蛸
島へ向かって船を出して数時間。未だ冷めぬ初めての船旅にカナタとフミナは人知れず興奮していた
「そういえば…フミナはどうやって陸に上がったの?」
「私の時はまだ階段があったからなんとか走って逃げたよ…ただ、たくさんの魔物が追ってきてたからもしかしたらそれのせいで壊れちゃったのかも…」
「まぁ…気にするなって」
カナタが何かを感じ取った瞬間、船全体が海から浮かぶと同時に船内に悲鳴にも似た叫び声が轟く
「た…蛸だぁぁッ!!」
「たこぉぉ!?」
フミナの絶叫を無視しつつカナタは部屋を出る。するとそこには巨大な蛸が触手を使い船体を掴んでいた
タコ…………タコと言えば、たこ焼き……昼ごはんはたこ焼きがいいな…それに
カナタはそんな事をぼんやりと考えながら、氷の剣を作り出し蛸の魔物をバラバラに切り刻む。切り落とした触手の一部をカナタは取るとさらに細かく刻んだ
「あ…ありがとうございます。カナタ様、それは何に…」
宙から海に落ち揺れる船体。カスミの問いにカナタは答える
「食べるの」
カナタの答えに船中の人間が困惑する。その空気を読みカナタは説明する
「魔物を食べると魔力総量が少しだけ増えるんですよ」
嘘つきを見るような顔をしつつも相槌を打ったカスミはカナタに聞く。魔力が無い人間が食べると、どうなるのかを
「あー…一応3日は魔力が使えるようには成りますよ。ただ自分みたいに魔法はおろか、身体強化も出来ませんけど…魔物は切れるようになります」
「それなら私達も!」
「魔物の体は死体だから腐ってますよ?気持ち悪いじゃ無いですか…それに食べられるのは魔力で強化した胃袋だからで常人ならお腹壊すと思いますから辞めた方が…」
カナタはメリットと、デメリットが対等では無いと忠告する
「腹痛など鍛えた軍人ならば耐えられます。お前たち!直ちに魔物の残骸を拾え!!それが今日の昼、夜ご飯だ!」
「軍隊長!!食べるならたこ焼きが良いです!!」
軍人の声にカナタは喜び賛成と声を出そうとしたその時
「そんな材料はない!!素焼きだ!!」
カナタはここが海である事を思い出し、戻ったら食べようと決めたのだった
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翌日…
「これか…」
道中は蛸の魔物以外の魔物には出会わず、無事島に着いた
本当に誰も腹痛を訴えてないな…救助班が減らなかったのはありがたい
「私も食べたかったな…蛸」
「みんな抵抗なかったけど…一応魔物だからな?腐ってるよ?」
フミナとの会話中カナタは周囲を見渡したが、それらしい魔物は見当たらなかった
でもここより下に不気味な魔力達を感じる…相当離れているはずなのに…
カナタ達は気持ちを引き締め、非常用階段を降り始めた




