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サイコパスの正義(仮)  作者: たま ささみ
5/12

第4章  M-25ファイル  カリスマ

 E-17ファイルが片付いたのち、サイコロ課の面々は少々だらけている。

 面白そうな、もとい、サイコパスが起こした事件性のあるデータが回ってこなかったからである。

 今日もまた、だらだらと出勤する4人。

「こんなとき、弥皇さんがうらやましくなる」

「あら、彼だってオチビの成長に伴ってやること増えて来るわよ。子供の成長は嬉しいけど、こんなに大変だとは思っても見なかったわ」

「麻田。お前は何もしてないだろうが」

「そうそう。やってるのは弥皇さん。だからオチビちゃんはパパにしか懐かないんです」

 麻田が真顔に戻る。いや、これは鬼の顔と言うべきか。

「悪かったわね。あたしだって非番の日とか、合間縫ってちゃんと接してるわよ」

「どうだかなあ」


 課長がゆっくりとした足取りで出勤してきた。

「まあまあ、そう麻田を苛めるな。俺達もたまに行くからだが、双子の世話は大変だぞ」


 ハイハイをするようになれば、危ないものにぶつからないよう、大人でいう膝から下には要注意。

 弥皇たちの住むマンションには、観葉植物が多数置かれていたが、オチビツーの理が、観葉植物の下に敷き詰められていた石を食べ、お口の中を血だらけにしていた。驚いた麻田は即座に救急車を呼ぼうとした。弥皇がその石を食べ、毒性のないことを確認して、漸く麻田は119番を呼ぶのを止め、自力で病院へ行った経緯がある。


 この頃から徐々に離乳食を始める赤ん坊もいるだろう。

 麻田は、ついつい、小さな赤ん坊に、青菜を擂ったものを与えたことがある。聖は欲しがって小さな入れ物ごと食らった挙句に、全身蕁麻疹を起こして救急車騒ぎとなった。

 その後、麻田は離乳食担当から外された。


 つかまり立ちをするようになれば、大人の腰から下は目を皿にしてみなければならない。子供の動きにも要注意だ。

 オチビワンの聖は、つかまり立ちをするようになってから、テーブルの角に顎をぶつけ、流血した。顎に傷が残る、と麻田は項垂れた。本気で双子のモデルデビューを考えていたのであろう。

 立って歩くようになれば、言葉を発するようになれば、と育児には終わりがない。

 

 麻田自身、2歳のころ、母親が家にいないからと母を訪ねて三千里。住宅街をほっつき歩き、迷子で保護されたことがあるらしい。


 保育園、小学校、中学校、と、一気に二人で入学、授業参観、PTAの集まり、卒業となれば、1人では到底周りきれない。フォローする人がいなければ、双子に不公平感を与えてしまう。

 授業参観は土曜日が多いと聞いたが、入学式や卒業式は平日なのだそうだ。万が一麻田が非番でない場合、どうしようと悩んでいたら、課長の奥様が助け舟を出してくださった。弥皇は完全に休みのはず、と思い込んでいる麻田。


 弥皇のイクメンは、子供が3歳までなのだが。

 大丈夫か、麻田。


 珈琲を飲みながら新聞に目を通す課長。老眼鏡必須。誰もそのことには触れない。

「何やら、きな臭い記事が載ってるな」

「なんです?」

「都内で爆弾テロ、だそうだ」

「僕も見ました。ゴミ箱に時計タイプの簡易な爆弾仕掛けていたようですね」

「神崎は、こういう方面のプロだな。どう思う?」

 今までだらけていた神崎も、途端に昔取った杵柄と、真顔に戻った。

「一般的には、今後もっと規模が大きい爆弾による無差別テロ、でしょうか。最初の爆弾は、どのくらいの威力になるか検証している場合が多いんです」

「もしかしたら、うちの課にデータが来るかもしれないな」


 課長は、よく心得ている。


 爆弾テロでマスコミが毎日毎日大騒ぎしている中、仮データがサイコロ課にやってきた。

 容疑者は、北関東に拠点をもつ古神道系新興宗教団体の教祖ほか、団体の幹部ら数名。


 この新興宗教『ラソ』は、イケメンの教祖が宙に浮く、或いは宙を飛ぶといった怪しげな触れ込みで、じわじわと信者を増やし、その勢力を伸ばしていた。


 その要素は、常世とこよ現世うつしよからなる、仏教でいうところの三世(前世、現世、来世)と似た世界観を持つ。常世は黄泉の国であり、神々の棲家でもあり、世界を二律する片方である。常世と対峙する現世は、人々が暮らす今を指す。その間には狭間がある。

 魂、霊や八百万の神々などを崇拝することで自然の精霊たちを呼び寄せ、命としてのマナを享受し、信仰を続けることで神域に達し、狭間の世界を潜り抜けて黄泉の国に飛び、神々と同様の力を持つという。

 教団名、『ラソ lazo』はフランス語で絆の意味なのだそうだ。


 古神道で教団名がフランス語なのも、何かしっくりこない。


 無論、すべてが有り得ない話であり、どうしてこんな宗教に身を投じるのか不思議極まりないのだが、少なくとも幹部たちは、理系の高学歴者ばかりで構成されていた。

 信者の多くは、DV、モラハラ被害者、また、精神疾患、発達障害、パーソナリティ障害を持つ人々など、現世に居場所のない人々が多く、こうした人々の受け皿にもなったのが、この新興宗教だった。

 こうした信者たちは、格差社会で、所謂ところの普通に生きてゆくことに疑問を感じたり、社会に受け入れられないと感じたりした人が多数を占めているという話もある。


 そうして徐々に勢力を関東全域に広めると、瞬く間に信者の数は激増。宙を飛ぶ新興宗教が世を席巻するまでに至った。

 エセ新興宗教と違い、高額な布施を取らず一人一人が「役割」を与えられ、自給自足の精神で生きていた。勿論、まがい物の壺を家族や親類、友人に売りつけることもない。


 高学歴なのに働けない、そんな子供たちの繊細な心を踏みつける親たちは、こぞってこの団体に子供を押し付けた。

 中には、心酔して自らの金品を寄付するものもいた。

 微妙な境目を縫うように家から逃げ出してきた人々は、財産を持たない。通常の新興宗教ではノルマもあると聞く。我が教祖様は、何も我々に押し付けず、ただ黙って悩みを聞いて下さる。それが、信者激増の裏話だったわけだ。


 でも、いくら自給自足とはいえ、信者が劇的に増加すれば衣類も食事もすぐに底をつく。

 そこには、何がしかの方法で手に入れたキャッシュなり、モノがあるはずだ。

 暴力団との付き合いも取り沙汰されたが、最終的に、暴力団との繋がりはないことが証明されたとも聞く。

 まさか。殆どの麻薬売買に暴力団が絡んでいるというのに。

 娑婆を荒らしたら、報復の嵐が待ち受けているはずだ。

 こうなると尚更、金のルートが解明できない。

  

 中には脱会する者もいるだろう。脱会した者を追い、そこから内部に入り込もうというのが、警察の考えらしい。

 漏れ聞こえてきた話では、教団内部では、危険ドラッグや覚醒剤、大麻を作る仕事もあるという。大麻は外から見えないよう、室内で育てられているらしいのだが、噂にしかすぎない以上、令状を持って家宅捜索も難しい状況のようだった。

 

 厚生労働省の麻薬取締官、所謂麻取はおとり捜査も可能であるから、彼らが教団内に入り込み捜査を続ければ、すぐに摘発できそうなものだが。

 

 ラソの教祖は、見ただけで入団希望者が警察や麻取の人間かどうかわかるのだという。

 麻取と言えば、警察官同様の体術を訓練したり、銃器などの携行も認められた人々であるからして、見た目がヤクザのように鋭い目つきで、とてもではないが、社会に行き場の無い人間には見えないのだろう。

 此処まで来ると、何故に警察組織と合体しないのかという疑問を持つ方も現れよう。

 たぶん、それは、無理だ。

 何より、厚生労働省の麻取と警察庁の薬物銃器対策課は、猛烈に仲が悪い。



 1カ月後、また爆弾騒ぎが起きた。

 今度は、多くの人が行き来する駅構内。事件後、急ぎ防犯カメラを解析する科捜研だったが、ラソの犯行を示す羅針盤は針が大きく振れて、ラソには辿り着けなかった。

 幸い、けが人はでなかったが、警視庁も麻取の担当官も、もう痺れを切らしていた。

 まず、器物損壊の令状を取って、警察が教団内に入ろうとした。大人しく入らせてくれると思ったのか、それは警察側の人間にはわからない心理だったはずだ。

 

 ところが、バリケードを築いて、中に入れないようにした人々がいた。

 それは、行き場を失ってラソに来た者たちだった。


 世間の厳しい眼に晒されながら、生きることを苦痛にしか感じない若者。

 常に夫からモラハラやDVを受け、体中に痕跡が残ってしまった女性。

 ここでは、いつの日にか自分たちがマナを享受し、神の域に到達できる。

 誰にも邪魔はさせない。

 そんな思いがあったのだろうか。


 機動隊までが出動し、教団の人々が散り散りになる。警察と麻取の連中が、それ見たことかとほくそ笑みながら、教団の若者たちや女性を蹴りつけるのだった。


 ある者は公務執行妨害で、ある者は器物損壊容疑で、幹部たちや教祖までもが一網打尽になり、捕まった。


 テレビ局では、どこもがその模様をリアルタイムで中継し、日本の国民は否応なしに、その中継画面を見る羽目になる。

 そして、殆どの局でコメンテーターが『信者は教団に洗脳された』『入団希望者に対するマインドコントロール』と同じフレーズを繰り返す。

  

 サイコロ課でも、漏れなくテレビ中継を見ていたのだが、洗脳、あるいはマインドコントロールといった内面的アプローチには懐疑的だ。

「あ、捕まった。あら、教祖ってイイ男じゃない。イケメン」

「何がイケメンですか。爆弾テロですよ」

「洗脳ねえ。他の宗教と違って、此処は復活するぜ。教えがあるもん」

「マインドコントロールなら、いつか解けますからね」

 神崎だけがわからない。

「どうして洗脳じゃないってわかるんですか」

 皆が口を揃える。

「目が生きてるから」

「目?反抗的な目、ってことですか」

「ちょっと違うな。俺達の居場所を取らないでくれ、って目だった」

「あたしも、それ感じた」

「幹部連中はまだしも、この人たちは大麻の栽培や覚醒剤を作っていることなんて、分らなかったでしょうからね」

「罪は罪だけど、こうして世に放り出されたら大変よ。息する場にすら困る人が、最後の砦として縋っていたんじゃないかしら」

「捕まらなかったやつらが、直ぐに幹部として教えを紡いでいくんだろうな」



 一瞬、無表情で神崎が呟いた。

「一度壊れても、わからないように直せばいいんだ」

「何か言いました?神崎さん」

「いや、何も。和田くん、今回の件は、たんまりとデータがきそうだ」



 和田は神崎が何を言ったのか気になった。だが、神崎の表情はいつもどおり。無表情なのはほんのひとときだけだったのだろう。皆の会話に交じるように、神崎は笑顔すら浮かべていた。

「ああ、サイコパスたる教祖が教団にいる人たちを洗脳したと思っているでしょうからね」

「データって、入れてお仕舞よねえ」

「まったくだ。つまらん」

「あ、麻田さん、画面のここ見てください、ほら!」

「どうしたの、和田っち」

「何言ってるんですか、緑川じゃあるまいし。ほら、ここ」

「あら、確か去年会った、双子の兄弟じゃない」

「こっちは牧田の子供、兄妹ですよ」

「2組とも、教団に入ってたのね」

「生きづらかったのかもしれませんね。牧田は殺人教唆やら何やらでも逮捕されたでしょ。もう、人前に出られませんよね、子供たちも」

「ねえ、スーちゃん。双子はどうしたのかしら。解離性同一性障害のせいで、会社解雇されたのかな」

「怒ると凄そうだったもんな。可哀想に。あの双子が悪いわけでもなかろうに」

「今回、逮捕されたのかしら」

「どうでしょう。逮捕までは。まだこの画面に映っているということは、この4人は手荒な真似、してないんじゃないですか」


 ピーチクパーチクと、五月蝿い雀ども。

 どこかに行っていた課長が戻ってきて、椅子に腰かける。

 眼を押さえて、どこか疲れているようにも見えた。

 一番先に気付いた神崎が柔らかな口調で課長に声を掛けた。

「どうしました、課長」

「いや、何でもない。それよりどうした。騒がしかったな」

「捕まったんです、ラソの教祖以下幹部の殆どが」

「そうか。誰かが言ったとは思うが、最後の砦を壊された人たちの心理が、な。可哀想だよ」

「教祖を信じていたのに、ということですか?」

「砦さえも壊された絶望感だ」


 最後の砦として築いた空間を、一瞬にして奪われた心に生じる失意。行き場が無くなりどうしてよいかわからないという絶望感。

 警察に捕まらなかった信者の中には、自死を選ぶ可能性も高い。残された本当の信者たちを助けるべく、新たな教祖となる人物が必要である。

 それが課長の意見だった。

 願わくば、彼らの砦を今一度築きあげて、合法的な活動と揺るぎのない精神をモチベーションとして前に踏み出すとこができるようにと望む、サイコロ人であった。


 数週間、マスコミは教祖逮捕や教団分裂に関するニュースを流し続けた。

 教祖は、最初、これは天から授かった教えであると豪語していたが、警察で調べが進む中、教団幹部たちから変な供述を得た。

 天から降りてきたとされる教えそのものが、インチキだったというのだ。

 教祖は、信者たちの前で飛んで見せたことがない。信者たちの前に示されたのは、ムービーや写真だけ。そんな状態で、よく信者たちの心を掴めたものだと呆れる方も多いであろう。


 此処に、ちょっとした絡繰りがあった。

 教祖は覚醒剤を使用していたという。3日3晩程度なら、寝ないで信者たちの話を聞き、その心を解し、教えを教授することもできる。ムービーやパソコンに残る画像は、いくらでも修正できるのだから、絶対に本物とは言い切れなかった。ここで信じ込ませ信者を増やしたのがカリスマ話術だったのである。

 何ともエセ宗教だ。

 そして、その教えそのものは、あくまで、インターネットの神サイトで指南されただけだったという。

 信者に何も押し付けることなく聞くだけだったのは、ICレコーダを潜ませて、神サイトに教えを乞うていたというのだ。

 いわば、カリスマ教祖もイケメンなだけの、凡人、というわけだ。

 これは、教団最高幹部からの情報だった。


 その情報を基に、教祖を何遍も取り調べたところ、漸く天からのお告げでないことは認めた。幹部たちのいう、神サイトの存在も認めた。

 神サイトのお告げ、いや、指南により、これまで全てのことを行っていたという供述に変えたのである。

 

 最高幹部の中に混じって生活していたのは、教団設立当初から信者に紛れて潜んでいた警視庁の女性警察官と、麻取の女性関係者。男性では体格や目つきなどから入団を断られていたので、女性をおとり捜査に投入した。

 勿論、おとり信者として教団に入り込んだ麻取関係者は、覚醒剤の生成や大麻栽培などの証拠を握るため、教祖の部屋に盗聴器を取り付け、通信傍受できるよう画策していたという。

 これこそが、潜入捜査というやつだ。

 そうして長きにわたり内偵捜査を続け、器物損壊容疑を機に、教団のトップを拿捕することに成功したというわけだ。


 教団に警察の手が入り、捜索を行った結果、教団内に複数置かれていた教祖を模したぬいぐるみの中に、覚醒剤が仕込まれていた。

 白昼堂々と教団へ行けば、寄附のお礼としてぬいぐるみを渡していた。その中に、覚醒剤がたんまりとあるのだから、密売人には美味しい仕事であったと思われる。ぬいぐるみそのものは信者たちが作っていたが、最後の仕上げは最高幹部たちが行い、薬物の袋を仕込む。

 

 また、室内での大麻栽培は、主としてDVから逃げてきた女性たちに世話をさせていた。若い男性の中には、知識がある者がいないとは限らない。今や何でも情報を目にすることが出来る時代だ。


 なお、教祖が嘘をついていると警察では見ているが、教祖は一貫して、指南者の存在を訴えており、男性の警察関係者や麻取関係者についても、入団希望者全員の写真を撮り指南者に送って指示を仰いでいたという。

 ただ、指南者は何を要求するわけでもなく、指南のみに終わっていたというのが教祖の言い分だった。


 その神サイトは現在のところ、見つかっていない。今回も、どうやら海外サーバー経由なのだろう。もしこれが本当なら、結構ITに詳しい指南者だと思われる。


 教祖と幹部連中は、爆破事件の容疑と、覚醒剤の所持と使用の疑いで逮捕され、身柄を検察庁に送られた。

 

 リアルタイムでのデータ入力。

 サイコロ人は雀と化す。

「この教祖、ハニートラップに引っ掛かったみたいな言い方じゃない」

「ITに詳しいハニートラップ?まさかねえ」

「いつだか、闇サイトの計画実行者がいたな。それと同じってか」

「まさか。こっちは大掛りですよ。新興宗教を指示するなんて、できっこない」

「教祖のカリスマ性があってこその新興宗教ですからね。人形だった、じゃお笑いだ」

「万が一、カリスマが別にいるとして、俺だったら他人に実行させないぜ。そうする意味がねえだろ」

「同感。自分が教祖様になった方が実入りも大きいってものよね」


 課長が漸く口を開いた。

「いずれ、この教祖様とやらは、二度と、カリスマとしての輝きを失ったわけだ」


 雀たちは、またもや一斉に鳴く。

「腑に落ちない事件だわ」

「指南者が出てきて信者を統率していけば、丸く収まるもんですかね」

「お前、指南者なんぞいるわけねえよ。教祖様、カリスマ性を失うの巻、ってやつさ」

「今迄ほど強烈ではないにせよ、この宗教は細々と続くでしょうよ。信者がいる限り」

「内偵って、冷や冷やものなんでしょうね」

「あたしならできるわよ。芝居は任せて」

「いや、お前さんは、いの一番にばれる」

「どうしてよ、スーちゃん」

 和田と神崎がクスッと笑いを堪えて手を口に当てる。

「麻田さんほど目つきの鋭い警察官、いないですからね。麻取やマル暴っていっても信じられる」

「目つきでパスでしょうね」

 麻田は鬼の顔に変わる。赤鬼か青鬼か、表情からは分からない。

「あんたたち、あとで道場行こうか」

「勘弁してください。秒殺されたくない」

「僕も」

「そう来たか。和田、神崎。あんたら引き摺ってでも道場行ってやる」


 今迄ふんぞり返って椅子に座っていた和田が、身を乗り出し、机に肘をつき頬杖を突く。

「ところで、この覚醒剤は何処のモノになるんでしょうね」

「そりゃ、警察だろ」

「麻取も騒ぐでしょう、自分たちのモノだって」

「うーん。半々ってことで」

「神崎。それはないと思うぞ。逮捕した方が持って行くだろう」

「じゃ、警察さまの勝ちですかね」



 その晩、パソコンに向かい、同じメールソフトを複数の人間が開いていた。アクセスするアカウントも同じ。一体、誰なのだろう。そして、何をしようというのか。


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