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第3話 デタラメの極み

 娘がコロナウイルスによる肺炎で亡くなった。しかも調べではワクチンは未接種だったという事実に、菅野(すがの) 環奈(かんな)の両親は「信じられない!」という顔をしていた。

 彼女は両親である自分たちに対し、確かに「ワクチンはちゃんと打ってる」と言ってたはずなのに。

 環奈は実の両親である自分たちに嘘をつくような子ではない。18歳になるまで一緒に暮らしていたのにそんな子に育てた覚えはない! と断言できるくらいには信用していた。




 環奈の両親は、なぜ娘が「ワクチンを打っている」と嘘をついて打っていなかったのか? その真相を知るべくとある探偵事務所に調査を依頼していた。


「菅野さん。我々が調べた限りでは、娘さんは反ワクチンセミナーに頻繁(ひんぱん)に足を運んでいたそうなんです」


 探偵事務所の調べた結果に、環奈の両親は愕然(がくぜん)とすることになる。


「!? 反ワクチンセミナー!? 何で!?」


「我々が調べた限りではそうです。反ワクチンセミナーを録音したものをお聞かせいたしますね」


 そう言って探偵事務所のスタッフはボイスレコーダーの再生ボタンを押した。




「結論から申し上げましょう! ワクチンの無料接種は政府の『国民管理計画』の偽装工作なんです!」


 ワクチンの無料接種は政府の『国民管理計画』の偽装工作……キマリ切った狂人でもなければ言えない内容をセミナー主催者は真剣そのものな口調で言い出した。


「ワクチンにはマイクロチップが入っていて、政府はマイナンバーと組み合わせれば、全国民がどこで何をしているのか逐一監視できるようになるんです!

 しかも2022年以降のワクチンにはマイクロチップの代わりにハイドロジェルというマイクロチップと同じ機能を持っていて、しかも生体部品であるため拒絶反応が出ないものが入っています!

 おまけにマイクロチップやハイドロジェルには洗脳電磁波を発する機能が搭載されていて知らず知らずのうちに思考が矯正(きょうせい)されて政府の操り人形と化してしまうんです!」


 ボイスレコーダーから流れてきたのは「徹頭徹尾(てっとうてつび)狂ってる」としか言えない内容であった。




「今はとてもいい時代です。昔はこんなこと言ったら政府の息がかかった者に暗殺される時代でした。

 今はこんなこと言ってもすぐには消されない時代ですし、SNSの発達で政府といえど真相を隠し続けることはできなくなりました。

 皆さん、騙されてはいけません! 政府はいつも噓をつくんです!

 その証拠に2022年の夏には電力がひっ迫すると言ってましたが実際に停電は起こりましたか!? 起きませんでしたよね!? こうやって政府は嘘をつくんです!」


 主催者の「自分にとってだけ都合がいいつぎはぎだらけの」狂った主張は続く。それも「政府は常に嘘をつく」という幼稚な発想の上でだ。




「私たちが声を大にして言いたいのは「コロナはただの風邪であり、(かか)っても死ぬわけではない」ということです!

 それに、コロナウイルスはカテキンに弱いんです。こちらの論文にも載っています! だから高カテキン飲料とイベルメクチンの併用でバリアを作ればほぼ罹ることはないんです!

 その高カテキン飲料がこちら、『KATEKIN緑茶』です! これとイベルメクチンを同時に摂取すればコロナに罹ることはほぼ無くなります!

 イベルメクチンはもちろん、この緑茶もセミナー終了後に予約販売いたしますので楽しみにしていてください」


 インチキセミナーの流れを地で行く商品紹介だ。さらに話は続く。


「そして今日は素晴らしい同志をご紹介したいと思います! 菅野 環奈さんです。よろしくお願いします!」


 拍手が起こった後、ボイスレコーダーの音声を聞いていた彼女の両親は「開いた口がふさがらない」ほどひどい内容を聞くことになる。




「皆さん、本日は集まっていただきありがとうございます。私は清き良き1市民として、ワクチンを接種しようとしている医者と戦っています。

 先生のおっしゃる通り、政府は医者と共謀(きょうぼう)して国民をコントロールしようとする恐ろしい計画を実行中です。私たちはそれに断固として戦わなくてはなりません!」


「環奈さん、あなたは大いなる勇気でもって医者を告発いたしました。それは素晴らしいことなのです。あなたは悪いことなど何一つやっていません。

 全てはコロナに便乗して『国民管理計画』を推し進めようとする日本政府にすべての罪がありま……」


「止めてくれ! もう聞きたくない!」


 環奈の両親による、悲鳴にも似た叫び声を聞いて探偵事務所の職員はボイスレコーダーの再生を止める。

 しばらくの間、沈黙が場を支配した。




「この反ワクチンセミナー主催者を調べることはできますか?」


「はい、大丈夫です」


 ようやく絞り出した依頼者の願いに、探偵事務所の職員は「大丈夫」だと言い切った。

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