4話? 〜クローディアは白月姉妹のせいで目覚めかける〜
状況説明とキャラの感情のどちらを優先すればいいのか分からない・・・。
此処は、【ハルク】という国の2個目くらいに大きなタルタルという街の、女の子2人が泊まるには少々ボロく安めの宿の、2つ並んでベッドが置いてある向かいの、机に付属と思われる、木製の椅子の、上。である。
と、暇なので心の中で時間潰しを語って居るのは私。白月 黒乃、天使と人間のハーフである。
私は黒髪ショート、キリッとした目付きに長い下まつげ、更には左目の下に泣きボクロまである。かわいい。
腰からは黒い翼が生えてるので特注の着物、上下2つに別れており上は右袖が無く、左袖は振袖仕様、下はスカートの様にアレンジ。かわいい。
ふむ、何故私が容姿を自画自賛をしつつ1人で語っているか。それを説明すると。
簡単である、目の前の姉、白月 雪乃が珍しく私より起きるのが遅いからだ。
姉は吸血種と淫魔種のハーフなので元々朝は弱いが、流石に遅過ぎる。
ぼちぼち喫茶店【H.ture】に向かわなければならない、職場への遅刻はよろしくない。
さてと、起こしますか。
「お姉ちゃ〜ん。」
横向けで寝ている姉をサスサスと音を立てながら揺する。
「・・・仕事遅れるよー?」
「ウゥン・・・ン。」
「なんか調子良くなさそだね。」
「血液錠剤が無くなっちゃって・・・。」
少々心配にはなりはしたが、早急な問題じゃ無い。吸血種は生き血を飲むと、ひと月は元気に過ごせる(キチンと夜に行動して大人しく生活していればだが)。
とは言え、血液錠剤は生き血では。毎日服用しなければいけない。3日も飲まなければ吸血衝動を抑えるのが辛くなり、1週間もすれば誰彼構わずガブリといってしまうだろう。
おっと、イケないイケない、真面目になっちゃった☆。
「初めて切らしたね、じゃ、今日仕事終わりに買いに行こ?」
「そうしたいんだけど・・・。」
布団から出て身支度を始める雪乃。
「黒乃、今血液錠剤いくらするか知ってる?」
「時価ってのは知ってるけど平均して大銀貨1枚くらいで半月分ってお母さん言ってた気がする。」
※この世界の通貨 銅貨 大銅貨 銀貨 大銀貨 金貨 大金貨
10個で繰り上がり、節制すれば金貨1枚で1ヶ月暮らせる。
「今その5倍するの。」
「え?いやいや、そんな訳・・・は?ホントに言ってる?」
「残念ながら本当。」
「無理じゃん!そんなの買えるわけないじゃん!」
「だから我慢するしかないの。」
「お給料貰うまでまだ1週間以上あるけど店長に前借り出来ないか聞いてみよ?」
「そうだね、そうしてみるね。」
「んーーー、前借りは大丈夫なんだけど・・・そうだね。一応理由を聞いてもいいかな?」
「店長さんは物知りだから知ってるかと思うんですけど、私は生き血じゃなくて血液錠剤を使ってるんですが・・・。」
「なるほど、血液錠剤か、知ってるとも、雪乃ちゃんは血液錠剤派なんだね?」
「はい、その血液錠剤が切れてしまって・・・その・・・。」
「オーケー理解した、薬屋勤めの知り合いとお喋りした時に聞いた話だと今かなり高騰してるみたいだね。」
コクコクと頷く雪乃に店長は続ける。
「それで、その時そいつが言ってたんだけどね。血液錠剤を作ってるギルドが幾つか襲われたのが原因らしいんだ。」
「襲撃ですか!?」
「物騒だねぇ〜。」
「そうだね。襲撃という事は直ぐには復旧出来ない、当分は値上がりしたままだと思うよ。」
「じゃあお給料を早く頂いても・・・・・・。」
「そういう事、ここのお給料は金貨1枚と大銀貨5枚で少なくはないけれど。血液錠剤を今の値段で買うとなると少しだけ厳しいと思うよ、2人とも食べ盛り育ち盛りだしね。ちょっと待ってて。」
店長は休憩室を出ていった。
落ち込んでいる雪乃にそっと手を添え寄り添う黒乃。そして黒乃の頭に当然の考えが浮かぶ。
私の血を飲んでもらおう。・・・・・・でも・・・・・・またあんな風になっちゃったら・・・。でも・・・!
弱々しく雪乃の袖をつまむ。
「お姉ちゃん・・・!」
「ん?どうしたの?」
「いや・・・あの・・・・・・その・・・・・・・・・。」
黒乃は耳まで真っ赤にし、酷くモジモジしながら言葉を放つ。
「・・・その・・・・・・私の・・・血を・・・飲んで?」
顔を逸らしてはいるが、チラチラと涙を溜めた瞳で此方を覗き込んでくる。
ドキリ。
雪乃は釣られて頬を染め顔を逸らす。心臓の音が早くなる。
顔を合わせられない。
黒乃の血を飲むという事がどういう事かを知っている。1度だけ飲んだ事があったが、その時にちょっとした事件が起こったのだが今は置いておく。
「ダメ!黒乃を噛むなんて・・・。」
「じゃあ!ガラスに移してから!」
普段は全然妹らしさなんて無いのに、どうしてこんなに今は妹っぽいの!?
嗚呼だめ。かわいい。ガラスに移してでもきっとダメに決まってる。断らなくちゃ。
「ありがとう、でも遠慮しとく。」
「でも・・・!でも!だって!・・・なんで?」
なに?急にどうしたの?かわい過ぎる。心臓がきゅー!って締め付けられる・・・。
「お姉ちゃん・・・なんで?」
顔が茹で上がるのを感じ、顔を手で覆い隠して答える。
「その・・・絶対我慢できないと思うから・・・・・・。」
ボコン!
と気を叩く音がした。そこには、休憩しに来たであろうクローディアが、顔を真っ赤にして固まっていた。
「違うから!!!」「違うの!!!」「違うんだ!!!」
一体何が違うんだろうか。いいや、違わないだろう。。。
店長が帰ってくるまで3人とも微動だにしなかったらしい。
お疲れ様でした。ありがとうございます。
1週間以内にあがってないって?大丈夫まだ寝てないから1週間以内!