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初恋



理玖は腕を解いて身体を向かい合わせにすると、両親指の腹で愛里紗の涙を拭い、両肩を掴んで目線を合わせた。




「俺はお前の笑顔が好きだよ」




彼は今日に限らず何度か『好きだ』と口にしてくれた。


でも、可愛い子がいればすぐ『可愛い』って言っちゃうし、優しくしてもらったら『優しいね』って。

昔から思った事をすぐ口にするから、好意があると度々勘違いされていた。



それは女子だけに留まらず、男子にも『お前スゲェな』とか『カッケェな』とか『頼りになるな』とか。

日常的に人を立てているから本音と冗談の境目がわからない。




「冗談キツイよ。またいつもの他の子にも好き好き言ってるやつでしょ」




告白を間に受けている自分を切り離すように

手を解こうとしたけど、彼は解かれぬように力を加えた。




「逃げんな。それがお前の悪い所。勘違いしてるようだけど、冗談でも他の女に好きって言ってない」


「……」




と、稀に見るほど真剣な眼差し。

冷静のまま話の主導権を握る。




「お前は俺の初恋なんだ」


「……私が、初恋相手?」




聞き返すと、彼は間髪入れずに小さくコクンと頷く。




ーー初恋。

それは、今日初めて明かされた胸の内。

谷崎くんとのほろ苦い初恋を経験してきたからこそ、その意味が身に染みるほど理解している。




理玖は愛里紗の肩から手を離すと、過去の自分を思い描く。




「中学に進学したての頃、毎日暗い顔して登校して来る奴がいた。……それが、お前。最初は学校が嫌いなのかなとか、人に言えないような悩みを抱えているのかなとか、色んな事を考えてた。でも、同じクラスになった時にその原因を知った。好きな奴が忘れられないという事をね」


「……知ってたの?」




そう聞くと、理玖は無言でコクンと頷く。


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