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誰も信じられない



愛里紗は真実が次々に明らかになっていくと、意識が遠退きそうなほどショックを受けた。




谷崎くん……。

私達、どうして再会しちゃったのかな。


会いたい気持ちを抑えてやり過ごしていたけど、なかなか会えなくて。

でも、会えたら会えたで残酷な現実が待ち受けていた。


大切な人達に私達の未来に蓋をされるくらいなら、一生会わない方が良かったのかもしれないね……。




しかし、見上げたノグは弁解をするように身を乗り出して気迫ある声で言った。




「でもね、あんたは小学生の頃から谷崎が好きだったけど、駒井さんも中学の頃から一途に……」

「ごめん。もう帰るね」




これ以上ノグの話を聞く気にはなれなかった。

今からどんな言い訳をされても受け入れられないから。


みんなが口裏合わせをしたかのように谷崎くんを隠すから、私は再会する以前の自分を捨てた。


ノグは咲の味方だった。

幼なじみの私の味方じゃない……。




でも、一番ショックだったのが、周りのみんなは谷崎くんまで辿り着いてたのに、自分だけが取り残されてしまったかのように知らなかった事。


咲の裏切り。

母が隠した手紙。

それに加えて、ノグは事実を知りながら口噤んだ。


立て続けにショックが続いていたせいか、もう誰を信じたらいいかわからなくなった。




愛里紗はベンチからスクッと立ち上がると、やつれた顔を向けた。




「家に泊めてくれてありがとう。服は後日返すね」


「待って、愛里紗っ……」




愛里紗は手のひらを返したような態度に急変すると、腕を掴んできたノグの手を振り切り走って公園を後にした。




頭がパンクしそう……。

度重なる恋の障害に、過去に置いてけぼりな私。

どうしてこうなったのか。

いっぱい考えてもわかんないや……。




愛里紗が滝のように大量に滴らせた涙をゴシゴシと袖で拭いながら、進ませていた足が自然と辿り着いた先は、翔と二人きりで毎日のように一緒に過ごした神社。




どうしてこの神社に足が出向いたのか分からないけど……。

多分、ここなら思いっきり泣けると思ったから導いてくれたのかな。


片手で数えられる程度の参拝客を横目に、鳥居をくぐり抜けてから、誰もいない本殿の裏に周り、スカートを整えてから軒下に腰を下ろした。




忘れもしない。

ここは、谷崎くんと最後に二人きりで過ごした場所。


長い歳月を経ても軒下から眺める景色は何一つ変わらない。

ただ冬色に衣替えしているだけ。


ここから恋い焦がれながら吹いたシャボン玉は、向かいの木々の方へと泳ぐように飛び立って行ったね。

あの頃の木々はまだ青々しかった。



軒下に腰を下ろして空を眺めながら、ストローからいっぱい新しい命を吹き込んだね。

シャボン液が全てなくなるまで吹き続けていたよね。




愛里紗がボーッとした目で空を見上げてると、突然何処からか吹き付けてきた風が髪を揺らして頬を撫でた。


それは、『泣いてもいいんだよ』と、言ってるかのように……。



その瞬間、強がっていた精神が崩壊した。

手で顔を覆い、肩を震わせながら声を押し殺してすすり泣く愛里紗は、木々の葉が擦れ合う音に泣き声が埋もれていった。


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