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やんわり断る彼




ーー制服のブレザーの中にカーディガンを挟むようになった、ある日。

放課後、一階の図書室へ借りていた本の返却に行った。


来たついでに別の本を借りようと思って、窓際の腰までの高さの本棚前でしゃがみながら本を選んでいると、頭上の窓の向こうから人の話し声が降り注いできた。


窓の向こうは畑。

誰かが畑作業に来たのかなと思い、何となく窓を覗いてみると、そこには理玖と知らない女子の姿が。


女子はソワソワした様子で落ち着きがなく、これから告白が始まりそうな雰囲気に。




まさか、彼氏の告白現場に偶然居合わせるとは……。

壁一枚挟んだ向こう側に自分が居る事がバレたらまずいと思って、なだれ込むように身を隠した。


不幸中の幸いで図書室には自分以外三人しかいない。

だけど、その三人中の三人が、物静かな図書室内で音を立てて身を隠しているうるさい私を白い目でじーっと見ている。


……まぁ、本人達にバレなきゃいい。




理玖の告白現場は遠目から見た事はあったけど、声が聞こえるほどの至近距離は今日が初めて。


一度気になると、とことん気になる。

まるで探偵のように本棚からゆっくりと顔をあげて告白現場を覗き見する。

自分でもいけないと思いつつも好奇心には勝てない。




「私と付き合って欲しいの。理玖を好きな気持ちは彼女に負けない自信があるよ」




積極的に告白している彼女は、一度も同じクラスになった事のない、髪が長くて清楚な感じの子。


図書室側に背中を向けている理玖と対面してる彼女が、一瞬チラッとこっちを見たような気がした途端、焦った私は反射的に本棚下へと身を隠した。

すると、再び図書室内の三人から厄介的な目で見られてしまうが、一大事件が起きてる今は周りの事なんて気にしない。




あー、ビックリした。

覗き見している事がバレたかと思ったよ。




心臓をバクバクさせながら本棚に背中に向けてストンと腰を下ろすと、背中越しに理玖の声が飛び込んできた。




「アイラちゃん、サンキュ」


「じゃあ私と……」




彼女が期待に胸を膨らませながらそう言った瞬間、理玖は間髪入れずに言った。




「アイラちゃんってさ、超かわいくて性格が良いし。付き合ったら友達にめっちゃ自慢できるね」


「ええっ、うそぉ! それなら……」



「だけど俺、今はその時期じゃないんだ。付き合えなくてゴメンね!」




理玖はやんわりと断わると、彼女の頭をポンポンと二回軽く叩いた。

私は胸をドキドキさせながらその様子を再び本棚の奥から見守っていた。


彼女はフェイントがかかった返事に一瞬期待を寄せていたけど、ポンポンされた途端みるみるうちに赤面していく。

見ている側まで、本気で好きなんだな~と思うくらいに。




「じゃあ、その時期が来たら私と付き合ってね。絶対だからね~!」




理玖はうんともすんとも言わずに、にこやかに手を振って校舎へと戻って行った。


取り残されてた彼女は泣いていないし、仕方ないなといった表情でふぅとため息をつく。

まるで自分事のように一部始終を見ていた私は、理玖という人物が少しずつ解明されていった。


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