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一方通行の恋



「バッカじゃねーの。アタシ達の話にめり込んで来るんじゃねーよ。お前マジでキモいんだけど」


「盗み聞きなんて趣味悪くない? 黙ってあっち行ってな」


「やっぱり駒井が好きなんじゃねーの?」



「木村と駒井、結構お似合いよ~」


「告って付き合っちゃえよ」


「何? アタシ達が木村の恋のキューピット役? 超笑える。キューピットなんて勘弁してよ」




三人組は、割って入ってきた挙句に咲を守る木村が気に食わず集中攻撃のターゲットに。

一方、緊迫している状況を目の当たりにした私達は、静かに様子を見守る事にした。


木村は嫌味に一切耳を貸さず、凛と立ち向かう。




「お前らはどうして駒井の悪口を言うの? 悪意がなかったとしても、この話が本人の耳に入ったら傷付くだろ。それに、俺がこの場から離れるのは、お前らが悪口をやめてからだ!」




きっぱりとそう言うと、三人組は嫌気に満ちた目で互いに合図し合った後、鼻であしらいながら再び冷淡な目を向けた。




「説教くせぇ奴。木村ごときが偉そうに」


「あんたが勝手に話に突っ込んで来たんだろ。あんたが先に引っ込めよ」


「いいよ、沙織。こんな奴相手にするのも面倒臭いからあっち行こ。こんなのと話してても時間の無駄無駄」




三人組は去り際に嫌味ったらしくひとことずつ文句を言って、正面の木村を避けながら順々に階段を下りて行った。




「ばぁーか、勝手に駒井と仲良くやってろよ」


「お熱い王子様ですこと。オホホ」


「アタシ達に説教してんじゃねーよ。てめぇは不愉快なんだよ」




木村は暴言に頭にきていたが、最後までじっと耐えていた。




私達がいる廊下から木村までの距離は、およそ4メートル。

当然、私達がすぐ側にいるなんて気付くはずもないし、やり取りが張本人の耳に入ってる事すら知らない。


それでも、最後まで男らしく咲の存在を守り抜いた。




三人組を見届けている木村の背中を瞳に映した私達は、お互い口を黙らせたまま。


ふと咲の様子が気になって目線を当てると……。

ボンヤリしたような目から大粒の涙を左右非対称にポロポロと滴らせていた。

目線の先には階段に一人取り残されている木村。


僅かな感情を覗かせる咲に思わずひとこと漏れた。




「咲……」


「………わかってる。わかってるから、何も言わないで」




震えた声でそう言うと、俯きざまに滴る涙を右手の甲で拭う。


咲の言葉は核心を得るものじゃなかったけど、その意味がわかったから隣からそっと手を握った。




翔くんが忘れられない咲。

その傍らで咲を思い続けている木村。


一方通行の恋。

まだ未来はぼやけてるけど、咲に明るい未来が訪れる事を心から願っている。


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