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第21話 チェックメイト 白

「大変です!陛下!北街道のドエル帝国の国境に、一千を超す兵が駐屯し、野営を始めた模様です。」


「・・・・あら?」


青天の霹靂、って、こういうことを言うのねえ、、、、などとのんびり、夫と話す。


「原因は、ジュリのお姉さまと見たわね、、、、」

「・・・・・」

「上手くやってたのに、急に帰ってくるから、おかしいと思っていましたよ。私たちの結婚式を口実に、逃げ帰りましたね、、、、」

「どうする?」

「お姉さまを出しましょう。屋敷にこもっていらっしゃるんでしょ?ドエル帝国の皇帝陛下からの直々の申出ですしねえ、、、、正式に許可申請が出ていたので、許可しましたよ?」

「・・・まあ、そうだな、、、」

「大公殿に、ご挨拶がしたい、と、書簡に書かれておりましたから、、、、お姉さま、詰み、ですわね。」

「そうだな、、、」

「ヘンリー様の戴冠式とあわせて、結婚式もするのでしょうか?うふふっ」




*****


ほんの1か月ほど前、私の戴冠式と、ジュリとの結婚式が滞りなく行われました。


ヨナスやマキシさんご夫婦もお呼びしました。急に国元に帰ることになったけど、、、みんな頑張って、ブドウを作っているようで、安心しました。ブルーベリーの飴も貰いました。農作業の忙しい時季でなくて良かったです。


国内からたくさんの種類のワインが集まりましたので、みんな楽しそうに飲み比べしていましたね、、、、クマ所長と盛り上がっていました。


ドエル帝国の新しい皇帝陛下も、出席してくださいました。

私とジュリを交互に見てから、笑っておられました。


婚約者さんとご一緒に、と、ご案内したのに、おひとりでした。


ジュリのお姉さまをご紹介いたしましたら、、、、お姉さまは、私が手配していた紺色のドレスがお似合いでしたが、、、、その場に跪き、プロポーズなさっておりました、、、ご返事は頂けなかったようですよ、、、


よく食べて、よく飲むお姉さまを嬉しそうに眺めているヘンリー様は、もともと少し垂れ目なのに、目が無くなっちゃうほど微笑んで見つめています。何よりです。


さすがの大公様も、何が起きたのかと、目を白黒させていらっしゃいました。うふふっ、、、、


もちろん、国中の方からお祝いしていただきました。


私は、、、ジュリを諦めなくてよかった。本当にそう思います。



*****


「俺の上司が、、、即位式と結婚式一緒にやったから、、、、ヘンリー様が、僕もそうしたい、とか言いだしちゃって、、、、、」

「あら?いいんじゃない?何か問題が?」

「・・・・・」


久々にヴォーレ国に帰ってきたエミルが、酔っぱらって絡む。めんどくさい奴だ。

マーサは、エミルの空いたグラスに、またワインを注ぐ。


「フローレンス様も、国内が落ち着くまでは、とか、、、婚約者だと言い切ってたから、みんな、、、国民もそう思っていて、、、側近も、、軍も手なずけちゃったし、、、、」

「うんうん、、、」

「ヘンリー様がケガしてたから、風呂も入れてたし、ご飯も食べさせてたし、、、」

「・・・ああ、、、、」


大公家の遺伝的な性格なのかしら?習慣?弟もやってたわねえ、、、、


「ヘンリー様も、ハナが好きだったのかと思ったら、、、、フローレンスに会わなかったからだよ?とか、、、恥ずかしそうに笑うし、、、かわいいし、、、、フローレンス様に、自分の実母が農民だった、って言ったんだって、、、そしたら、、そうか、その方がいなかったら、お前は生まれてないんだろう?良かったな。って言われたんだって、、、、髪色や身分にこだわっていたのは、自分だったんだなあ、って、、、、」

「・・・」

「とにかく、、、何の問題もないんだ。・・・・フローレンス様以外。」

「はい?」

「ヘンリー様が急に、、、グイグイ来るもんだから、、、」

「・・・ああ、、、、」


フローレンス様は、鬼の教官とか、緑色の悪魔、とか、、、異名に事欠かないけど、、、、もとをただすと高位貴族の御令嬢だ。大公家は王位継承権をお持ちなので、15歳まではきっちり帝王学を叩きこまれるし、もちろん、社交も。皇帝陛下に嫁ぐのにも、何ら問題はない。

長いこと、軍とか、男社会にいたから、男の裸ぐらい平気だろう。酒も強い。

・・・・・ただ、、、、、多分、、、、間違いなく、、、、処女だ。今、32歳だけど、、、

そこかなあ、、、、、

・・・一見、無害そうなヘンリー様は百戦錬磨だし、、、これ、、、詰むな。




フローレンス様の指先に口づけて、

「お願い、、、、早く帰ってきてね?」

と、上目遣いで言うヘンリー様、反則です。侍女が3名ほど倒れました。




*****


そして、、、、、フローレンス様は、それから屋敷に引きこもり、、、、現在に至る。


国境付近のドエル帝国の軍は、のんびりと野営しているようです。



「ごめんね、僕がフーを迎えに行ってくるよ、って言ったら、一緒に迎えに行きたいって、軍もついてきちゃって。こちら側には入らないようにちゃんと言ってあるからね。」

「はあ、、、、」

「君の父上には快く承諾してもらえたよ?王家の許可も取ったし。ね?帰ろう?もう、君のドレスも届いているんだ。」


意外なほど強引に、、、ニッコリ笑顔を武器に、、、、止める侍女をなぎ倒し、、、、


フローレンス様の部屋までたどり着いたヘンリー様は、跪いて、フローレンス様の手を取っている。


「わ、、、、私、、、、男の方と、、その、、、、お付き合いしたことが、、、無いんです。」


ぱああっと、ヘンリー様の顔が明るくなる。


「・・・嬉しい、、、じゃあ、僕が君の初めてなんだね?優しくするからね?」


「・・・それに、、、もう32歳ですし、、、」


「うん、、、早く子供を作ろうね。たくさんほしいね。僕、後宮は要らないから。君がいればいい。」


「・・・・・」



ここに来て、形勢は完全に逆転したな。意外、、、、、


エミルは、なんで俺こんなところに立ってるんだろうなあ、、、、と、思いながら、かつての鬼教官が頬を染めるのを眺めていた。



もうすぐ春だなあ、、、、

ブドウの新芽も出ただろうか、、、、


いろいろと終わったけど、またいろいろ始まるんだなあ、、、、思いのほかいいお天気だ。


エミルは窓から外を眺めて、フローレンス様を待っている兵士や国民が、やはりこの青空を眺めて、同じようなことを考えているんだろうなあ、、、、と、、笑った。













本文、完です。

番外編に続きます。

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