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熱い涙



自分でもびっくりした。

大量に沸き立つ涙が一体何を意味しているのか分からない。

我慢しようと思っても涙は止められない。


理玖が日本からいなくなってしまうと思ったら……。

もう、気軽に会えなくなってしまうと思ったら、いつしか深い悲しみに飲み込まれていた。




「あり……さ……?」




理玖は私が泣くなんて思っていなかっただろう。

自分でもこんな感情が眠ってたなんて知らなかったよ。


『勉強頑張ってね』とか、『塾で会えなくなるのが残念だね』とか言って、気持ちよく送り出せるものだと思っていた。



でも、実際は醜い感情ばかり。

イギリスに行って欲しくないなんて。

このままじゃ、将来を応援するどころか一方的な感情を押し付けてしまう。



再会してからまだ数ヶ月だけど、向き合い続けた時間は過去の自分を大きく変えた。

中学卒業と共に自然消滅した時は、今みたいな未来を想像してない。

そもそも再会すると思っていなかったし。


今は交際していた頃とは違う感情が芽生えている。




理玖はすすり泣く愛里紗をボーッとした目で眺めたまま。

中学生当時から今この瞬間まで、愛里紗が自分を想って感情をむき出しにした事がなかったから。




愛里紗は表情を隠すように後ろを向いて、溢れる涙を袖でゴシゴシと拭う。




「………あっ、ゴメン。私、どうしちゃったのかな。こんなはずじゃなかったのに」




泣いてる姿を見られてしまった。

友達として応援したり、気丈に振る舞わなきゃいけないのに。




愛里紗は理性と戦いながら目を擦っていると……。


ガバッ……


理玖は愛里紗の背中を包み込むように抱きしめた。




「えっ……」


「俺、もう我慢しなくていいかな」




愛里紗の心境の変化で壁が排除された瞬間、理玖は心のブレーキを踏み続けるのを辞めた。

敢えて言葉にしなくても、背中から直に伝わる胸の鼓動と、力強く抱きしめている腕が全てを語っている。




「お前のそーゆー表情とか仕草とか。我慢してても理性保てなくなるから……」


「……っ」



「好きだ。昔も今もお前の事が……」




暗闇の隙間から覗かせる月明かりが二人を照らしている。


これは恋なのか……。

それとも、傍からいなくなる寂しさなのか。

身体が拒まないから余計自分の気持ちが分からない。




震える頬に熱い涙が伝う。

涙を止めるように強く噛み締めた唇は切れそうに痛くて……。

しきりに涙が流れてくるから、頭が締め付けられるようにガンガンする。




だけど、これだけは確か。

自信を持って言える。


彼を想って、私は泣いた。


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