恒良の恋2
世間様を騒がせるようなご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでしたと伝えておきます。
様々説明責任を果たさねばならないと考えてはいるのですが、おそらく僕の心を理解できる人はほぼ居ないでしょうし、おそらく僕のことは"狂人"と判断される方がほとんどでしょう。
また、わかったようなフリして何もわかってないような事を吹聴されることや、さもさも人を悪魔の様に罵るようなマスコミ、それを見るのも、考えるのも耐え難い、
ですから僕はこちらの手紙を遺すことで説明責任を果たしたこととし、一足先に失礼させていただくことにいたしました。
きっと自業自得なんて簡単な言葉で僕を言い表す人もいるでしょうが、そんな人は必ず正しいことがあると盲信した幸せな人生を送れているのでしょう、いつまでもそんな状態で生きていけると思っているのでしょう。
今の僕にとってはみなどうでも良いことですが。
僕の心に一番強く影響を与えたのはやはり、母の死でした。
母は僕を女手で一人育ててくれました。
いつも厳しいことばかり言われていた記憶しか無いですが、本当に優しさのある厳しさでした。
あまりお金の無い家庭でしたが賢くやりくりし、僕を大学まで出し、僕はずっと夢だった出版社に勤めることができた、全て母のおかげでした。
僕にとって母程偉大な存在はありませんでした。
それが運転手が心筋梗塞を起こして暴走するトラックが歩道に乗り上げ、歩く母に後ろから衝突、即死でした、運転手もそのまま死にました、
二度と見れぬような姿の母と対面しました。
一体何を恨めばよいのか、何故あの人があんな凄惨な目に合わなければならなかったのか、あの人はあんな死に方して良い人じゃないのに、
僕が独り立ちしこれから楽をさせようと思った矢先のことで、あれほど理不尽なことなどないでしょう。
またあんなになかったお金も本人の死後多額の慰謝料が支払われましたが、一番使って欲しい人はいません。
心に理解の無い人は母の死に意味があるなんて言ってきました。
こんな紙くずになるだけが母の生きた意味とでも言いたかったのでしょうか、怒りを通り越して呆れすら覚えました。
母が死んでから一年半ほど、僕はただ生きてました、そんなおり出会ったのが陽子でした。