6 親父と桜
次の日の夜、家に向かった。
「桜も呼んどいた。源二、大丈夫か?」
「あぁ、俺と親父だけの話じゃねぇからな。」
「アタシがついてっから、心配すんな!」
「悪ぃな、面倒かけて。」
「いいよ。」
家に入ると親父がリビングに居た。
「親父、話がある。」
「…なんだ、急に。」
ピンポーン。
「アタシが出てくるよ。」
紫音が桜を連れてきた。
「どうしたの?紫音ちゃんまで。」
「いいから桜、ここに座って。」
「う、うん。」
親父の隣に桜、向かい合って俺と紫音。
「一昨日の夜何してた?」
口の中が乾く。
「一昨日の夜?別に何も?」
「8時位だ。心当たりねぇか?」
サッと二人の顔色が変わる。
「…ないな。何を言ってる?」
「バイクの音が聞こえないくらい夢中だったのか?」
「!!帰ってきてたのか?」
「ああ。紫音と二人でな。」
「あ!あの!おじさんは何も悪くないの!私が誘って」
「悪くねぇワケねぇだろ!自分の息子の同級生に手を出すってテメェ何考えてんだ!」
「違うの!私がずっとお父さんがいなくて寂しかったから!おじさんが慰めてくれて!おじさんも寂しくって!」
ガタッ!!!!
紫音が立ち上がった。
「おじさんが寂しい?じゃあ、源二はどうなんだよ!自分の息子放っておいて自分は寂しい?ふざけんな!!!!!!!」
「紫音…………。」
「源二だって小さい頃から寂しかった!それをいい大人が自分の息子より辛いって?甘ったれてんじゃねぇ!!!!」
「おじさんの気持ちを知りもしないで、紫音ちゃんにそんなこと言う権利なんてない!」
「じゃあ桜は源二の気持ちを知らなかったとでもいうのかよ!源二が桜の事好きだって事ぐらい知ってただろ!」
「そ、それは、でも私はおじさんの事が好きだったから!」
「おじさんはどうなんだよ!源二の気持ち知ってて桜に手ぇ出したのかよ!」
「…………知ってはいた。知ってはいたが、自分の気持ちを抑えられなかった。」
「へぇ?抑えられなかった?そんな軽い気持ちでアンタは自分と同じ辛さを源二に味あわせてたのかよ!」
「!!!」
「元奥さんが男と出てってツラかったんだろ?好きだったからツラかったんだろ?」
「あ、あぁ…………。」
「その気持ちを今源二が味わってんだよ!クソジジイ!!!気持ち悪ぃんだよ!!!!!ロリコンが!!!」
「紫音ちゃん!!言い過ぎだよ!!おじさんは悪くない!!」
「だったら桜、桜のおばさんに胸張って報告出来るよな?今から行くぞ?」
「待って!!…………それはまだ待って。お願い。」
「別にどうでもいいわ、そんなの。アタシは源二を傷つける奴を許さないだけ。桜ももうアタシに関わるな。」
「…………はい。」
「紫音、ごめんな、全部言ってくれてありがとうな。」
「いいよ、それよりさ。」
「あぁ。俺はこの家を出ていく。出来るだけ早く。住むところは紫音の両親が面倒見てくれる。」
「!中村さんのご両親に話したのか?」
「悪いか?世間体が気になるか?俺の知ったこっちゃねぇよ。で、テメェとは縁を切る。テメェの世話にはもうならねぇ。」
「…生活費はどうするんだ?」
「紫音のご両親に借りる。高校出たら働いて返す。」
「…………お、俺は、源二にどう接していいかわからなかっただけで、源二を」
「別にそんなモン聞きたくねぇよ。二度とテメェらには関わらねぇから安心しろ。」
「…源二…………。」
「話は終わりだ。紫音、行こうぜ。」
「うん。」
出て行こうとすると、桜が急に立ち上がった。
「…………良かったね!紫音ちゃん!源二君が構ってくれて!源二君は私の事ずっと見てたんだもんね!こんな事が無きゃ構ってもらえないもんね!」
「っ!!!!」
「黙れよ、桜。そんな事お前にはもう関係ねぇんだよ。俺らに二度と関わんな。」
「…………。」
そう言って家を出た。