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サイコパスの正義(仮)  作者: たま ささみ
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序章

「ごめん」


 カーテンを閉め、一筋の光をも差し込まない暗くなった部屋で、独り呟く。一枚の小さな写真を膝に抱き、壁に凭れ掛かる。

 そこに写っていたのは、この世から、その存在を抹殺された唯一無二の友。

 あんなに笑顔を振りまいていたのに、今、彼は家族の下に遺影もなく、遠い地の海の底にその身体を横たえている。

 

 彼は正義感に溢れ、洞察力、行動力、忍耐力、どれもが周囲の中で際立っていた。

 勇猛果敢で、誰よりも使命感に溢れていた。


 その輝きゆえに、彼は死を選ばなくてはならなかった。


 こんな形で別れを告げるなど、大学を卒業して働き出し彼と出会ってから今迄、終ぞ思っても見なかった。

 今の時代に、こんな、こんな不条理がまかりとおっていいのか。


 あいつらが憎い。組織が憎い。

 いつか必ず、復讐してやりたい。

 そして、そのときこそ、彼の墓前に報告するのだ。

「仇をうった」と。


◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◇


 彼が自分の前から姿を消して、早いもので3年が過ぎ去ろうとしていた。

 もう一生、復讐など叶わないのだろうかと、一人、部屋の隅で塞ぎこむ日が増えた。

 長く伸ばした左手小指の爪は、復讐までの道のりの長さ。


 いつのまにか、その純粋な心には、悪魔が巣食っていた。

 悪魔に魅入られた、正義。

 こめかみが痺れ、手指が震える程、胸を支配しつつある、途轍もない思い。


 完全犯罪の成立。

 犯罪者なら、一度は考え胸躍らせるであろう、このワンフレーズ。

 復讐と、完全犯罪を同時にできないだろうか。

 自分になら、できるかもしれない。いや、やってみせる。自分になら、できる。


 我の存在理由は、其処にある。

 我がミッションは、其処にある。

 我を支えし悪の心は、其処にある。

 


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