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デメリットは異世界を進む!  作者: かあきどん
第一章 宇宙駆ケル臆病者
7/7

ep.7 九死に一生

「、、、助かったのか。」


身に走る痛みから自らの生存を確認する。

どれだけの間気絶していたのだろうか。


「んまぁ、物語にして6話分位か、、、なんだそれ。」


頭を打ったのか思考が変な風になっとる。

そんなことを考えているうちに、瞑っていたせいで霞んでいた目が機能を取り戻す。


知らない天井だ。


二連続で知らない天井かよ。


「あ!起きたじゃん。アラメールだよー。覚えてる?」


訂正、助かってない。

なんならさっきよりヤバい。

アラメールがベッドのわきに置かれた椅子に座って声をかけてくる。


「、、、」


「そんな怖い顔しないでよぅ。ほら、笑って笑って!」


自身の口元に手を添えてその両端を引っ張り上げている。

特徴的な八重歯がちらりと顔をだす。


少なくとも今すぐ危害を加えようと言うわけでもなさそうだ。

というか、今まで勘違いしていただけなのかもな。

だって別に何かされたわけじゃないし、昨日の別れの一言が死ぬほど恐ろしく感じただけだし。

それすら、突然の異世界転移で混乱してただけかもしれないしな。


よし、取り敢えず黙っててもどうにもならないからな。聞きたいことは沢山あるんだ。


「いろいろ、聞きたい事があるんだけど。」


「いいよー。何でも聞いてよ!」

叩かれた薄めの胸がドンとくぐもった音を鳴らす。


「ありがとう。まず、ここは何処で、俺をどうやってここまで運んで来たのかを。」


「ここは私の家だよ!実際はスペさんから借りてるだけだけどね。で、運ぶのは普通に背負ってきただけ。」


「そっか。ありがとう。」


すげぇ良い人やわ。さっきまで勘違いしててほんとにごめん。


「体は大切にしなきゃね!」


にっこり笑って親指を立てている。

かわいい。


「そういや、俺を運ぶ時近くにデカい猪いなかったか?」


「ん?あぁ、ビッグボアのことね!そりゃあもういましたとも!ま、私がボコボコにしてやったけど。」


「マジかよ!すげぇ強くない?」


「、、、そうだね。ありがとう。」


アラメールの顔が急に曇る。


「どうかした?大丈夫?」


まさか、そのビッグボアとかいうのとの戦いの時に負傷したりしたのか!?

だとしたらマジで申し訳ない!


「うん、大丈夫。いやー、やっぱり体は大切にしないと駄目だよね!」


おいおい、ほんとに怪我してるんじゃないか?


「ね?」


俺が何も言えずにいると、アラメールが念押しをしてくる。


実際俺が何の準備もせずに突っ込んだせいだもんな。反省します。


「本当にありがとう。これからは危ない事はしないようにするよ。」


俺が言い終わると同時に部屋の中にガリッという音が響く。

何この音。


「、、、ねぇ君は勇者の話、知ってる?」


「あぁ。この前スペルギアさんから聞いたからな。」


「そっか。じゃあ、話早いや。」

「勇者になってよ。」


「え?」


「ヴィーゼはさ、どうしようもなく誠実で、優しくて、強くて、でもちょっと不器用で、頑固なの。」


「なん、、、の話だ?」


輝きを失ったアラメールの目はただ一点、俺の、、、いや、ヴィーゼの目だけを貫くように見つめ、話を続ける。


「今まで怪我をしたり、死にかけたりすることだって少なく無かったんだよ。でも、誰が、いつ、どれだけ、どんな風に言っても”危ないことはしない”なんて絶対に言わなかった。それがちょっとビッグボアに跳ね飛ばされただけで折れるわけがない。しかも、あんな敵今まで一人で何度も倒してたよね。今回やられちゃったのが新しい能力のせいだってことも考えたけど、それならさっき私を褒めてくれたのは何?ヴィーゼが勝てない訳が無い。、、、正直に言うと、昨日から怪しんではいたの。すごくよそよそしかったから、ごめんね?昨日別れる直前に変な魔術でも掛かってないか確認しちゃった。ちょっと気分悪くなったりしたかな。まぁでも結局、何にも掛かってなかった。もし、素でよそよそしくなっちゃったんだとしたら、私がヴィーゼに嫌われてるみたいになっちゃうじゃん。そんなこと、ありえないし、あってほしくない。だから、私調べたんだよ。他に原因がないか。そしたらさ、君も知ってると思うけど、過去にいた勇者が他の世界からこの世界の人に突然憑依したらしいの。ヴィーゼもそうなってるんじゃないかって。ヴィーゼは強くてカッコいいから勇者の器になっても何にも不思議じゃないもの。そこで、なんだけど。この勇者の話にはさ、邪神を倒した後にね?元の体に精神が戻ってきたラストがあるの。だから、君には勇者になってこの世界の魔族の王”魔王”を倒してヴィーゼの体を返してほしいの。君も多分自分の意思でこの世界に来たんじゃないと思うんだけど、ごめん。協力してほしい。」


信じられないくらい早口で言い終えたアラメールがこちらに返答を促してくる。


「あ、えっとつまり、勇者になって魔王を倒せってこと?」


「、、、そういうこと。」


「協力したいのは山々なんだけど、俺の能力、、、あまりにも戦闘向きじゃないんだよ。」


本当に何の偽りもなく、この世界で最も戦いに向いていない能力な気がする。

他の事をするならそこそこ出来るかもしれないけど、こと戦闘においてはもはや向いていないどころか、やる方がおかしいレベルである。


「大丈夫、私もついていって一緒に戦うから。」


至極当然の事を言っているかの如く平然とした態度をとってるけども!

あらゆる意味で無能な男一人と少女一人で魔王とか倒せるわけなくね!?

俺はそもそもさっきの戦いで一生を配達員として終えることをこの胸に誓ったんだ!


「例え二人になったとしてもかなり厳しくないか?」


「うーん。確かにそうなんだけど。ごめんね。もう拒否権とかないから。」


アラメールが苦笑いをする。


「どういうこt」


瞬きをする数瞬の間、、、首元に鈍い光沢を纏った短剣が添えられていた。


「───ッ!」


「巻き込まれちゃった事に可哀そうだなとも、大変なんだろうなとも思うよ。でも、残念。それだけなの。」


、、、やっぱ俺この世界で生きていける気しねぇわ。

俺が動けずにいると、アラメールはゆっくり短剣を喉から外す。


「ま、そういう事。大丈夫大丈夫、異世界観光だと思えばさ!」


アラメールが目の光を取り戻してそう言う。


この世界の観光は命がけなのか?

いや、多分そうだわ。


いやしかし、これは協力するしかない、、、よな。


「あぁ、わかったよ。協力する。だけどその前に少し、戦い方とかを考える時間をくれ。」


「おっけー。どうせなら、今日はここで泊まっていきな!戦いの疲れもあるだろうし。スぺさんには私が言っとくから。」

「なんてったって、、、見てみてよ、その足。」


「え?」


掛け布団に隠れて見えなかった自分の足を見てみると、、、


「こりゃヤバいわ。」


ベッドに倒れこみ、額に手を当てる。

なんで痛みを感じないのか分からんが、足首が本来のあるべき形から180度回転してしまっている。

確かにこの状態で動きたくないわ。

自分の足がねじれてても、、、正直現実味がなさ過ぎて思ったよりなんも感じねぇや。


「じゃあ、お言葉に甘えて今日は泊まらせてもらうよ。」


「うん。じゃあ、ご飯の用意してくるね!」


アラメールが目を輝かせ、部屋から出ていくのを見守る。


「いやー、しかしこれからどうするかねぇ。」


一人の部屋でそう呟くのだった。

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