第十二話 アンティーク屋いろいろ
改めて見てみると「アンティーク屋」とか「骨董屋」とかいう看板を掛けた店は、近くの国分寺とか国立に何軒かあった。
そんな店を恐る恐る覗くと、意外と店主は若い人達だったりする。
売っているものは、それこそまちまちで、古い机や椅子、田舎の家の茶の間に掛かっているようなぼんぼん鳴る時計や、箪笥を売っている店もある。
ハンガーに掛けた着物を売っている店、昔のおもちゃを所狭しと並べた店、もう使いようがないとしか思えない革のかばんを並べた店。おまけに、そのかばんにとんでもない高値がついていたりする。古そうな掛け軸を掛けて、古そうな茶碗ひとつ置いた店。店内すべてアメリカから持ってきたような、ピンクや黄色が賑やかな店や、あのお姉さんの店ほどじゃないにしても、ヨーロッパのものをおしゃれに並べた店もある。
なるほど、確かに自分の好きなものを好きな値段で売っているようだ。
そんな中に「拾得屋」という店があった。
歳は虎郎と同じくらいで、主は裕ちゃんという。「僕はねぇ、拾って得する『拾得屋』なんですよ」と言って笑っている。ぷよっと柔らかそうな奥さんが、生まれたばかりの赤ちゃんをあやしていた。狭い店はトイレもなく、薄暗い。でも彼も一国一城の主である。
「骨董屋」「道具屋」「アンティーク屋」。いろんな言い方があって、曖昧ではあるけれど、日本の物でちょっと値の張るものを扱っていると「骨董屋」。ちょっと昔の、そんなに高くないものを扱っていると「道具屋」。西洋の物を扱っていると「アンティーク屋」と大雑把に分かれているらしい。
昔から、「見たこともないもの」がいっぱいあることがくやしかった。だから子供の頃は、小さな家出を繰り返した。高校に入った頃には、もう田舎での生活が苦しくなっていて、本格的な家出を決行したものだ。大学に入ってからは、様々なアルバイトをしては、いろんな国にバックひとつで出かけて行った。
単なる出歯亀根性か放浪癖が性分なのだろう。
そしてこの自分の性分を、生涯まっとうできないものかと漠然と考えていた。
もしかしたら、このアンティーク屋という職業は、それが出来るのかもしれない。
「ただヨーロッパやアメリカ、好きな国に行って、アンティークを買ってきて売ればいいだけ、ふふふ」とお姉さんは笑っていた。
とすれば、自分の行きたい所に行って、自分の買いたいものを、自分の買いたい値段で買えばいいんだ。そして、自分の気に入った場所で、自分の売りたい人に、自分の売りたい値段で売ればいい・・・。
そうか、それがアンティーク屋なんだ。
それでは、そのアンティーク屋になろう。




