一難去ってまた一難?
その帰り馬車の中ではゼルがしつこいほどねだってきた
「お前のいた世界の料理を作ってくれ!」
鈴華は外の景色を眺めながら
「嫌です」
「何でもよい!菓子と言うものだろうが、ほんの少し手間を加えた料理でもよい。何か作ってくれ」
彼女は呆れたようにため息をつき何十回も繰り返されるこのやり取りに苛立った鈴華は彼の方に向き
「何故、私が陛下のために何か作らなければいけないのですか?そもそも役割がある方々の仕事を取るような事をあなた様の我が儘でコロコロ変えてどうするのですか?」
「……………それは、俺が食べ民に広めるためにだな───「あなた様が食べずとも町の人々が食べれば広まると思いますが?」」
「…………」
「…………」
「…………」
はぁー
「分かりました」
ピクッと身体を震わすゼルを見、小動物を苛めている様な罪悪感を感じ
「戻り次第エリザにレシピを料理長に届けさせます」
彼は子どものように目を輝かせ
「本当か!?」
鈴華は、本日何度目か分からないため息を内心ついてから
「はい、その代わり公務をしっかりとなさってください。そうしなければもう二度とレシピを教えることも致しません」
「わ、分かった」
ようやく静かになった馬車の中で鈴華は再びため息をついた
内宮と後宮の分かれ道に差し掛かった時内宮から独りの男性が慌てたようにゼルに近より何かを彼に告げると彼は鈴華の方に視線を向け
「鈴華すまぬが文官の着替え部屋で待っていてくれ。あとで迎えを送らす」
「は?はぁ」
後宮の入り口まで迎えに来てくれたエリザに連れられ与えられた部屋に戻るなり
「陛下からのご連絡は届いています。さぁ、文官の服装に着替えましょう」
…………?ついさっきのことだよね?
「……え、ええ」
エリザにより手っ取り早く体を清められマッサージまでされ、精神的に疲れを感じ始めたが容赦なく着替えさせられた