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吸血塾  作者: クオン
7/43

吸血鬼の情事の事情

編集が進んだのでクライマックスまで一気に投稿します。

(エピソード数未定)

緋波若生は塾のある方から歩いてくる七緒を認めて駆け寄った。

七緒から見るとひょろひょろと若生の走る様は危なっかしく見える。

「今、そこでマルリックに会ったわ」

後ろを振り返りながら七緒は言った。

「うえっ、何もされなかった?」

「話をされたわ。脅しのつもりなのかしらね?」

「脅しじゃなくて、本当に心配してんじゃないの? 俺らのこと。やっぱ吸血鬼になんのはまずいって」

「私はほぼ決心しちゃってるけど、若生君はどうなの? 吸血鬼になりたくはない?」

「俺? 俺は・・・なりたくないよ。やっぱ怖いよ」

「マルリックが?」

「そりゃあ、素で戦闘シーン見てるからマルリックは怖いよ。でも、やっぱ怖いのは俺自身かな? 欲望のテンション上がると自制心もつかどうか怪しいよ」

「あら、十分自制心ありそうじゃない?」

「先生はもっと自制心持ったほうが良くね?」

「全く、姉弟でこうも思考が違うとは・・・」

七緒はため息混じりに若生の腕に後ろから手を回して組み付いた。

「ちょちょっと七緒先生い!?」

「おたおたするんじゃないわよ。ちょっとシチュエイションが違ったら私達この先もっと進展できたんだから」

「シチュエイションって?」

「あなたが吸血鬼になって私がスレイブになる。その後私がゆっくり吸血鬼になる算段をする」

「それ、20年後想定してる? お互い他のスレイブ作ることになるんじゃね?」

「まあーったく、ロマンないわね。20年後はお互い冷凍血液でしのいでいくのよ。お互い浮気しないよう監視しながらね」

「もっとロマンがねえ!」

七緒は真顔になって若生に回した腕に力を入れた。

「弥生さんがね。私のスレイブになると言ってるわ」

「やっぱり! 後先考えてねえなあ。あの姉」

「生き急いでるわね。今まで自分を捨ててき過ぎたわね。あの子」

「20年、せめて倍の40年ならまだ余裕もって見ていけそうな気がするけどなあ」

「あ、そこなの?引っかかってるの?基本反対じゃないのね?」

「反対してるよ! 現実20年短いって!」

「どうでもいいけど、臭いわね若生君?」

「ああ、ああ、悪かったよ!これでもちゃんと毎日風呂シャワー入ってるよ!一着しかない制服の上着が昨日血まみれになって、中防ん時の樟脳臭いワイシャツと週一しか洗濯できねえズボンなんだよお!」

それでも七緒は腕を放さないでそのまま塾まで歩いていた。



若生と弥生は結局一緒に考明塾に宿泊することになった。

仮にマルリックの結界が破られたとしても、この近くでは携帯の電源を切っておけばGPS機能は使えないので居場所を父に特定される恐れはない。

七緒とエディーは二人きりで診察室で1時間ほど話し込んでいた。

七緒は、いつに無く疲れた顔をして部屋から出てきた。

「どうしたの? 何か問題が?」

廊下で待っていた若生が心配そうな顔で訊いた。

「問題ね。失うものが想像より大きかったってところかな」

「聞いていいの?その問題って」

「聞かせないといかないわね。特に弥生さんには」

そう言いながら七緒は自分の寝室である六畳和室に入っていった。

そこでは弥生がすでに二組の布団を敷いて七緒を待っていた。

「あら? ワッ君もここで寝るの? 布団二組しかないわよ。どっちの布団で寝る?」

なんでそうなる?と突っ込もうとする若生を制して七緒は言う。

「弥生さん、お話があるの」

「3人、人間だけで?」

「なんか吸血鬼慣れしてきたね? 姉さん」

「エディーさんからはもう十分聞いてるんでね。本当は若生君は外してもらってもいいんだけれど」

「なんでだよ?」

「下ネタになるからよ。ま、茶化さないように即物的に話すけれど。特に今後吸血鬼に関わるなら、やはり聞いておくべきね」

「どんなネタなのよ?」

「ネタじゃないってば、弥生さん。スレイブなった後は眷属になる、いえ、ならなければならない。その流れは理解してるわね」

「それはその後の血の確保の問題を心配してるの?」

「いえ、女の眷属についての問題よ。女は眷属になったら事実上セックス出来なくなるという話」

若生と弥生からは質問は無かった。



沈黙が話の続きを促していた。

「女吸血鬼は男スレイブを噛み血を吸うとエクスタシーを感じる。そして大抵押さえが効かなくなって性行為に及び、オルガスムスまで達するために頚動脈から動脈血を吸わなければならず、そうなったら男はスレイブではなくなるのだけれど、スレイブを維持しようと手足から血を吸って自制しても、性交中、眷属とスレイブは快楽もリンクしてしまう。その結果男スレイブはほぼ間違いなくセックス中毒に陥り、結果互いに快楽に溺れあって男は眷属になれず不完全なグールもどきの強姦魔になるか、ミイラ化する。味をしめた女吸血鬼は無秩序に人間の男をスレイブにするようになる。サキュバスと言うのだそうだけれど」

「そんなの男がしっかりしてればいいんじゃねえか?」

「医学的にというか脳内構造的に無理なのよ。女性の性交中のエクスタシー・オルガスムスは男性の10倍と言われているわ。男性が眷属のそれに無理やりリンクさせられると脳が持たない。麻薬中毒と同じね」

「なんだ、つまり女の眷属は女のスレイブだけ作ってればノープロじゃん」

弥生はあっけらかんと言った。

「そうなんだけれど、歴史的に見て女性の眷属は討伐対象になって短命なんだそうよ。例外的な女性エルダーも生死不明らしいし」

「問題なのは先生だけじゃない?私は不純異性交遊なんかしなくていいようになるためにスレイブになるんだから。次の女子スレイブ見つからなかったら冬眠でもするわ。出来るんでしょ?スレイブになったらコールドスリープってやつ?」

「意外に考えてるのね? でもそれには大問題があるらしいの。冬眠は目覚めると記憶が無くなってることが多いらしいわよ。良くて何割かは記憶野に悪影響が出るらしいし」

「・・・あの、お二人さん、それだけじゃないらしいんだよね。眷属のほうは食い物も血と液体しか受け付けなくなるらしい。お寿司食べれなくなっちゃうよ」

「まあ、若生君が言うと説得力あるけれど」

「これだけマイナス要素が明らかになって、まだ吸血鬼になろうなんて思ってるの? エディーさんに献血するだけでいいんじゃね?」

「ワッ君! 覚悟決めてよ。先生がならないなら私が眷属になる。駄目ならあの父親は殺す! 毒でも盛ってね。どの道、人の道からは外れてしまうわ」

「殺すんなら俺が殺す!」

若生が声を荒げた。

滅多にないことだったが弥生は怯まなかった。

「ワッ君には無理よ。あの男はあれで用心深いのよ。力だけでワッ君を抑えようとは思ってない。何時でもベルトにナイフを仕込んでるわ。凶器を持って挑んでも勝てない。でもスレイブか眷属なら別よ。あんなチンケなステンレスで傷つけられても直ぐに治るわ。その時、私なら勝てる!」

「二人とも止めなさい。マルリックに釘をさされたのだけれど、吸血鬼でも人を殺さなければ狩られることは無いそうよ。私たちが眷属になってもルールは必要だわ。特に彼のような天敵がいるわけだしね。若生君には4~5年様子を見守っていて欲しい」

「4~5年って根拠は何?」

「単に成人年齢になるまでってことよ。本当は弥生さんにもそうして欲しいけれど」

「無駄に年食っても何にもならないのは経験済みよ」

「若生君の吸血鬼批判は正論でもあるのよ。今しばらくは私の七転八倒する様を眺めてくれてると良いんだけれど」

「それでも血は要るでしょに」

あくまで弥生はスレイブ候補を譲らないつもりのようだった。

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