2話
孤児院の静けさを突き破る轟音――第二次魔族襲撃の日、クリムゾン・ヘイヴン孤児院の北翼に、炎を纏った魔族の大群が押し寄せた。
「来た…!」
ケイルは左腕だけで剣を握り、肩で息をしながら仲間たちに視線を向ける。ライラは目を閉じ、風と音だけで敵の位置を読み取り、片腕の動きで的確に短剣を振る。ジョレンは片足で体を支え、飛び蹴りや転身で攻撃をかわす。セレネは魔力を手に込め、炎の呪文を放つが、詠唱はまだ不完全で、力は不安定。カレネは姉の動きを読み取りながら、補助魔力で攻撃と防御を微かに後押しする。
魔族は数え切れないほどで、孤児院の壁を蹴破り、窓を吹き飛ばす。五体満足の子供や教師たちは避難し、孤児院内で戦うのは五人のヴァリアントだけだった。圧倒的な数と力の差に、五人は必死で立ち向かう。
「まだ…まだやれる!」ケイルの声が響く。左腕だけで剣を振り、斬り払うが、次々と現れる敵に対応するには限界があった。
膝を傷め、腕の筋肉は限界を超え、呼吸は荒い。ライラは風の揺れを頼りに敵を避けながら攻撃するが、攻撃一つごとに体力を削られる。
ジョレンは片足で跳ね、蹴るたびに痛みが走る。セレネは魔力を込めるが、炎は途中で消え、攻撃は散漫になり、カレネも姉の補助をしながら全力で支える。
魔族は容赦なく迫り、倒しても倒しても数は減らない。
五人の体は血と汗でぬれ、傷は刻一刻と深まる。
ケイルは左腕の剣で幼い孤児を守りながら、腹に鋭い痛みを受け膝をつく。
ライラは背後から飛びかかる敵を寸前で斬るが、肩の関節が悲鳴を上げる。ジョレンは蹴りの反動で転倒し、片足の痛みが強烈に走る。セレネの炎は消え、カレネの魔力補助も力尽きそうだった。
「…ここで、倒れるわけには…!」
ケイルは必死に立ち上がろうとするが、視界が暗くなり、膝が地面に触れる。五人は孤児院の中庭で押し込まれ、絶体絶命――魔族の爪と牙に囲まれた。心臓が破れそうなほど早鐘を打つ。
そのとき――
北翼の扉の隙間から、赤く光る腕のようなものが揺らめき、魔族の群れの中に現れた。光は意思を持つかのように動き、まるで魔族を押し返すかの勢いで伸びる。
「…これは…!」ケイルの目が見開く。
赤い腕が左腕に触れると、全身に熱と衝撃が走った。倒れた体がぐんと持ち上がり、息が深く吸える。
「嘘でしょ……。目が…見えるっ!……」
ライラの目は微かに開き、視界の奥に敵の動きが鮮明に見える。
ジョレンの片足は地面に力を伝え、蹴り飛ばす衝撃が正確になる。
「ね…姉さん………」
「……!!カレネ…!?カレネの声なの…!?」
セレネの炎は力強く燃え上がり、魔族の身体を焼き焦がす。
カレネは姉の意思を完全に読み取り、補助魔力を自在に回すことができた。
赤い光は五人の欠損部を包み込む。
ケイルの左腕は赤く輝く新しい手首となり、ジョレンの足も赤く補われ、ライラの視界が鮮明になる。五人は互いに目を合わせ、全身に力が満ちる感覚に震えた。
「よしっ………お前たち…行くぞっ!!」




