ママのたからもの
冬の童話祭2021投稿作品です。
クリスマスの朝
ちいちゃんは、サンタさんがくれた
くまのぬいぐるみをギュッと抱きしめてにっこにこ
「ちいちゃんね、サンタさんのくまさんね、たからものにするの!」
それを聞いたパパもママもにっこにこ
テレビ電話から見てるじぃじもばぁばもにっこにこ
でも、ネコのうららは、しらんぷり
「そうだ! あのね、ママのたからものって……なに?」
ママはにっこりほほえんで
ちいちゃんに言いました
「わたしのたからものはね……」
「まってまって! ちいちゃんが当てる!」
「そう? じゃあ、ヒント! ママのたからものは、いま、おうちの中にあります!」
「おうちのなか……? うーんと……パジャマ!」
ママは思わず苦笑い
「ええ~、どうしてそう思ったの?」
「だってね、ママのパジャマね、ひらひらがついてて、お姫さまみたいでカワイイから! ちいちゃんも大人になったら、ママと同じパジャマにする!」
「そっか、でもママのたからものはパジャマじゃありません」
「え~! じゃあじゃあ、パパもヒント出して!」
「パパがヒントを出すのかい? そうだなぁ……」
ちょっと考えたあと、パパはにっこりほほえんで
「ママのたからものは、まだ小さいんだ」
「ちいさい……? あっ! あの、ピンクの、おはなみたいなコップ!」
「あのカップ、可愛くて気に入ってはいるけど、違うんだなぁ。というよりも、ちいちゃんの好きな物を言ってるだけでしょう?」
ママはくすくす笑う
ちいちゃんはうーんうーんと考えて
ネコのうららの元へ行く
「うーたんしってる?」
ガシガシと撫でると、うららは尻尾をパタパタと数回動かし
ちいさく「ニャ」と鳴いたあと寝てしまう
それを見て諦めたのか、ちいちゃんは戻ってくる
「うーたん、しらないって!」
ちいちゃんの目に、テレビ電話の中のじぃじとばぁばがうつる
「じぃじとばぁばはしってる?」
じぃじとばぁばはにっこりほほえんで
「ええ、もちろんよ。じぃじとばぁばのたからものも、ちいちゃんのママと一緒だもの。でもね、前は違ったの」
ばぁばの言葉に、ちいちゃんは聞き返す
「まえはなんだったの?」
「前は、ちいちゃんのママが、じぃじとばぁばのたからものだったのよ」
じぃじも横でうんうんと肯いている
「ええ~、じゃあママ! ……あっ、ちがった! ママのたからものがママじゃ変だ! ふふふっ。じゃあ……パパ! うふふっ」
言い間違えが面白かったのか
ちいちゃんは、ころころ笑う
パパとママは、まさかの答えに顔を見合わせる
「うーん、ハズレって言っちゃうと、パパが可哀想だけど、もっと大事なものがあるの」
「え~、わかんないっ!」
「ママのたからものはね?」
ママは、ちいちゃんをギュッと抱きしめて
「ちいちゃんなのよ」
それを聞いた、ちいちゃんはにっこにこ
パパとママもにっこにこ
じぃじとばぁばもにっこにこ
でも、ネコのうららはしらんぷり