第9話 ゲームの進め方
短い休暇を終えて、これまた1週間かけて職場に戻ってみると、事務官が青白い顔をして、駆け寄ってきた。
「宰相殿おお!!!大変です!貴殿の休暇中、、、、」
「は?」
「第二王女殿下が、財務大臣を罷免してしまいました!!」
「・・・・・」
何を考えているんだ?いや、、、、何も考えていないんだろうな、、、、
ため息をつきながら、執務室に入ると、正面のどでかい机に座った第二王女が、退屈そうに髪の毛をいじっていた。この子の髪はピンク。瞳は赤みがかった茶色。本人はルビーのような赤だ、と、言い張っているが、、、、
「休暇をありがとうございました。」
「あら、お帰り。あなたが休みの間ねえ、財務大臣が私のいう事を聞かないから、辞めさせたわよおお。」
「・・・さようで、、、」
「代わりに、私の婚約者のお父様を任命しておきましたわ。ちゃんとお父様の許可も取ったから。」
「・・・さようで。」
席について、何事もなかったかのように仕事を始める。
この方の婚約者は、、、地方伯ロジー家の、、、金鉱山をお持ちの伯爵家次男。
この鉱山は、年々産出量が減って、今年の春には、落盤事故まで起こした。
作業員18名が犠牲になった、大惨事。落ち着いた頃に、ローラと犠牲者の追悼式と事故現場の検証に行くはずだった。そう、、、、行けないで終わったがな。
「そうそう、ローラお姉さま、修道院から脱走して、ドエル帝国のはずれで野垂れ死んだらしいわよ?報告が上がっていたわ。知ってた?」
「・・・・・はあ、、、、」
「そう?まあ、あんたも今は婚約者でも何でもないもんね?しかしねえ、脱走ですって!フフッ、、、バカみたい。修道院で年老いて行けば、命だけは助かったのにねえ?ね?」
「・・・・・はあ、、、、」
第二王女は、さも楽しそうにそう言うと、また髪の毛をいじり始めた。
まあ、、、、なんでもいい、、、、そっとしといて、、、、
*****
「兄上、ヴォーレ国に、ブドウ栽培の視察の許可、ありがとうございます!」
首を垂れる弟を眺める。
「ああ、報告書は読んだ。新しい事業を始めるのだろう?お前の手掛けた小麦も、いい税収になっている。これからも精進しろ。」
にっこりと笑ってやると、嬉しそうに頷く。
「兄上、、、いえ、皇帝陛下に益になるよう、精一杯、働かせていただきます。」
退出した弟を見送ると、カーテンの陰に隠れていた隣国のロジー伯が薄ら笑いを浮かべて近づいてきた。
「農村出身の血は争えませんねえ、、、母親の生地があんなことになっても、笑っていられるなんて、、、、下賤の者は解りませんな。しかも、農業、、、くくっ」
「・・・・・」
「まあ、もうしばらくしたら、ヴォーレのワインも、皇帝陛下の物になりますが、、、そうそう、今回はかなり大きな金塊が取れましてね、、、、献上に参りました。」
「・・・・・」
こいつは自分がもうヴォーレ国の王になった気でいるのか?馬鹿だな。
にやにや笑いながら、懐から、かなりの大きさの金塊を取り出す小男を眺める。
「おお、いつもありがとう。そなたの金鉱は豊かだな。」
「へへへ、、、、」
弟は、、、弟の実母は、農村出身の下女だった。
城の調理番の下働きをしていた。野菜を洗っていたところを、通りがかった先帝、父が見かけて、手籠めにした。そして、、、、懐妊、、、弟は3つ違いだ。
はっきりと、皇帝の瞳の色が出たので、切り札として、母親から引き離して育てられた。母親は、、、、私の母に追放された。国元にでも帰ったのだろう。
そして、3年前、、、よりにもよって、その国元から、税を払えないと、このままでは領民が飢え死んでしまうと、直訴があった、、、、、ふてぶてしいな、、、、