表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
45/54

またあんたは先に行ってしまう。

 帰り道。

 夕日が歩く私達を優しく照らしていた。


 なんで3年も付き合っていたくせに一度もデートしたことがなかったんだろうって後悔するくらい、今日はすごく楽しかった。


 しかし、桜パフェ食べて、ゲーセン行って大満足の私だけど、まだ一つだけ目的が果たせていない。

 カバンの中に入っている、とあるものを真横にいるターゲットに渡さなければならないのだ。


 今日はこいつの誕生日。

『とあるもの』とは誕生日プレゼント。


 持って来たはいいのだが、完全に渡すタイミングを逃した。

 さて、いつ渡す。

 帰ってから?寝る前?それか、寝た後こっそり枕元に……。



「……どうかしたか?」


 いつの間にか直生が不思議そうにこちらを覗き込んでいた。

 びっくりした……。心臓止まったらどうしてくれんの。


 直生は何も話さない私を見て怪訝そうに眉を寄せている。

 私は、隠しても拗れるだけだと判断し、ガサゴソカバンの中を漁った。


「あ、あの、これ」


 ヤケクソになりながら差し出すと直生はなぜかキョトンとした顔でこちらを見る。



「あんた、今日誕生日でしょ。それで、その、」


 なんだか気恥ずかしくて語尾の方が小さくなっていく。

 対する直生は、未だによくわかってないような顔で受け取る。それに少々ムカつき、奴の胸ぐらを掴んで引き寄せた。

 そして彼の首に腕を回してぎゅっと。



「……お誕生日、おめでとう」



 蚊の鳴くような声しか出なくて我ながら情けない。

 しかし直生には届いたようで、ぎゅっと抱きしめ返してくれたのでホッとした。

 自分から抱きしめに行くのに慣れてない私の体は今、冷え性はどこ行ったと聞きたくなるほどに上昇している。顔なんて絶対真っ赤だ。

 直生は私がこんなに茹で蛸になりそうなほどの羞恥に耐えて抱きしめてくれてたんだな。彼に対する尊敬のポイントが1上がった。


 そんな尊敬する直生さんはというと。


「……忘れてた」

「……薄々そうではないかと思っていたよ……」


 私の言葉に気まずくなったのか、もぞもぞと肩口に顔を埋めてきた。


 なぜ彼は忘れていたのか。それは自分の誕生日を忘れてしまうくらいデートが楽しみだったのでしょう。きっと。たぶん。おそらく。

 また、誰も彼にお祝いの言葉は言わなかったのか?と疑問にお思いだろう。


 うちの家族はいつも、産まれた時間か、または時間を過ぎてから祝いの言葉を述べるのだ。こいつは4月6日の15時24分に産まれたので、朝はみんな普段通りに過ごしていた。もちろん直生が今日誕生日ってことはみんなわかってる。しかしその直生は自分の誕生日を忘れていた模様。


「バカなんですかね」

「……うるせ」


 まぁ、それよりも自分からやったこととはいえ、公共の場でバカップルのごとく抱きしめ合うとかめちゃくちゃ恥ずかしい。離しておくれ。そう念じながらぽんぽん背中を叩いた。

 すると直生はゆっくりと離れる。


「ありがとな。開けていいか?」

「……大した物じゃないよ」


 本当なら帰ってから開けるべきだと思うが、帰ってからも寝る時も私はずっと側にいるし、どうせ開けるのに立ち会うならさっさと終わらそうと思った。

 こいつに限って酷いことは言わないだろうが、ドキドキと心臓が鳴り止まない。


「カップケーキとペンケースとリストバンド……大量だな」

「せっかくだし。まとまりがなくて悪いけど」


 手作りの何かはあげたいと思い、カップケーキを。直生のペンケースを前に見た時、結構年季が入っていたので新しいのを。あとサッカー頑張ってほしいからリストバンドを……。

 まったくもって謎なメンバーのプレゼント。

 それでも直生は首を振って目を細めて笑った。

 いつもと違う、優しい笑み。


「いや、嬉しい。ありがとう」

「……あんたとは歳が離れちゃったけど、すぐ追いつくし、あるいは追い抜くし……」


 いつもと違う彼に、恥ずかしくなって視線を逸らしながらボソボソと呟く。

 それに対して「追い抜くのは一生無理だろ」と容赦ないお言葉。そりゃそうだ。


 ぐっと言葉に詰まる私にクスリとまた笑う直生。それを見て改めて思う。

 認めたくないけど、やっぱりこいつ、大人っぽくなった。

 こいつはいつも私のずっと前を歩いていて、やっと追いついたかと思えば、こいつは次はどう進むかという計画を立て終わっている状態。今だってこいつはまた私より先に行ってしまう。それがすごく悔しいのだ。


「はやく大人になりたいな」


 年齢的にも精神的にも身体的にも。

 そんなことを考えてしまう辺りやはり自分は子どもなんだ。それに気づいてしまい、困ったような、なんだかよくわからない気持ちになり、思わず笑ってしまった。


 すると直生が一瞬だったが、固まったように見えた。


「……直生?」

「……なってんじゃん。今も」

「ん?何?聞こえなかった」

「なんでもない」

「そう?」


 帰ろうか、と直生の手を握り、引っ張った。

 きっと今頃家ではこいつの誕生日パーティーの準備で大慌てだろうなぁ。さっきメールしたらもう少し持ち堪えてって返ってきたし。



 そんな平和過ぎた、春休みの最終日。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ