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課外授業-守護神キアン-

現在の中等部には、今世紀最大と期待されている生徒が2人いる。

そのため通常では、高等部で行う課外授業を前倒しで行うことになった。


それは“守護神の業務を見学する”貴重な授業。


初等部~高等部がある校舎は、東市に位置する。

距離が近い東市の守護神、キアンに会うことになった。


「どれぐらいかかるのだろう?」

窓がないマイクロバスで、中等部の5名の生徒とスキル訓練の女性教員が、

キアンがいる場所へ向かう。


守護神は国にとって重要な存在のため、彼らの身を守るために場所を隠している。


バスの中では、守護神キアンについて話題が上がる。


「キアン様って男性?」1074番が聞く。


「授業で勉強したじゃん、今は女性らしいよ。

勝手イメージだけど、厳しそう…」1070番が言う。


「守護神って普段どんな業務をするのですか?」1073番が教師に聞く。


「私も詳しいことは知らないの。直接キアン様に聞きましょう」と教師が答える。


「1074番はとにかく礼儀よくね!」1068番が釘をさし、みんなが笑った。


「子ども扱いしないでよ!」ぶぅっと、頬を膨らませる1074番。


1時間ぐらい経つと、マイクロバスが停車した。


いよいよ到着したようだ。


バスを降りると、目の前には草原が広がっていた。


草原の中には、真っ白なドームが1つ建てられ、まるでおとぎ話に出てくる風景のようだ。


ドームの前には厳重な正門がありガードマンが数名立っていた。


通行書をガードマンにみせ、中に進んでいく。


ドームの中は数え切れない本と植物に囲まれ、真ん中には2階に続く階段がある。

異国の世界のようだ。


「待っていましたよ。」優しい穏やかな声が2階から聞こえた。

赤い椿が描かれた、真っ白な着物を着た40代後半の女性がそこにいた。

長い真っ黒な髪を結んで、真っ赤な唇が白い肌をさらに綺麗にみせる。


彼女がキアン様だ。

想像していた守護神とは思えない風貌に生徒全員が驚いた。


「わぁ・・・・!」美しさのあまり1070番が声を出す。


めちゃくちゃ美人!!


キアンのお付きの人が会議室へ案内をしてくれた。


縦長の机があり、両側に椅子が何脚も並べてある。


奥側にキアンが座り、生徒は手前の椅子に座る。


「ようそこ、東市の砦へ。キアンに着任し早20年が経ちます。」

お辞儀する所作も美しく、守護神である品格を感じる。

なにより、キアンからはおびただしいエネルギーを纏っていた。


「私は1089番です…」「1090番です」「…」


お互いに挨拶が済むとキアンの隣に立つお付きの人から、課外授業の説明を受けた。


「中等部の皆さんには、本日から3日間キアン様の業務を見学していただきます。

大変貴重な機会ですので、ご質問がありましたらお気軽にお聞きください。」


早速手を挙げたのは1069番。

「5代都市の守護神はその市以外へ移動することはないのでしょうか?」


「はい、力が尽きるまで選ばれた場所で祈りを捧げます。」


「世代交代はどのタイミングなのでしょうか?」今度は1068番が聞く。


「力が年齢とともに衰え、また消失すると交代となります。

現在の守護神は、年齢も性別も異なります。」


現在の守護神者の情報は以下となる。


西市のカノア様は30代女性で、最近着任されたそう。

南市のウィル様は40代男性。

北市のアテネ様は70代の男性で世代交代の話が出ているが、まだ同等の力を発揮できる候補者が見つかっていない。

中心都市のソフィア様は60代女性。彼女も世代交代の噂がでているが、まだまだ現役として活動をしている。


ソフィア様になるには、東西南北に属する守護神以上の力が求められるため世代交代は、大きな出来後である。


「また守護神も病にはかかるため、いつ何時でも引き継げるよう候補者を同じ砦に置くようになっていますが、任せられるイハが現地点では見つかっておりません。」


「守護神同士で話す機会はあるのでしょうか?」1073番が聞く。


「月に1度、守護神と国のトップ者でオンライン会合が開かれます。」


その後も質問が続いた。

「守護神様はシールドを……」「候補者になるには……」「一日の業務は……」


今日は質疑応答で終わり、明日から守護神の実践を見学することになった。

「それでは部屋にご案内いたします。」付き人が、生徒たちが泊まるための部屋を案内してくれる。


「1074番さんと1073番さんは残ってくれるかしら。」キアンが2人に声をかけた。

2人は顔を見合わせ、席に戻った。


「貴方たちはいずれ、私と同じく守護神 に選ばれるでしょう。」

まさか現役の守護神に言われるとはと驚いた顔をする。


2人の驚いた顔をみて、キアンは笑った。

「ふふっ。エネルギー量をみればわかるわ。」


「守護神になると外の人間と会うことになるわ。私たちと違う彼らは魅力的かもしれない。でも忘れないで。私たちは選ばれた人間であることを。」


「命尽きるまでイハとして生きるのよ。」


1074番は命がつきるまでという言葉に引っかかった。

私たちは何のために生まれてきたのだろう?


―翌日―

朝食をとった後は、守護神の業務を見学する。


キアンが住むドームの一部屋に、聖堂がある。

そこで3時間お祈りをする。


東市にかかっているシールドを強化するためだ。


午後になると、力を常に最大限発揮できるよう修行を数時間行う。

身体の中心にエネルギーをため続ける基礎訓練。

基礎中の基礎だが、守護神は何十時間もエネルギーを放出することが求められるのだ。


また武術訓練も行っているそう。

エネルギー四肢にため、組手を行う。エネルギーを加えることで5倍の威力が増す。


生徒たちは見学ができなかったが、守護神は外の人間が住む町に行くこともあるそう。

かけたシールドが届かない場所を補強しに赴くそう。


その後の業務は守護神によって異なる。

キアンは植物研究科の一面もあり、農作物や薬の材料を研究している。


見学をしてみて生徒は守護神の偉大さを改めて感じた。


「守護神に選ばれても、日々鍛錬が必要なんだね。」1069番が言う。


「守護神は常に力を発揮できるよう日々訓練を欠かせられません。

彼らの努力が私たち国民を守っているのですよ。」尊敬の眼差しでキアンを見る付き人。

彼女がキアンに着任してから、付き人をしているそう。


「エネルギーを取り入れた武術訓練は高等部からだよな」1073番が1068番にきく。


「まだエネルギーが不安定だからね。」


生徒たちは来る前より、生き生きとしていた。

今後守護神になれるかどうかは分からないけど、各々目標が見つかったようだ。


「「「貴重な時間をありがとうございました!」」」


生徒たちは無事3日間の課外授業を終え、校舎に戻った。


彼らを乗せたバスがドームから遠ざかってく姿をキアンと付き人が見送る。

キアンが付き人にポツリを言った


「私たちイハは、外の人間には知られない存在。

彼らから尊い存在だと、崇め讃えられることもない。」


その言葉に付き人は答えた。

「彼らたちも、きっと理不尽な世界を受け入れてみせますよ。」


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