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二人の約束



「嫌な思いをさせたい訳じゃない。愛里紗の事は大好きだし、虫がいい話かもしれないけど、これからも友達でいたいと思ってる」


「………」



「それに、先日聞いてたでしょ。翔くんがノグちゃんに「あいつは……」って。翔くんは私が居ても感情をむき出しにするくらい愛里紗が気になってる。もう、その時点で恋は玉砕してるの。決して実る事のない恋を必死に繋ぎ止めてるの」


「………」



「酷いでしょ。でも、これが私という人間なの。欲張りだから大切なものを一つも手放せないの。愛里紗に翔くんの存在を隠し通すのが辛い。………ねぇ、ノグちゃん。私どうしたらいいかな。どっちも比較にならないほど好きなんだよ」


「……駒井さん」




ーーもう、一時間くらい経ったのだろうか。

その間、店内客は転々と入れ替わり、空席が目立つように。


ノグは愛里紗ばかりに焦点を当てていたせいで、同じく翔に想いを寄せている咲まで気が回らなかった。

二人のデートを目撃したあの日から、愛里紗ばかりを心配していたから。



しかし、いざ蓋を開けてみると、咲は幸せどころかいたたまれない現実に苦しんでいる。

そんな内情が伝わると、一方的に責め立てていた自分を反省した。




一口しか飲んでいない紅茶はすっかり冷めきっていた。

咲は伝えたい事を話し終えても、後戻りできない現実に不安と恐怖を覚える。


息が詰まるような状況下、耳を澄ませていたノグは沈黙を破った。




「……わかった。愛里紗には言わない。約束する」




ノグはこの件に関して目を瞑る事に。

咲は想いが伝わると、充血している右目から一粒涙をポロリと流した。




「ありがとう……、ノグちゃん」


「アタシは駒井さんの過去を知らなかったから、強く責め立てちゃってごめんね」



「ううん……」


「でもね、愛里紗に真実を知られる日が来たら、必ず自分の口から説明するんだよ。これだけは約束して」



「……わかってる。無理なお願いを聞いてくれてありがとう」




咲は約束を交わすと、安堵するあまり肩を震わせて泣いた。

ノグは咲の心情を察すると、スカートのポケットから取り出したハンカチで咲の瞳から溢れる涙を拭いた。


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