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忘れる努力




ーー三寒四温。

季節風が春真っしぐらに向かい、いよいよ卒業シーズンを迎えた。

今日から3月。

ぷっくりと膨らみ始めた(つぼみ)が開花を迎える準備を始めた。



放課後に咲を体育館裏に呼んだ木村は、約2年という長い歳月を経て告白した。


二学期の期末テスト前日に返し忘れたノートの件で迷惑をかけた日もあったけど、咲が転落事故を起こした際は迅速に動いてくれたり。

咲の知らないところで執拗に繰り替えされた悪口から守り抜く勇敢な姿を見せたり。

一日一日に想いを膨らませながら、新たなる決意を胸にぶつかる覚悟を決めた。



咲は急展開に戸惑っていたけど、木村が以前から恋心を寄せている事に気付いていたので割と素直に気持ちを受け入れた。




「ありがとう。嬉しい……」




ニッコリと微笑んだ予想外な返答に木村は目を丸くした。

しかし、話はここで終わりではない。




「木村くんの気持ちは嬉しいんだけど、私にはどうしても忘れられない人がいるの。だから、今はいい返事が出来ない」


「そっか……」




木村はフラれたショックで大きな肩をストンと落としたが、話はまだ続く。




「でも、その人を忘れる努力をしてる最中だから、もう少し時間をちょうだい」




恋の受け入れ態勢は整ってないが、咲は自分なりに気持ちを整理しようと考えていたところだった。



告白を受けたとの一報は、翌日咲の口から伝えられた。




「事故がきっかけで木村くんに対する気持ちは変化してきたけど、まだそーゆー段階には踏み出せなくて……」


「……」



「恋って難しいよね。胸がトキめいてる時は幸せなのに、思うように進まないと悲しくなる」


「うん、わかる。でも、恋が思うように進んだら意外と幸せじゃなかったりしてね」




翔くんという壁が立ちはだかっている私達の恋愛話は自然と制限がかかっていて、互いに100パーセントの本音が伝えきれない。

でも、もう二度と隠し事は避けたいし、これ以上傷付け合わないようにしていきたい。




「そうかもね。まだ恋の波には乗れないけど、いつか心が成長していく日が来るのかな」


「きっと来るよ。順調な恋を迎える日がきっと……」




心が治癒するまで時間がかかりそうだけど、見ている限りでは回復傾向に思える。

咲は宝物だから、大切にしてくれる人と幸せになって欲しいと心から願っている。


想う恋もあれば、想われる恋もある。


一つ恋が終わっても、全てが終わりじゃない。

そこは行き止まりじゃなくて、また新しい道へのスタートラインなんだよ。


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