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渡り鳥の忘れ物

作者: えすのご
掲載日:2026/02/06

どうも、えすのご氏です。

あれからすごく忙しくて、全然投稿ができてません。。。とりあえず完成した短編の作品を載せておきます。。。お楽しみください。

ある夏の日のこと。


俺は突然、田舎にいる元彼女に呼び出された。なんでも、よくわからないファイルを開いたら、何かの探査機のプログラムだったらしくて、そのプログラムが止まらないらしい。確かに宇宙開発の分野を学んでる俺に聞いてくるのもわかる。しかし、何で彼女の家にそんなプログラムがあるのかが不思議だった。そして、それが何のプログラムなのかについても気になった。


そうこう考えて免許とりたての車を走らせているうちに、景色は近未来的な街灯がパイプを突き立てたような安価な鉄の街灯に変わり、建物のひしめき合う場所から一面の畑へ。彼女の家は畑のど真ん中にある。車通りなんて滅多になく、さらに道幅も広いので、路上駐車しても誰からも文句を言われない。ので、俺は遠慮なく彼女の家の前に自分のかねてからの貯金をはたいて買ったセダンを路駐した。


「よ。久しぶりだな。」


「テツくんごめん、急に呼び出したりして。見てもらいたいのはこっちにあるやつ。」


彼女・杏奈はそう言って俺を家の中に案内した。家の中は相変わらず色々なものが廊下にすら散乱していた。そのほとんどが杏奈の父のもので、宇宙開発やシステム工学の資料や雑誌の束だ。というのも、杏奈の父が宇宙開発の仕事をしていた関係で、そういう関係の情報誌などを読み漁るからだった。


俺は家の屋根裏の間に通された。元々ここには仕事部屋だった。今は物置と化しているようで、ここにも情報誌などの束がいくつか積み上がっていた。それらを倒さないように掻き分けた先にあるデスクの上で、一つの旧式のノート端末が作動していた。その画面の中では一つだけウィンドウが立ち上がっており、黒い背景の上で白い文字が止まることを知らず上へ上へと流動していた。俺はまずその白い文字の濁流からその処理の内容を確認しようとした。が、早すぎてもはや読めなかったのでとにかくショートカットキーで強制終了した。そこまではよかった。消えたウィンドウの影からは、ファイルエクスプローラのウィンドウが出てきていたが、そこには「量子通信ユニットアクティベートプログラム.txt」というファイルが選択された状態になっていた。そこへ、どん、どん、と、階段から重い音が聞こえてきた。見ると、杏奈の父・三治郎がきていた。


「よう哲平くん。久しぶりじゃないか。」


どことなく楽観主義なところがあり、大体笑っているのが通常モードの杏奈の父だが、普通に挨拶した次の瞬間、俺が見ている画面を見るなりこれでもかというぐらい口を開けて驚いていた。


「な、に、やっ、てん、の?」


断片的に言う。と、思ったら、次の瞬間、彼の目にはおそらくファイルエクスプローラのウィンドウが目に入ったのであろう。取り乱したように俺の方に走ってきて、画面に齧り付いた。


「あっと、、待ってくれ、、、それって、、、僕が無くしたと思ってた量子通信のアクティベートプログラム。。。。」


そして絶句した。


開発コードMUSES-F。太陽系外惑星探査機はつかり。


米国が20世紀後半に相次いで打ち上げたヴォイジャーシリーズ・パイオニアシリーズ探査機の後追いとして日本が打ち上げた日本初となる国産の系外惑星探査機。だがしかし、虎の子の技術であるはずの量子通信がうまくいかず、そのまま従来の通信フォーマットのままで運用が続けられてきた。打ち上げからはまだ二十年と少しだが、それにしてはヴォイジャーシリーズやパイオニアシリーズより速いスピードで宇宙を航行している。また、先人と同じように、異星人との接触に淡い期待を込め、探査機外周には、金で作られたプレートが嵌め込まれ、そこにレーザーで人間や地球に関するデータが刻印されている。さらに、数少ない人間しか知らない機密事項にはなるが、はつかりには、アクションパターン777という、探査機が異星文明と接触した際のはつかりの動作を制御するためのプログラムが搭載され、他に776通りアクションパターン、すなわち想定状況が明記されたプログラムが搭載されている。これをAIと併用して使用することで、ほぼあらゆる状況に自分で対応することが可能とうたう探査機だ。


実は、三治郎はこのはつかりのプロジェクトマネージャーにして、この探査機の目玉機能たる、量子通信システムのプログラムを任されていた。しかし、打ち上げ当日に、その一部のデータが欠落していたことに気づかずにはつかりは宇宙に上がってしまったのだった。その欠落していたデータこそ、このアクティベートプログラム、つまりスターターとなる初期設定ファイルだったのだ。この結果、三治郎はプロジェクトから引責辞任せざるを得なくなってしまった。しかし、欠落したデータはどこにも見当たらず、予備は辞任して開発機構を後にした三治郎しか持っておらず、残された彼らの余計な躊躇も災いし、結局量子通信ユニットとそのアクティベートプログラムは使われることなく、はつかりの片隅に固定されたまま、あるいはPCの記憶装置の奥深くに忘れられたまま、二十年という長い眠りにつく羽目になってしまったのだった。


幸か不幸か災いか。三治郎の無くした、忘れ去ってしまったファイルが、今そこにある。俺がではない。彼女が、杏奈が偶然掘り返したのだった。俺はもとより三治郎は大きな期待を抱いた。


「これで、はつかりを完全に動かせるかもしれない。」


「はつかり?」


「ああ、僕がかつてプロジェクトマネージャーとして指揮をとった探査機だよ。まあ、自分のミスで降りることになったんだけどね。。」


ちなみに杏奈は今は地元の大学で天体を地上から観測するタイプの研究をしているので、ある程度の知識があったし、俺は三治郎と同じような分野を学んでいる。しかし、はつかりのことについては俺は三治郎さんとは結構長い付き合いなので詳細を知っているが、杏奈はあまりその手の話題に興味を示していなかったこともあり、はつかりのことについてもあまり知らないのだ。


「すみません、三治郎さん。。。俺、、、このファイルをどうしてもはつかりに送信し(ぶん投げ)ないと気が済まないって言ったら怒りますか?」


俺は期待が抑えられずにきいた。


「よし、そうと決まったら、、、、、どうしよう。」


三治郎が早まって言う。


「確か、テツくんの大学って、電波望遠鏡あったよね。。。」


「ああ、だけどここより遠いとこにあるんだ。今から行くなら海老名キャンパスだな。そこからなら、ネットを介して電波望遠鏡で送信できるかもしれない。。」


気づけば俺たちはPCを手に足早に車に向かっていた。


「へえ、テツくんの大学ってそんなシステムがあったんだ。。。」


「まあ、そこも加味して大学選んでるから、まあそうならざるを得ないところあるんだけどね。。。」


杏奈は感心しつつ運転席に乗り込む。


「!?」


「あれ?。。。。ま、いっか。。。。あ、免許あるから安心して。。。」


杏奈はそう言って慌てて免許証を見せてくる。俺は戸惑いながらも杏奈に鍵を渡した。(この車、キーレスエントリーと違い、鍵穴はないが所定の位置に鍵を置かないとテコでも動かない設計だから、鍵を渡さないと走れないのだ。)


俺たちは海老名キャンパスに向かい、事務所に行き、そこで宇宙開発機関への連絡と望遠鏡の貸切手続きを手早く済ませた。宇宙開発機関側のはつかり担当者は目を丸くしていたようだが、幸いにもファイルの送信についてこちら側でやって良いと快諾してくれた。また、偶然にも、今の時間帯に予約や先客はなく、俺たちはかなりスムーズに電波望遠鏡を貸し切ることができた。


そうして俺たちは電波望遠鏡を制御するための専用の部屋に通された。


「使用が終わりましたら、事務室の方まで鍵を戻していただければよろしいかと。では後ほど。」


「ありがとうございます!」


事務の職員はそう言って去って行った。


「やっぱり、望遠鏡というだけあって使ったことのある機材が多いな。。。」


杏奈が部屋を見渡して言う。俺は三治郎と共に機材を準備する。杏奈は電波望遠鏡の制御盤に触って、動作を確認する。普段から天文台の光学望遠鏡を触っているからか、かなり手馴れている。


「そういえばはつかりの位置って割れてるのかな。。。」


俺はふと思った。万一、はつかりをロストするようなことがあれば、何かしら宇宙開発機関が騒ぎ立てるだろうし、あってはならないことでもあるはずだ。だが、その心配はないようだった。


「一応、おおよその座標についてはさっき父さんから聞いてるから、細かい微調整さえすればすぐ使えると思うけど。」


杏奈が答えた。電話の応対はほぼ俺がやったものの、座標については個別で三治郎が情報を得ていたのだった。太陽に被ってないといいけど。


「確か牡羊座の方向だった気がする。。。」


そう言いつつ杏奈が望遠鏡に座標をセットする。幸いにも太陽から少し外れたところだった。太陽の干渉の影響もなさそうだ。


「よし、勝負だ。。。」


三治郎が言う。望遠鏡がはつかりがいるであろう牡羊座方向を向いた。


Hello MUSES-F. Can you hear me?


俺は恐る恐る宇宙空間に向かって呼びかけた。


「どうだ?」


期待を抱きつつ俺たち3人は画面に釘付けになった。すると、


ビッ


と、1ビットのデータが返ってきたのちに、はつかりはこう続けた。


Hello, This is Hatsukari MUSES-F.


「ちゃんと返ってきました。コールバックです。」


はつかりとの通信回線が確立できたところで、俺はまた返事と共にコマンドを送った。


I’m going to send a command file for You.


量子通信ユニットアクティベートプログラム.txt:Sending…


コマンドを打ち込んでエンターキーを押下する。途端、画面が固まり、最後のピリオドが点滅する。


Thank you.


You’d like to activate a quantum communication system?


はつかりは正常にファイルを受け取った証としてファイル名から推測したらしきその意図について問うてくる。俺は当然と言わんばかりに


Yes, of course.


と返した。


Activating…


それが正解だとわかったはつかりは早速アクティベートプログラムを実行した。


「これで、、、何とかなるかな。。。」


三治郎が言った。


「そうですね。。」


室内に安堵の空気が流れる。しかし、次の瞬間、また画面が動いた。


Action pattern 777 active.


この後に、またさっきのような文字の羅列が濁流のように流れてきた。


「パターン777。。。まさか。。。」


俺は白い濁流の中から手がかりを探した。だが、俺が見た文章の中には、はつかりが文字化けしている文字と会話しているのがわかった。


「これ、、、誤作動じゃなさそうです。。。けど、わざわざこっちに映すこともないと思うんですけど。。」


それはそうだ。なんで他人との通信の様子を見せられているのか。


「わからない。ただ、はつかりが地球以外の誰かと話しているのは確かだな。。。」


すると、はつかりから、メッセージと共にファイルが送られてきた。


Data of Aliens.word


I’ll be back on earth.


「「「?!」」」


送られてきたWordファイルをどうしたらいいかわからなかったが、そこで通信は途切れてしまった。


「これ、、、どうしたらいいんだろ。。。」


俺たちは、状況に理解が追いつかず、しばらくの間、部屋に沈黙の、重い空気が溜まっていた。


後で宇宙開発機関から聞いたことと併せて分かったことは、あのファイルはやはりファイル名通り、はつかりが接触したであろう宇宙人について、外見から彼らの言語と文化、歴史に至るまでかなり詳細に書かれていた。後のメッセージと組み合わせると、いつかはつかりを()()帰しにその宇宙人がやってくるから、それに備えろ、と言っているのだろうということだった。


俺はまだファイルの中身を見ていないからその宇宙人がどんな種族なのかよくわからないが、そのデータの解析については、なぜか俺の大学に任された。そして、宇宙開発機関はその任を俺の通う大学に任せるにあたり


、ある条件を付け足していた。それは、


俺と杏奈をデータ解析チームに入れること


だった。だがその理由を宇宙開発機関は教えてくれなかった。


俺たちはあれから、また付き合おうとなった。というのも、俺たちが別れた理由は、進学先が違う関係で遠距離になるため、お互いに迷惑をかけたくないと遠慮したからだった。でも、今回の件で、結局遠距離が無しになったことになるので、何なら復縁ってことにしちまおうぜとなり今に至るのだ。


俺たちが未知との遭遇に立ち会ってから数夜明けた日の夜。俺と杏奈は学園都市を歩いていた。世の中を見渡すと、日本とその周りはすごいことになっていた。中国が日本の発表を虚偽だと否定し、自分たちが異星人を発見したと主張。NASAから研究に協力したいと打診がきて、NASAの参加が決まったはいいが、日本の国内外では、早速陰謀論者たちが宇宙人排斥主義を立ち上げた。総じていうのであれば、宇宙人を迎えるには、まだまだ課題が山積みである。ということだ。おそらく今宇宙人が来ても、取り込み中としか言えないようである。さらにただでさえまだ言語の研究すら進んでいない。会話も通らないだろう。


それでも、街中はそんなに変わった様子はなかった。みんな、今まで通りの生活をしている。


「やっぱり、まだ宇宙人が来てないっていうこともあって、みんな実感は薄いみたい。何一つ変わっていないな。。。」


杏奈が言う。しかし、進んでいくと、駅前で誰かが演説していた。


「皆さん、宇宙人は我々の地球を植民地化し、私たちを奴隷にしようとしています!さあ、今こそ立ち上がる時です!今こそ、侵略者からこの地球を守る時です!」


「げ、、、宇宙人排斥主義の人だ。。。。」


思わずそう呟いた。杏奈は


「前言撤回。ガッツリ変わってるわ。。。」


と訂正していた。と、その演説をしている人がいきなりこっちにきて、


「あなたたちですか?地球に侵略者を呼んだのは。」


その目は敵を見る目だった。さらに彼女は、メガホンをとって俺たちを指差してこうがなり立てた。


「皆さん!この2人が、我々人類を裏切った裏切り者です!」


と。そこですかさず杏奈が口出しした。


「侵略者?植民地化?裏切り者?現時点のデータ解析でも彼らが何をしにここにくるのか分かってすらいないのになんでそんなことがわかる?私疑問でしょうがないの。」


確かに、かなり疑問に思うことだ。


「そ、、それは。。。。」


演説者が言葉に詰まる。


「嘘は、決めつけは、よくないよ。」


俺は追い打ちをかけるようにそう言って、演説者を論破して上機嫌の杏奈を連れてその場を離れた。俺たちが向かっているのはとある飲食店だ。今宵はここでNASAの研究者たちのための歓迎会が行われるのだ。会場となる店に着くと、すでに三治郎が待っていた。彼もまた今回のデータ解析チームに抜擢された1人だ。


「おーい2人ともー!」


三治郎が手を振っている。


「どうもです。」


俺は挨拶する。


「他の人たちはまだきていないみたいでね。。。」


どうも三治郎が一番乗りのようだ。


「父さん昔から早いからね。。。」


杏奈が言う。と、俺のスマホが鳴る。


「!チームリーダーからだ。先に席取っといて。だそうです。」


俺がそう報告する。


「よしじゃあ行きますか。」


杏奈がそういいながら店のドアを開けた。俺たちは杏奈に続いて店の中に入って行った。


Fin

いかがだったでしょうか。。。連載の方も何とか完結させねば。。。と言うことで連載の方もよろしくお願いします。。。

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