2 不穏な噂
「ふう、美味かった。ごちそうさん!」
「お粗末様でした。」
「じゃあ、家まで送ってくわ。」
「うん、ありがと!」
桜の家は、早くに父親を病気で亡くしており、おばさんが一人で桜を育てている。
なので、この時間はまだおばさんは帰ってきていない。
桜は昔から父親が居ないことで寂しい思いをしていた。
紫音も俺も小さい頃はそんな桜を慰めていた。
二人で夜道を歩く。
「ねぇ、源二君はお父さんとまだ仲良く出来ない?」
「まだっていうか、親父は俺に興味ねぇからな。」
「そんなことないと思うけど…。」
「まぁ、俺の事はいいんだよ。桜は負担になってないか?」
「なってないよ!お料理は好きだし。美味しいって言って食べてくれるのは嬉しいよ。」
「そっか。なら良かった。」
当たり障りのない世間話しか出来ない。
俺みたいな不良が桜みたいな優等生で、可愛くて、人気者の彼氏になりたいなんて無理だろ。
まぁ、でも想うだけなら自由だ。
実らなくてもこの気持ちは大事にしていこう。
「送ってくれてありがとね!」
「いや、こっちこそ、メシいつもありがとな!」
そう言って桜と別れた。
家に帰ると親父も帰っていた。
挨拶も口も利くこともなく、バイクのエンジンを掛ける。
いつもの仲間が集まる廃倉庫に向かう。
俺の仲間のたまり場だ。
「おー、源二、お疲れ!」
「おーす、今日は集まりが良いな。」
「みんな暇なんだよ!それより源二、聞いてくれよ!」
「なんだ?どうした?」
「いや、お前の幼馴染の中村紫音っていったっけ?あの女の仲間がちょっかい掛けてきてウゼぇンだわ。」
「ちょっかいって、どんな?」
「いや、タイマン張れだの、レースで負けた方が土下座だのってよ。」
「手ぇ出したりしてねぇだろうな?」
俺達の仲間内では女に手を上げるのはご法度だ。
「出してねぇよ。アイツらもイキナリ襲ってくるワケじゃねぇし。」
「なら、適当に流しとけよ。」
「そうなんだけどよ?煽ってくんだよ。玉無しだ、ビビりだってよ。」
「あぁ、メンドくせぇな。」
「だろ?アイツらみんなツラは良いんだから大人しくしとけば、口説くんだがなぁ。」
「お前で相手してもらえんのか?」
「お?何だ?ケンカ売ってんのか?」
「お二人とも、お話し中すいません、あの噂聞いてます?」
後輩が割って入ってくる。
「「あの噂?」」
「何か隣町のチームがケンカチームらしいんですけど、こっちに進出してくるって噂です。」
「ああ、聞いたな。その噂本当なのか?」
「マジらしいっス。片っ端から潰してるみたいっス。目立つ奴は男も女も関係無いらしいっス。」
「は?女も的に掛けんのかよ。腐ってんな。」
「ま!ウチが負けるワケねぇけどな!」
「一応気にはしておいた方が良いかもっス。」
「みんな、聞いたな!単独行動は気を付けろよ!」
「「オウ!!」」
変なことになんなきゃいいが………。




