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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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学校訪問。

「あ!」


 台所にいる花奈おばさんの唐突な声にリビングにいた私とお母さんは思わずビクリと肩を震わせた。発せられた言葉は一文字だけど、こういう時ちょっとドキッとするよね。


「直生にお弁当持たせるの忘れてたわ……」

「莉音いってらっしゃい」


 続いた花奈おばさんの言葉に間髪入れずに私に指示するお母さん。

 行ってあげたい気もするけど、正直言って面倒くさいです。今ゲームいいところまで行ったのに。もうちょいでラストステージクリアできるのに。何か上手く断れる言い訳はないか考えてみる。


「りおーん?」

「はい、行って参ります」


 お母さんの笑顔が怖かったのですぐにゲームの電源を切って花奈おばさんのもとへ駆け寄った。


「ごめんねぇ。はいコレお弁当。直生の学校の行き方わかる?」

「大丈夫だよ」


 直生の学校へ行ったことはないが、私の学校のご近所さんってことは知ってるし、スマホで確認すればいいしどうにかなるだろう。

 帰りに本屋にでも寄って行こうかと、休みの日によく使うお気に入りのポシェットに財布を入れ、左手には直生のお弁当を持って準備は万端。


「それじゃ、行ってきまーす」

「行ってらっしゃ〜い」


 直生の学校へ、いざ出陣。


ーーー



 無事、学校へ着いたのだが。


「いないじゃん……」


 サッカー部ならグラウンドにいるもんだと思っていたのだが、いない。代わりに野球部がいた。となると、校舎内にいる可能性が高いのだが、学校入っちゃダメだよね?部外者だし、不審者になってしまう。

困って途方にくれていた時だった。


「あれ?あなた、うちの学校の生徒?」


 まだ若い先生らしき女の人に後ろから訝しむように声をかけられ、本日二度目のビクリを体験した。全然嬉しくない。


「あ、いえ……。私、サッカー部の上原直生の従妹で……。彼がお弁当忘れたみたいなので届けに来ました」


 少し緊張してるせいか、しどろもどろになりながら説明すると納得したような顔になったのでホッと安堵する。


「じゃ、サッカー部がいるところまで案内するわよ」

「え」


 思わぬ流れに目を瞬かせてしまった。このままこの人にお弁当届けに行ってもらう感じになるのかなって思ってたから。だって私、学校関係者じゃないし。


「……学校の敷地内に入ってもいいんですか?」

「良いわよ。他校の中見ることとか、なかなかないでしょ?」


 悪戯っぽく微笑まれ、一瞬驚いてしまったが、安心させてくれている雰囲気に絆されすぐに笑い返した。

 好きだな、こういう先生。私の学校じゃきっとこうはいかないだろう。


 彼女の名前は谷口(たにぐち)明衣子(めいこ)先生で、数学を担当しているらしい。

 先生の後ろをついて行き、学校案内をされる。二階建てだけど、横に広い学校のようだった。あまり階段で疲れることもないだろうから羨ましい。休日だが、部活があるせいか学校にいる生徒も多く、外部の人間である私を見て挨拶してくれたりもした。この学校は良い人達ばかりだな。あ、直生は違った。

 あらかた学校を見終わってサッカー部のいる体育館に連れて行って貰った。今日は体育館での練習だったらしい。

 体育館の入り口まで来ると私は立ち止まった。


「あの、さすがにこれ以上は行けませんので……」


 練習中の所を他校の部外者がホイホイ入って行くのはあまりよろしくない。私の意図を汲んだのか、谷口先生は頷いてくれた。


「わかったわ。顧問の先生呼んでくるからちょっと待ってて」


 よろしくないと言いながらも、片方だけ開いた扉からチラリと中を覗いてみると、たくさんの男子が各々筋トレをしていた。今日はサッカーの練習はやっていないのか。少し残念だな。見るのは好きなのだ。やらないけど。

 直生のことを探してみるも、なかなか見つからない。


「おまたせ〜!顧問の先生連れて来たわよ」


 帰ってきた谷口先生にお礼を言い、顧問の先生に挨拶をしてお弁当を託す。顧問の先生はサッカー部だけあって、かなりガタイがいい。

 それにしても、と谷口先生はこちらを見て微笑んだ。


「上原にこんな可愛い彼女がいたなんてねぇ」

「ほんとですよねぇ」


 顧問の先生が同調し、のほほんと会話し始めた二人だが、聞き捨てならない発言に口を挟んだ。


「え?なんで彼女って知ってるんですか⁉︎」


 私、従妹としか言ってないんだけど……?


「女の勘よ!」


 自信満々の彼女に苦く笑う。女の勘は結構当たるものだ。恋愛については特に。


 お邪魔だろうし、そろそろ帰ろうかと思い、お礼を言い体育館に背を向けた。まぁ、ここで会えなくても家で会えるしなぁ、なんて期待はまったくしていなかったのだ。

 だから、不覚にも嬉しいという感情が隠せている自信なんてなかった。


「おい、ちょっとくらい俺のこと探せよ」


 馴染んだ声と共に後ろから頭を軽く叩かれた。

 後ろを振り向くと不機嫌そうな顔が。


「探したよ。どこから湧いてきたのさ」

「トイレ行ってたんだよ」

「見つかるわけないじゃん」


 いつも通りの会話のはずなのに、服装とか環境が違うせいか不本意なのだが、ドキリと胸が高鳴る。

 それがちょっと悔しくて腕を抓ると『痛い、痛い』と言いながらも、今度はどこか機嫌が良さそうに見えた。抓られて喜ぶだなんて相変わらず変態である。


「上原。彼女さん弁当届けに来てくれたんだぞ」

「ついでに私と学校内をデートしたのよ」


 顧問の先生と谷口先生がニヤニヤしながらからかうように言ってきたため、顔に熱が集中してきた。

 直生はそれを見て笑みを浮かべる。いつもの意地の悪い笑みだ。


「ふーん。弁当ごときでお前がわざわざ来てくれるとは思わなかった。また忘れて届けて貰うのも悪くないな」

「悪いわ、バカ。次はない」


 今度は彼の頰を、調子に乗るなと言いながら強めに抓る。


「すんません。もう二度と忘れません」

「わかればよろしい」


 反省しているようなので、再度強く抓ってから離してあげた。


「お前が尻に敷かれてるとはなぁ、上原」

「ほっといてください」


 おもしろそうに直生を見やる顧問の先生に、抓られた頰を撫でながらも、敬語で話す直生が新鮮で、もっと見ていたかったが、さすがにそろそろ帰らねば。


「じゃあ私は帰るよ。練習頑張れよー」

「ああ、ありがとな莉音。帰りあまり遅くならないようにするって母さんに言っといて」

「了解」


 バイバイなんて言わず、そのまま別れた私達を見て先生達が驚いた表情をする。私達は人前で別れのハグやキスをするタイプのカップルじゃないんです。別れがそこまで名残惜しくないから。すぐにまた会えるしね。

 谷口先生と共に玄関に向かい再びお礼を言い、学校を出た。

 またおいでと言われたけど来ることはそうそうないだろうな。あるとしたら文化祭とか?

 そんな風に次に来るかもしれない日を予想しながら、第二の目的地である本屋への歩みを進めた。

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