奪われる
「怪我はない?」
カナタの問いにフミナはないと言うが、それよりもと言う
「うん……大丈夫じゃ無いけど…大丈夫。それより早くみんなを焼かないと」
「えっ焼く…そりゃ確かに埋めてあげたいけど…早すぎない?今日くらいは」
「いやだめだ…隕石に付着していたウィルスは数年前進化し、死んだ動物に寄生することが出来るようになった。今の牛もどこかで死んでいた牛にウィルスが寄生したんだろう。そしてそれは人も例外じゃ無い。さらにウィルスは骨にも寄生する。完全に防ぐには3時間以内に死体を焼く必要がある。それをして初めて安らかに眠れる…」
なんでカナタはそんなことを知っているの?そこまで詳しいウィルスの情報は何年も研究している”私の国”ですら知らない…
フミナの疑問なんて知らないカナタは集落の火事を氷で一気に消火する。そのままフミナを背中に背負い、医者のじいちゃんが住んでいた場所まで歩き、炭を払いながら医療について書かれた本を探す
「ねぇカナタ…何処で奴らの知識を?そこまで詳しく知っている人間なんて多分」
「あった…ん?あー」
カナタは本に書いてあった材料を近場から漁り、応急処置を始める
「近場に流星群で落ちて来た隕石があるんだ…その隕石をあさったら壁画があってさ…俺はそれを解読して奴らの情報を知った……よしこれで歩けるはずだ」
「本当だ…痛くもない……この知識も壁画から?」
「うん”隕石が降った後から生えた新種の草”だから書いてあった。不思議だよねこの薬草って特定の工程を挟むとどんな傷も塞がるって」
解読…もし全ての隕石に壁画があってその中にもし薬草の使い方みたいに、魔物への対抗策があるとしたら…世界にただ一人壁画が読めるこの人がいるなら絶望的だった魔物一掃も夢じゃ無い…
「あの………お願いがあります…私と知恵と技術の国ギルマティに来てください」
遺体を運び1箇所にまとめているカナタの動きがピタリと止まる
「認可書が無ければ入れないぞ…それに」
「認可書ならあります」
カナタは深く息を吸い続きを話す
「それに今あそこには魔物の軍勢が迫ってるって噂だ。しかもその中には《斬光》のザグラがいるらしい。アイツがいるならもしかしたらもうギルマティは落ちているかもな」
「それほどにザグラは強いの?」
「あぁ昔みたいにインターネットってのがあるわけじゃ無いから情報が伝わりにくいのに、こんな田舎まで名が知れ渡ってるのはそう言う事だ」
カナタは遺体に油を垂らし火種を投げ入れた
「俺が言いたいのはそれほどなのかって話。道中も決して楽な道じゃない。無事に着いても、もう壊滅しているかもしれない。それでも行きたいのか?」
カナタの問いにフミナは迷いなくそれでもと言う
「──────分かった…新しい住処も探さないとだしな!」
フミナの揺るがない意思を感じとり、カナタはフミナと共にギルマティに行く事を約束したのだった




