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フラッシュバック



「お前は手元しか見てないかもしれないけど、俺はこの目で一部始終見ていた。確かに、お前は駒井の手を振り払ったけど、駒井は階段手前ですでに足をひねって体勢を崩してた。だからお前のせいじゃない」


「嘘っ! そんなの信じられない」



「しっかりしろ。あれは不慮の事故だから自分を責めるな。あの時はお前が何をしなくても駒井は階段から転落してたんだ」




木村はパニック状態で自らを責め狂う愛里紗に言い聞かせるが、愛里紗は素直に聞き入れられない。

ただ、自己嫌悪に陥るだけ……。




それから間もなく第一発見者の木村は学年主任に呼ばれて、事故状況の説明をする為に応接室へ。


私は興奮で過呼吸になっていたせいか、養護教諭に連れられて保健室に到着した後は、呼吸を整える為の紙袋が渡された。


……でも、使わなかった。

気が滅入っていてそれどころじゃない。

今はそんな小さな配慮ですら煩わしく思っていた。




ーー咲が病院へ搬送されてから、どれくらい時間が経ったのかわからない。


私は保健室に身を残したままベッドにお尻を根付かせていた。

時間と共に気分は落ち着いてきたけど、頭の中は咲の事で目一杯に。


すると、事故報告を終えたばかりの木村は、保健室の扉を開けて顔を覗かせた。




「江東。……大丈夫?」


「……ん」




デスクで作業をしていた養護教諭は木村の入室に気付くと、手元の書類から目を外して言った。




「江東さん……。後で家に連絡するからもう帰りなさい」




だが、愛里紗は木村の顔を見た途端、転落シーンがフラッシュバックしてしまったかのように再び取り乱した。




「咲はっ……、咲は何処の病院に搬送されたの? いま先生から話を聞いて来たんでしょ。ねぇ、早く教えて。一刻でも早く病院に向かわなきゃ」


「落ち着けよ。駒井ならまだ検査中だろ?」



「私、行かなきゃいけないの。咲が心配で気が気じゃない。検査が終わった後でもいいから咲に謝りたいの。ねぇ、お願い……。居場所を教えてよ」


「搬送されたばかりなのにすぐ面会出来る訳ないだろ。今日一日は安静しなきゃ無理だろ。せめて明日にしろって!」



「ううん、今日じゃなきゃダメ。たとえ意識が回復していなかったとしても、『ごめん』のひとことを伝えなきゃ。咲に酷い事を言ったから、謝るまで気が治らないの……」


「江東……」


「……参ったわね」




一心不乱に木村に詰め寄る愛里紗を見た養護教諭は、深いため息をついて降参したように搬送先の病院を教えた。


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