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第7話 休暇 その2日目

昨日、夜通し話し込んでいた二人は、まだ起きてこない。


俺は、マキシさんの家の水くみを終え、マーサと朝ごはん。


マーサは、、、俺の2つ上の先輩。伯爵令嬢だがそこら辺の騎士より強い。女性騎士として現皇后の護衛に当たっていたが、真面目過ぎて追放された。修道院から脱出して、今の仕事をしている。こんなところで女性の一人暮らしは心配だが、結構気楽に暮らしているみたいだ。

・・・・俺は、、、、昔から、、騎士養成所時代から、、、この人が好きなんだが、、、、長期の休みが取れると、差し入れを持って転がり込んでいた。今回は長期滞在できそうで、かなり嬉しい、、、、


「・・・・あの人たち、寝るのも一緒なわけ?」

「え?ああ、、、小さい頃から、一緒だよ?あの子のおばあさまが、、、、生きていらした頃は三人で寝ていた。夜通し、ボードゲームとかやってたなあ、、、、ま、今も、そんな感じ?」

「へえええええ、、、、、、16歳と、17歳でね、、、、、ボードゲームねえ、、、」


マーサの家の裏で飼っている鶏の卵が、目玉焼きになって食卓に上がる。

あと、サラダとジャガイモとベーコン。ライムギのパン。

ここのところ、こうやって毎朝、向かい合っての食事、、、嬉しい、、、、


俺も客人が来るので、と、一週間休みを取った。

ライムギの収穫も、来年分のジャガイモの種イモの植え付けも終わったタイミングだったので、快く休みがもらえた。

・・・・上司といる緊張感と比べたら、、、農作業していたほうが心理的な負担は少ないが、、、、


上司がかっ飛ばしてきたであろう、2頭の馬を手入れしてあげて、馬車をきれいに掃除し終わったころ、お二人が起きたらしい。


お二人は、部屋で食事をし、お茶を飲み、、、時折、くすくす笑い声がする。

・・・・通常営業だな、、、、




*****


2日目になって、来客があった。


この国の皇弟殿下。まあ、いつものようにお忍びでのご訪問である。


村長の孫息子を伴なってやってきた。ハナのいるマキシさんの家に真っすぐ行ったらしいが、こちらだと聞いて、訪ねてきたみたいだ。来なくていいのに、、、、、


「あら、ヘンリー様、こんにちは。」

「ん、ああ、、、、」


いつものように出迎えたハナ。


彼が言葉に詰まるのには訳がある。今日のハナはちょっと違う。


俺の上司がピカピカに磨き上げて、、、、爪までピカピカ、、、、シンプルだけど質のいいワンピースを着せられている。きれいなグリーンだ。寒さ対策に、もこもこのカーディガンは黒。短い焦げ茶色の髪に似合う、これまたきれいなグリーンのカチューシャ、、、どんだけ独占欲が強いんだ??絶対これ、けん制してるよね?まあ、、、、いつものことだけど、、、、荷物が異常に多かったのも頷ける、、、、


「こちら、私の《《従兄弟》》のジュリです。」


すぐ後ろに控えていた俺の上司が、すっと間に入る。

「初めまして。《《ハトコ》》のジュリです。いつもハナがお世話になっているようで。」

流れるように握手を交わしている。怖い、、、、


マーサの家の食卓に何枚かの紙が広げられる。


「早速ですが、この村の新規事業の提案なのですが、、、」


おもむろに、プレゼンが始まった。


ヘンリー様と村長の孫息子に、用紙が配られる。


「傾斜のある地形、雨期にまとまった雨が降ること。その後の乾期。降雪量も少ない、、、及び夏季の日照時間等を考えましたところ、ブドウを栽培し、ワインを作ったらどうかと。

資料は2枚目以降に添付しておきました。

平坦地はもちろん、住民の皆さんに小麦やジャガイモなど、生活に必要な作物を栽培するとして、耕作放棄されている傾斜面の畑を中心に作付けします。

必要なのは、苗木、及び支柱、なにより農業技術指導者ですね。

作業員は公募します。もちろん、この村出身の方優先です。

運営は公社方式で。働いた方には給与の形で給金支払い。

助成金はもちろんですが、興味のある資産家の方に出資を募る、のもありですね。

作付けが終了したら、手入れをしながら、ワイン蔵の建設。

このためにはレンガが必要ですが、先日、国境沿いの放棄された石切り場を見に行ってみたところ、この石が使えそうです。石切りの職人も必要です。レンガを焼くための窯を作るよりは効率がいいと判断しました。

・・・・ご質問は?」


「・・・苗木と指導員は、どこから?」


「殿下、ヴォーレ国はワイン大国です。ここに要請してはいかがでしょう?」

「ヴォーレか、、、、ライバルになるかも知れないのに、協力を仰げるのか?」

「歴史が違います。驚かないと思いますけど?それに、地質や気候によってワインの味も変わると聞きます。喜んで協力するかと?楽しそうですし、新しいワイン。」


ちらりと、ヘンリー様が、ハナと上司を見る。いたずらっ子みたいな目だ。相変わらず、、、、垂れ目がカワイイ、、、まつげも長いんだなあ、、、、


「まあ、いいか。でもな、村民の年寄り連中は働けまい?どうする?」

「はい。それについては、資料の4枚目をご覧ください。」

「・・・・・」

「この村の家々は、垣根のように家の周りにブルーベリーを作っています。そこで、このブルーベリーを増やして、飴を作ります。」

「・・・飴?そんなものが商売になると?」

「ええ、、ブルーベリーは目に良いんです。本当に。これで売り込みます。民間薬みたいなもんですね。年寄りでもできます。これが軌道に乗ったら、ジャムなども展開したいですね。」

「・・・・・」

「ほかに、ご質問は?」

「この主導は誰が?お前がやるのか?ハナ?」

「いえ。ここは今後のモデル地区にします。ぜひ、ヘンリー様、ご自身が指揮を執っていただけると、すんなりいきますね。」

「・・・・僕が、か?」

「はい。なんだかんだと利権が発生します。例えば、耕作放棄地にもかかわらず、所有権を主張する者がでてきます。そのほかにも酒税の管理、もろもろです。もちろん、ヘンリー様に額に汗して働けとは申しておりません。名前と指示だけ、、、十分です。」

「うーーーーーん、、、、、」

「まあ、ご検討ください。では、今日はこのくらいで。」


にっこり笑って、ハナはジュリと一緒に客間に引っ込んでしまった。


・・・・いや、、、俺も、、、この重苦しい空間が苦痛だ、、、、


マーサがそそくさと客人二人にお茶を出す。



「おい、お前、、エールと言ったかな?あの、ジュリ、は、何者だ?」

「ハナのハトコ、みたいですね。一昨日遊びに来ました。」

「・・・・・文官ぽい見た目だが、剣タコがあった、、、、」

「・・・・・」

「ハナは、、、なんだ、、、その、、、」


ああ、、、、可愛かったですよね?


「完璧だな!」


ああ、、、、そっち?




















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