3話(後)? 〜みんな違ってみんないい、ベタだけどね?〜
ギリギリ1週間の期限守れた〜。途中どうするか迷って筆が止まってしまった。
黒乃の口調は関西弁と標準語の折衷をイメージして貰えれば幸いです!
オーナーが大きな手を黒乃と伸ばす。
吸血鬼の私なら、大柄な男とはいえステータス値を鍛えていない一般人なら私でも余裕で勝てる!
雪乃はそう考えじっと黒乃の前から動かず、手を振り払うか、掴んで関節でもキメようかと身構える。
それとは対照的に、ぼやっとしたままの黒乃。
「何しとるんじゃ、ガンツ。」
ビクッと体を強ばらせ、そっと手を引きながら声の方へ振り返る、ガンツと呼ばれたオーナー。
「お、親父・・・!?」
声の主は屋台広場のオーナー、ガンツの父親らしい。
顔つきは明らかにガンツよりも老け込んでいて、初老と呼んでも差し支えない、しかし、その体はガンツに負けず劣らずの大男だ。
「そうさ、お前の親父、ガンドラさ・・・・・・。ところでお前今何しようとしてた?」
「それはその・・・、嬢ちゃん達に来てもらおうとしてたんだよ・・・。」
「ほう?手を出してか?」
「ち、ちげえよ!」
「その割には手前の嬢ちゃんは酷く敵意を向けてるが?」
「・・・・・・・・・悪かったよ、ちっと苛立っちまって、強引になっちまった。」
白月姉妹を一瞥するガンドラ、顎に手を当てながら。
「という訳だ、嬢ちゃん達、詫びを入れさせてくれや。」
「そんな簡単に・・・」
「良いとも!」
「黒乃!?どうして!?危なかったかもしれないんだよ?」
「まあ、そうなんだけどさ、怒っていて雑だったけど、キチンと話し合いから入ろうとしてたし、乱暴な事はされなかったと思うよ?多分。」
「ハッハッハ!!翼の嬢ちゃんは気骨があるな!気に入ったぞ!」
ガンドラは面白いものを見つけた時の顔を。ガンツは関心しながらも申し訳なさそうにしている。黒乃はどこか無関心な態度、雪乃は
また、悲哀のこもった表情をしている。
「息子が怖がらせたな、詫びさせてくれや嬢ちゃん達。」
「・・・分かりました。」
「こっちだ。」
屋台広場の中央に建つ、物見櫓のような建物の真下、垂れ幕の奥の空間に案内される。
小さめのテーブルと椅子が4つと予備が数個重ねてある。
着席を促されるがまま椅子につく。
「因みに、お詫びってなんぞやしてくれるの?」
「そうだなあ、俺は普段【リスフィア】で屋台通りの肉部門のオーナーをしてるんだが、ちょっくらここのオーナーをバカ息子に譲ってかなり経つもんでな、どうしてるか様子を見に来たところなんだ。」
「つまりィー?」
「リスフィアでおやつにしようと買ってきた、団子を詫びの印にあげよう!」
「やったね!お団子!ガーランドのお団子も美味しいんだよ!!?」
「ほう!嬢ちゃん達ガーランド出身か!」
「そそ、・・・・・・!?何このお団子!魚の味がする!!!?なのに癖が無いうえに、魚の甘みも足されてて不思議!!!」
ガンドラはニヤリと笑うと眉をひそめる。
「おいガンツ、お前まさかこの翼の嬢ちゃん・・・・・・舌肥えさんか?」
「そういうこったよ親父、最近屋台の売上が伸び悩んでて見つけたもんで思わず声をかけたんだよ。」
団子をハムスターの様に頬張る黒乃に代わり、雪乃が尋ねる。
「舌肥えさん、って事はそのまま舌が肥えてる、味に敏感って事ですよね?」
「ああそうだ。」
「黒乃はデザート以外文句ばかり言ってた気がするんですけど。」
嬉嬉として条件を語ろうとしている親父より先に、ガンツが舌肥えさんの条件を騙る。
「そうだ。デザートだけ美味いといいガッツいた事が条件になってる。」
「これはな、俺がリスフィアに行く前に決めた事でな、バカ息子はまだまだなもんで、困った時はデザートだけ美味いと言う奴を探せってな!!」
ドヤ顔で話した親父に対し、面白くないという顔をする息子。
それもそのはず、自分が未熟と言われ腹が立つのにも関わらず、屋台広場の売上が伸びず、父親の言い残した事に頼る羽目になった、プライドを切り捨ててでも広場を盛り上げようとしたタイミングに親父が現れたのだ、当然である。
「あのはひふはほひひはっは!!」
「それりゃそうさ翼の嬢ちゃん!あの屋台だけは俺が伝授した味で商売するように言い聞かせてあるからな!」
「・・・・・・ゴクリ・・・ふぅ。屋台広場との兼ね合いが良かったもんねぇ〜。」
お腹をサスサスと左腕の振袖の上から撫で回す。
「で、私はアドバイスをすればいいん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クソッタレ!!!!」
ガンツは苦虫を噛み潰したように叫んだ。そして、爽やかな目付きに切り替え、頭を下げる。
「頼む。翼の嬢ちゃん。いや、黒乃さんと呼べばいいだろうか。」
「ん。わかった。今から私は上から目線で話させてもらうね。」
雪乃には黒乃が何を言おうとしているのか理解出来ていない。また、自分には分からないのだ。だが、店長の言葉を理解したい。黒乃との違いを明確に知りたい。その一心で黒乃の話す事に耳を向ける。
「じゃあガンツさん。ガンツさんはこの屋台広場をどうしたいん?」
「どうって・・・繁盛させてえさ。」
「そりゃあ繁盛させたいよね、じゃあ、なんで繁盛させたいん?」
「親父を越えたいからさ。」
自分の父親を前に息子が堂々とこのセリフを吐く。その気持ちを黒乃は受け取る。
「なら、沢山稼がんとね。で、どうやったら稼げるん?」
「どうやってって、そんなの客を・・・・・・。」
ガンツは肩を震わせ、顔を仰向け心の底から呆れた顔をしながら、声を漏らし笑う。
「そゆことっ!屋台広場のみんながみんな自分の事しか考えてないのは、別に駄目な事じゃない。でも、それのせいで、呆れる程基本的なことを忘れてちゃ本末転倒ちゃう?」
バシッ!!頬を叩き気合を入れたガンツ。「今日の商売は終わりにさせてくる」。そう言い屋台ひとつひとつに声を掛けに行く。
「翼の嬢ちゃん、俺が言いたかったことをキチンと言ってくれてありがとうよ。しかしお前さん少々変わった考え方を持ってるな?今の話でその片鱗があったが誰かに教わったのか?」
「んー?特には?お父さんとお母さんからは、物の考え方については教わってないかな?」
「そうかい、野暮な事を聞いたな。だがその考え方は面白いな。」
櫓の下に来てから一言も話していなかった雪乃が口を開く。
「どうして・・・。」
「ん?なんだい?連れの嬢ちゃん。」
「どうして、面白いんですか?」
「変なことを聞くなぁ。そりゃあおめえ他と違う考え方してる奴がいたら面白いだろ!。みんな違ってみんないい、学校の先生言ってなかったか?学校言ってないなら父ちゃん母ちゃんが言ってたろ?」
みんな違ってみんないい。その言葉には聞き覚えがある。
お父さんが居なくなる前に1度だけ聞いた言葉。まだ小さな頃、黒乃がお父さんにごねた事があった、「どうして私お姉ちゃんと違うの?翼があるの?お姉ちゃんと一緒がいい」そんなどうしようもないワガママに対しての言葉として使った言葉。
みんな違ってみんないい。
黒乃との違いをその言葉の力を借りて1度飲み込んでみよう。そうすれば、私のなにかが変わるかもしれない、変わって欲しい。
「どうした嬢ちゃん。」
「あっ!いえ、そういえば父がその言葉を言っていたのを思い出しました。」
ふわりと笑顔を零した黒乃。この街に来て初めて、いい笑顔で笑えた気がした。
ガンツが屋台への声掛けから戻って来た。
「黒乃さん、今日はありがとうございました。この屋台広場を良くして行こうと思う、また日を置いて食べに来てくれ!」
「ん。わかった。んなまたね?」
「さようなら、また来ます。」
別れの挨拶を済ませ、背を見送るガンツとガンドラ。
「おいガンツ。」
「なんだよ親父。」
「なんで翼の嬢ちゃんはあんな変な口調なんだ?」
「・・・知るかよ・・・、俺に聞くな。」
今日、本当は黒乃に直接話を聞こうと思ってたけど・・・、思わぬ形だったにせよ。間違いなく、悩みに対するヒントは貰えた気がする。どこか少しだけスッキリしたからこれでいいかな。
そう思う雪乃だった。
お疲れ様でした。これからもよろしくお願いします。