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彼が探していた相手




二年生に進学してから二度目の通知表を受け取った、12月下旬。

愛里紗に口を利いてもらえなくなってから、およそ3週間が経過。


隙を見て何度も謝ろうとしたけど、彼女は聞く耳を持ってくれない。

でも、自分が同じ立場だとしても許せないと思う。


だから、毎日が苦しい。




ーー夕方からのアルバイト勤務を終えた。

同日シフトに入っている翔くんは、交際してから初めて私を外へ呼び出した。


しかし、残念な事に明後日のクリスマスイブの予定を立てる為に呼び寄せたような雰囲気ではない。

店を出てから、彼はいつも通り表情一つ変えずに私を連れて付近の公園に向かった。




先日、数年振りに愛里紗に辿り着いた彼。

その日を境に仕事以外ほとんど口を利いてくれなくなった。


私達の関係はあの日から亀裂が入ったまま。

心の隙間風は吹き荒れる一方。

翔くんは長年愛里紗を想い続けてるから、私なんて簡単に目もくれなくなった。




目的地の公園に到着すると、翔はベンチ前で足を止めた。

咲はまるで他人扱いのような態度に耐えきれなくなると、気持ちが後ろ向きに。




「や……やっぱり、私……帰っ……」

「別れたいんだ」




逃げるような素振りを見せた瞬間、翔は背中越しから言葉をかき消した。


固い決心は揺るぎない。

咲の悪い予感が見事に的中して思わず顔を俯かせた。




彼は職場を出てから背中を向けたままだけど、私にはどんな表情をしてるか予想がついた。


大きな背中は二人の間にそびえ立つ壁のよう。

間に吹き付けている風は、互いの距離感を知らしめるかのようにひんやりと身を包む。




翔くん……。

少しは私の気持ちも考えてくれた?

翔くんの恋心に気付いていても、何も言わずに振り向いてくれる事を願ってきたんだよ。



……でも、そんな押し付けがましい事なんて言えない。

恋心に気付いてるなんて言ったら、翔くんの頭の中は再び愛里紗色に染まっちゃう。



やっぱりダメ……。

別れたくない。

愛や進展に欲深くなっても、一緒にいるだけで幸せだから。



家族と変わらないくらい大切な愛里紗を失って、あまりにも軽率な判断を下した自分に嫌気がさしていたのに、翔くんまで失ってしまったら心の拠り所がなくなってしまう。




咲は思い止まってくれる事に期待を込めながら、震える指先で翔の腕にしがみついた。




「何……言ってるの。私が何か悪い事をしたかな」


「咲ちゃんは悪くない」



「それなら別れたくない。もう一度考え直し……」

「ごめん……。これは俺の問題だから」




翔は、咲の気持ちをシャットアウトするように揺るぎない気持ちを伝えた。

咲は心にしがみつくように腕をグイグイと引っ張っても反応しない。




「ねぇ、別れなんて受け入れられない」


「……」




逼迫した表情を向けても。

泣きそうに声を震わせても。

力を込めて何度も腕を引いても。


彼は別れ言葉を口にしている今だって向き合おうとしない。

関係はとっくに崩壊しているけど、私は自分の気持ちを守り抜く為に彼の気持ちにそっぽを向いた。


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