ああ言った連中は結構いるからな』

 俺がそう言うと、彼は驚いた様子を見せ、

『………王都って、治安がいいんじゃないのか?』

 そんなことを言ってくる。

『確かに、他と比べれば、治安はいいといえるかもしれないが、この国、戦争とか、紛争が絶えないから、貧困に喘ぐ人が多いんだよ』

 王都の外れに行けば、貧困街があるって、青い鳥も言っていたし、と俺がそう言うと、

『………青い鳥?お前、鳥と友達なのか?』

 彼はそんなことを言ってくる。確かに、あいつは鳥のようにいろんなところに飛んで行ってしまう習性はあるが。

『一応、分類上は人だ。変人奇人と言ってしまえる奴ではあるが。そうだ、あんた。青い髪で、青い目をした少女見なかったか?そいつが青い鳥とか名乗る変人なんだが、お昼の時間だというのに、帰って来ないんだよ』

 俺がそう彼に尋ねると、彼は首を横に振る。

『いいや。青い髪に青い目の少女は見なかった』

『そうか。あいつに会ったら、インパクトが強すぎて忘れることはないだろうからな。まあ、あいつは放っておいても、どうにかなりそうだしな。あんたは何処に向かおうとしていたんだ?良ければ、そこまで連れて行こうか?』

 また奴らに絡まれるのは嫌だろ?と俺がそう言うと、

『………何で、俺にそこまで良くしてくれるんだ?血の繋がった両親でも信じられないのに、まして、あんたはさっき会ったばかりの赤の他人だろ』

 彼は俺を疑うような視線で見てくる。彼がどんな目に遭って来たのかは知らないが、ふいにとても可哀想に思えた。

 赤の他人が信じられないのは分かる。俺も他人を信じられない時があったから。

 でも、両親を信じられないのはおかしい。彼らは俺達の唯一の味方であっても、敵にはならないはずだ。

『………俺の友達なのか、悪友なのか知らないが、青い鳥と言う奴がいるのは言ったよな?青い鳥は両親と離れ離れになって暮らしている。原因は知らないが、勘当されて、故郷から追い出されたらしい。その為、そいつは信頼できる人間がいない状態で、俺の故郷に来た。俺の故郷に、そいつの血縁者がいたらしいが、その血縁者とも初対面だったらしい』

 あいつは白紙の状態で、頑張っていかなくてはいけなかった。小さかったら、まだ良かったが、あいつが来たのは8歳。同年代の子達はグループがある程度作られており、簡単に入っていけるものではない。

 そんな時、俺達は出会った。俺は町の子供たちのいじめられる対象だったから、一人だった。だから、俺とあいつは良好な関係を築けたのかもしれない。

『あいつはそれでも、人を疑わなかった。まず最初に、人を信じて、理解しようと努力した』

 あいつにどんな過去を持っているか分からない。両親に勘当されたのだから、捨てられたも同然だろう。なのに、あいつは悲しそうな様子を見せずに、自分の居場所を作ろうと頑張っていた。

『人と言う生き物は周りに迷惑を掛けなければいけない生き物だ。だから、傷つき、傷つける。だからと言って、殻にこもってはいけないと思う。全てを信じろとは言わない。でも、信じられる人は一人でもいるはずだ。信じられる人間が一人もいなくて、生きていける人はそうはいない。だから、信じられる人だけ、その人を理解して、心を開いた方がいい。そうでもしないと、心が持たないから』

 人は休める居場所を欲するものだから、と、俺がそう言うと、彼は始めて笑ったような気がした。

 俺があいつに居場所を貰ったのと同じように、彼にも居場所を作ってくれる人がいると思うから。


 俺はパッと目がさめ、身体を起こす。

 宮廷魔法使いになってから、過去の夢を見ることが多いと思う。まだ二回しか見ていないから、何とも言えないが、魔法使いが夢を見ることは普通の人が夢を見るのと訳が違う。

 もともと、夢を見ることは頭の整理をする為と言われている。とある一節では、魔法使いの場合、無意識的に、魔法を展開して、自分に必要な情報を見せているのではないかと言われている。

 それが過去の夢だったり、予知夢だったり、人それぞれである。とは言え、それが魔法使い全部に当てはまるというわけではなく、一部の魔法使い、幻術魔法やそう言った類に長けているものが視やすいと言われている。

 武道大会の時、俺は赤犬さんに前見た夢について相談した。彼女曰く、鏡の中の支配者(スローネ)がそう言うタイプだったらしく、昔、孤児院に隕石が落ちてくる夢を見たらしい。その時、赤犬さん達は信じなかったそうだが、彼らの師匠でもある赤猫さんにその話をすると、彼は顔を真っ青にして、その孤児院に行ったらしい。その時、近くで、魔法使いの青年が悪ふざけで隕石を出現させたらしく、孤児院にぶつかるところだったという。あわやと言うところで、赤猫さんがその隕石を粉砕したらしいが、本当だったら、死人が出てもおかしくなかった状態だったらしい。

 赤犬さんの推測によると、今回の件と俺にはあまり接点のないことだったので、ああ言った夢を見ただけで、俺の過去と接点がある出来事があった場合、その夢は重要な意味を持つらしい。

 今回の夢も前回の夢同様補足的な夢かもしれないし、もしかしたら、重要な夢なのかもしれない。一応、青い鳥にも意見を聞いた方がいいかもしれない。

 そんなことを思っていると、ノックの音が聴こえてきた。こんな朝早くから何の用だろうか?

 俺はパジャマ姿では不味いとは思うが、訪問者を待たせるわけにも行かないので、扉を開けると、デジャブ。

「………お早うございます」

「前に、俺は言ったよな?てめえは目上にパジャマ姿で対応するように躾けられたのか?と。まあ、今回は別にいい。入んぞ」

 黒龍さんがそんなことを言って、ズカズカと俺の部屋へと入っていく。

「………はい?」

 何故、この人が俺の部屋に入ってきたのか、知らないが、追い出すこともできず、俺はその場で固まるしかできなかった。

黒龍さんが俺の部屋に入ると、ソファーにドシリと座り、

「………てめえは何処まで理解してやがる?」

 そんなことを言ってくる。俺は彼が言いたいことがいまいち理解が出来ずにいると、

「この城のシステムを何処まで知っている?」

 彼はそう言い直して言ってくる。

 どうして、彼がそんなことを訊いてくるのか、分からない。そんなことを訊いて、彼にどんなメリットがあるというのだろうか?

「………このシステムがエイル三世陛下の為に、貴方が創ったということと、俺が見たエイル三世陛下ではないというところは」

 俺は黒龍さんに促されるまま言う。おそらく、彼は俺達がこのシステムのことを知ってしまったことに気付かないほど愚かではない。

 とは言え、俺が知っているのはそれだけだ。青い鳥なら、エイル三世陛下となりすましている人物が誰なのか、気付いているのかもしれないが………。

 すると、彼は別に害した様子もなく、俺を見て、

「蒼狐や赤犬も気付かなかったシステムをここまで把握したのは感嘆するべきなのかもしれねえな」

 俺は少々、お前達を舐め過ぎていたのかもしれねえな、と呟いていた。

「どうせ、遅かれ、早かれ知ることになる話だ。とは言え、知ったからには、はっきり答えを貰わなくてはいけねえな?黒犬」

 お前はこっち側に着くのか?それとも、敵対するのか?そう、彼は言ってくる。だが、黒龍さん達の方につくつもりだったら、俺は、いや、俺達はこんな馬鹿げたことをしでかしていない。

「これが最終警告だ。俺達にたてつくつもりなら、お前の信じているものを完膚無きまで壊す。手始めに、青い鳥だ」

 あの小娘は王の障害になるからな、と彼は言ってくる。

「三日はくれてやるから、その間に答えを出せ。だが、それ以上は待つつもりはない」

 話はそれで終わりだと言わんばかりに、部屋を出ていこうとする。

「ちょっと待って下さい」

 俺は思わず、彼を止める。すると、彼は怪訝そうに振り返る。

「………貴方に教えてほしいことがあります。貴方達はそこまで俺を手元に置いておきたいのですか?俺は赤犬さんや鏡の中の支配者の足もとに及ばないし、俺を切り捨てたって、俺くらいの魔法使いは掃いて捨てるほどいるはずです」

 彼らがそこまでして俺に拘る理由が分からない。

「………確かに、今のお前くらいの魔法使いはたくさんいる。だが、同時に、お前には可能性がある。並みの魔法使い、いや、あの蒼狐を超えるくらいのな」

 彼はそんなことを言ってくる。俺が鏡の中の支配者を超えるくらいの可能性?そんなはずがない。俺は魔法使いとして、特に優れた魔法があるわけでもないし、魔力だって結構ある方だとは言え、飛び出てるわけでもない。それに、俺は鏡の中の支配者(スローネ)のような特殊な魔法は使えない。

「お前は魔法使いとしての才能に恵まれている方ではないかもしれない。だが、お前の柔軟な思考は魔法使いにとっては一種の才能と言ってもいい」

 お前は俺や赤犬が考え付くことのない魔法を思いつく、と彼はそんなことを言ってくる。俺はそれを聞いて、彼は俺が得意とする召喚魔法の正体を知っているのだろうか?

「それでも、俺は王に使えると思われる程の実力は持ち合わせてはいないと思います」

 かつて、鏡の中の支配者(スローネ)は王の推薦を受けた。彼が王の推薦を受けるほどの実力を持っていたことは分かる。だが、俺はどうなのだろうか?俺は王の推薦を受けるほどの実力を持ちえているのか疑問が残る。

 親の権力で入った宮廷魔法使いよりは実力があると思うが、実力で入った宮廷魔法使いと同等の実力を持っているのかは謎である。

「俺はお前のことを買っている。なんせ、赤犬がお前のことを弟子にするくらいだからな。だが、王がお前を手持ちにおいておきたいと至たった理由は別だ」

 彼は俺を見据え、

「王はお前を必要としている。だが、お前の腕を必要としているわけではねえ」

 そんなことを言ってくる。

「お前に話してやれるのはそこまでだ。理由を知りたいなら、自分の胸にでも聞くんだな」

 彼はそれだけ言って、部屋から出て行ってしまった。

 王が魔法使いとしてではなく、俺を必要としている?何故、王が俺なんかを必要としているのか分からないが………、

「………王が俺を必要としている理由を俺が知っている?」

 そんなことはない。俺は城に上がるまで、王と会ったことなどないのだ。そんな俺がどうやって、王と接点を持つというんだ?

 一体、俺は何の為に王に求められてというのだろうか?

 そんなことを思っていると、今度はノックもなく、扉が開く。

「お早うございます。お弁当箱を持ってきました。また詰めて下さい」

 青い鳥がタイミングよく現れる。ただ、これはいつもの如く、偶然ではなく、必然のことだろう。こいつのことだから、黒龍さんがいなくなった後を見計らってやってきたのだろう。

「お前はまた昼はお弁当で食べるのか………って、昨日よりだいぶサイズがビックになっているような気がするが、気のせいか?」

 俺は青い鳥の持っている重箱を見る。昨日は三段だったが、今日は五段になってやがる。あれだけの量でも足らなかったといいたいのか?

「気の所為ではありません。今日、お弁当を食べていたら、先輩達にいくらか盗られてしまいました。だから、今回は盗られても、足りるように多めに作ってもらおうと思いました」

 こいつが宮廷騎士達におかずを盗られて、涙を浮かべる姿を浮かべる。あいつは余程のことでは泣かないが、自分の好物が盗られた時は例外だ。弟達に食べられてしまい、泣いていたのがいい例だ。

 とは言え、そこまで宮廷騎士達と馴染むことができているのは俺にとって嬉しいことだ。あいつはこの城内でも異質な存在だ。なんたって、例外的に宮廷騎士になり、武道大会では翡翠の騎士と引き分けに持っていったという前代未聞のことをしでかしたのだ。人と言うのは異質や異端を敬遠する傾向がある。だから、こいつは孤立しているものばかりと思っていたが、そう言うわけではないようである。

「また厨房を借りなくてはいけないのか」

 俺は溜息を洩らす。この部屋に、調理器具などあるはずがないので、厨房に行き、少しの間貸してもらった。その時、コックは驚いていたが、青い鳥が一緒に頼んでくれたので(あいつが頼んできたことなので、当たり前と言えば、当たり前のことだが)、すんなり貸してくれた。

 とは言え、コック達は人のいい人ばかりのようで、少しばかりしか話していないのに、仲良くなってしまった。忙しい時間帯でなければ、いつでも貸してくれると言ってくれた。

 城では俺達を快く思わない奴らが多いと思うが、同時に、俺達を歓迎してくれる人たちもいる。ここに入ったばかりはここから出たくて仕方なかったが、今はここにいるのが心地良くなっている。あの件さえなければ、ここで働いていたいと思う。だが、俺には時限爆弾が常に付いて回っている。そう、いつ爆発してもおかしくない爆弾が………。

 だから、俺はこのシステムから脱出しなければならない。俺達がここを出たからと言って、ここで築いていった絆や縁というものが切れて無くなるとも思えない。

 俺達がここから出ることが出来た時、いつか、彼らと会い、この出来事を笑いながら、思い出話として咲かすことが出来ればいいと思う。その為に、俺は頑張らなくてはいけない。俺に付き合ってくれている青い鳥と一緒に………。

「………さっき、黒龍さんがここに来た。三日後に答えを出せとな」

 先ほど言われたことを青い鳥に言う。

 黒龍さんは決着を付けようと仕掛けてきた。つまり、俺達の運命は三日後に決まる。俺達がシステムをぶち壊すことが出来るか、それとも、黒龍さんに食われてしまうか?

 俺達がこの城にやってきて一か月間の俺達と黒龍さんの攻防の終止符が打たれる。たとえ、それがどんな結末だとしても………。

「………そろそろ仕掛けてくると思いました」

 こいつは予見していたかのように言うが、

「どうせ、仕掛けたのはお前だろうが」

 昨日、王のところに殴り込みに行ったのは他ならぬこいつだ。何故、あいつがあの唄を詠ったのかはその意図は掴めないが……。

「確かに、私は王のところに行きました。ですが、私は喧嘩を売りに行ったわけではありません。私は無性に詠いたくなったので、詠いに行っただけのことです」

「………なら、王のところじゃなくても、俺や翡翠の騎士のところで詠えばいいだろうが」

 俺は正論を言うが、こいつにそんなことを言っても、意味がないことは分かっている。こいつが王の所に行ったのがそれも理由の一つだとしても、それ以外の他の理由があるはずだ。こいつは無意味なことをしない。おそらく、こいつが王の元へ単独で行ったのは少なからず俺にも関係があるはずだ。

「………俺が推薦を貰った理由が俺自身にあるそうだ」

 俺は呟くようにそう言う。俺と王がここに来る前に面識があると言うなら、恐らく、俺は王の正体を知っている。

 だが、俺は全くと言ってもいいほど、思い当たりがない。

「お前は王の正体を知っているんだろう?王は誰なんだ?」

 俺が王の正体を知らない限り、王が俺を推薦した理由は分からない。そして、その理由を知らない限り、俺は王達と対峙することが出来ない。

 どうして、俺達が黒龍さん達と対峙しなければならないのか、を。

「……確かに、私は王の正体を知っています。ですが、私はそれを応えることができません。それは貴方自身が見つけなければならないことです。とは言え、貴方がそれを知らなければならないことも事実です」

 こいつはそう言って、俺を見る。

「貴方が真実を知る覚悟があるなら、今日の夜、部屋で待っていて下さい。その答えを教えることのできる人に会わせます」

感想、誤字・脱字などがありましたら、お願いします。

次回投稿予定は12月29日となります。

やや早いですが、メリークリスマス!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ