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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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依存ではないと思うけど。

 みんなが就寝し、夜も更けた頃。


「あ、あんたズルイ」

「ズルくねーよ」


 ポチポチポチポチ……。

 私達はとにかくボタンを押しまくっていた。

 ただ今、夜の12時。今の時間帯が一番コンディションがいいのだ。

 何してるかって?

 もちろんゲームさ。


「あー、負けた……」

「当たり前だ。俺のリアが負けるわけない」


 ごめんよ、アイちゃん。

 こんなヤローに負けてしまって……。

 さぞかし、無念だったろうよ。


「そろそろ寝る?」

「ああ、そうだな。さすがに疲れてきた……」


 直生が、くあーっとあくびをした。

 相当眠いらしい。


「そういや、あんた明日部活だよね。こんな時間まで起きてて大丈夫なの?」

「俺はお前と違って短時間睡眠でも大丈夫なの」


 ベッドの上に布団を敷きながら答える直生。

 たまに出るおこちゃま扱い発言にムッとする。

 直生は4月6日生まれで、8月23日生まれの私よりも4ヶ月先に生まれたので一応『従兄妹』という漢字になるが、認めたくはない。


「ほら、入れ」


 布団の中に入った直生は壁側に寄り、隣の空いたスペースに入るよう促してきた。

 さっきのこともあってムカついていたが、寒いので黙ってもぞもぞと入っていった。

 基本的に下らない矜持(きょうじ)は持ち合わせていない。

 私の方が心は大人だから、ね?


「寒い……」

「お前冷え性だもんな」


 私を少しでも暖かくなるよう、直生が私を抱きしめ、足を絡めてきた。


 普通なら、未成年の男女が一つ屋根の下で、しかも同じベッドで寝るなんてありえないと思うかもしれない。

 だが、私達の場合は特別で、私達が従兄妹同士なのと、おばあちゃん達があんな感じなので許してもらっちゃっている。他にも理由はあるけど。


 間違いは起こる気はしない。

 直生だって責任も取れないままの状態で私に手を出すことはしない。

 ずっと一緒だったから周りから信頼されてるし、勝ち取れた権利を無駄になんかしたくないし。


「あったかくなってきた」

「…なら、よかった」


 私の独白のような呟きにいつも無視せずに反応して気遣ってくれるあたり、こいつはやはり悔しいけど私より大人なのだ。

 今も、すごく眠いくせに。


「おやすみ、直生」

「……おやすみ、りお、ん……」


 ……ああ、眠ったな。

 完全に落ちたのを感じ、特に何をするわけでもないけど、目を開けてみた。


 当たり前だけど、部屋は暗い。

 お化けとか、ホラーが苦手な私は小さい頃、夜は一人でトイレに行けなかったな。

 無理矢理お兄ちゃんを引き連れて、「そこにいてよ!いなかったらぶっ殺すから!」なんて言ってたっけ。

 あと、一人で寝るのも怖かったな。

 いつもお母さんと手を繋いで寝ていた。

 私が先に布団に入ってても、お母さんがお風呂から上がって布団に入ってくるまで、ずっと起きて待っていたものだ。


 今も相変わらずホラーは苦手だけど、もう一人でトイレに行けるし、一人で眠れる。

 だけど、やはりこいつと一緒に寝てしまうのだ。

 寒いのなんてただの言い訳で、今は怖いんじゃなくて、寂しいから一緒に寝ている。


 家族と離れたら寂しい。


 だけど、その寂しさとはまた違う寂しさ。

 その寂しさを私に植え付けたのは紛れもなくこいつだ。


「……依存、ではないと思うんだけどな」


 こいつに構う前にやることなんていっぱいあるし。ゲームとか、学校とか、将来のことだって……。


 ……将来、か。


 私はぎゅっと直生の体にしがみつき、目を閉じた。

 こいつの未来に、私がいるということを願って。

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