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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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初デート。

 やってきた4月6日、日曜日。今日で春休みも終わりである。

 春の長期休みの最終日。いつもなら直生が必死に課題をやっている姿が見れるのだが、今回は昨日かなり頑張って終わらせたようだから、余裕のある一日を送れそうだ。




「直生、早く」

「ちょ……待て待て」


 私達がいるのは大型ショッピングモール。

 周りの人の多いこと多いこと。そのせいでどんどん距離が離れていく私と直生。

 人混みに流されているのは直生の方。

 体力面では劣るけど、こういう場所では直生より強い私。

 しょうがないので彼の元まで戻り手首を引いて歩いた。

 



 やっと人混みから抜けると、目的地の全体的にピンクの可愛らしい内装の喫茶店にに入った。席は程よく空いていて、2人席に座るとメニュー表を開いた。


「んふふふふ……」

「……何その変な笑い」


 疲れ果てた直生がげっそりとした顔で貶してきたが、まったく気にならない。んふふ、今すごくテンション高いから。


「じゃあこの桜パフェにしよー。あんたは?」

「抹茶白玉ぜんざい」



 お店の人を呼び、注文して一息つくと、直生がスマホを取り出してゲームをし始めた。私は、ここでゲームすることもないだろうと、お店の内装を観察することにした。


 桜の季節なのと桜フェアというのもあって、桜の造花が壁のあちこちに飾らせていているし、窓には桜や葉っぱのジェルシールが貼ってあって春って感じだ。すごく凝っていて可愛い。


 思わず頰を緩めていると、微音だったがカシャッというカメラのシャッター音が聞こえた。

 それでなんとなく辺りを見回すと、みんな食事をしていて、カメラ機能が付いた機械を手に持ってる人なんて直生しかいないことに気づいた。しかし、彼は先ほどと変わらずその機械でゲームをしている。

 空耳だったのか?



 そうこうしているうちに注文したものがやって来た。うわぁ……すごく可愛い……。美味しそう……。さっそくいただきますと言おうとしたら持って来てくれた店員のお姉さんが二枚の紙切れを差し出してきた。


「ただいま当店ではカップルで来られた方に10%割引きクーポン券を配っております。こちらのクーポン券を会計の際、レジに持って行くと割引きされますので、是非お使いくださいませ」


 店員さんは、ハキハキとした口調で説明すると、にっこり営業スマイルでそれを渡し、お辞儀して戻って行った。

 ……すごいな。将来アナウンサーになれるんじゃない?


「得したね、直生」


 ニヤリと直生を見た。だって彼の奢りですから。


「俺にも運が回ってきたという訳だ」


 ドヤ顔で言われた。

「いや、クーポン券は使わないで払う。これは今度来た時にお前が使え」とか王子ぶらないとこ、あんたらしくて良いと思うよ。



「じゃあ、食べようか」

「おう」


 写真は、今回は直生と一緒にいるから撮らない。こいつあんまり女子のそういうの見るの好きじゃなさそうだし、また今度ってことで。



 いただきますと二人揃って手を合わせる。上原家の影響で、これはどこでもちゃんとやるようにしているのだ。


 ぱくりと苺ソースがかかっているクリームを一口食べるとクリームがシュッと溶けて甘酸っぱい香りがふわりと広がる。


「うぅ、美味しー……」

「一口くれ」

「うん」


 スプーンですくって持ち手を直生が持ちやすいように向けて直生に差し出した。そしたらムッとした表情になる直生。


「あのー……?」

「…………」


 不思議に思って問いかけると、直生は黙って私のスプーンの持ち方を変えさせ、私の手首を握ってそのままパクリと。

 いわゆる、バカップルの、あれ。


 あーん、だ。



「ちょ、ちょっと直生さん⁉︎何やってんの⁉︎」

「うるさい、黙って食え」


 赤面する暇もなく、今度は直生が抹茶白玉を無理矢理口に押し込んできた。

 待って、白玉はそんな急に突っ込んじゃダメだって。詰まりそうになりながらも頑張って必死にもぐもぐ食べる。

 かつてこんなに強引なあーんがあったであろうか。

 私は顔面蒼白で呟いた。


「なんか、バカップルみたい……」

「そうだな」


 ご満悦な様子で直生は再び自分の抹茶白玉を食べ始めた。

 なんだか脳内の整理が追いつかないが、こいつが満足できたならそれでいいか……なんて私も思ってしまい、パフェを食べるのを再開した。





「お前、そのパフェ30センチはあったのになんで食べ終わるの俺と一緒なんだ?」


 食べ終えた直生が真顔で一言。

 直生の目の前には小ぶりのぜんざいの入っていた器が。私の目の前にはドドンと存在感を放つパフェの入っていた器が。


 ……あんたの言いたいことはわかる。

 だけどね、わかるよね?私にも女としてのプライドがあるのだ。


「あんたが食べるの遅かったんだよ」


 別に私は大食いでもなんでもない。ただ、甘いものが大好きなだけ。

 直生は空気を読んだのか、本当にそう思ったのかわからないが、「まぁ、俺のは白玉入ってたしな」とか言っていた。




 お会計を済まし、お店を出ると何を言わずとも私達の足はある場所へと向かっていた。



 近づくにつれ、音がどんどん大きくなるあそこ。あの場所。


「まずは太鼓だね」

「いい判断だ」


 ニヤリと黒い笑みを浮かべ、真っ黒い不敵な笑みを浮かべた私達は二人並んでその場所、ゲーセンへと入って行った。


 いつもみたいに家でゴロゴロやるのもいいが、ここに来て体を動かすのもまた良いだろう。

 こいつと二人っきりで来たのは初めてだし、思いっきりやってやろうじゃないか。



 ただゲームを楽しみに来ていたすれ違った人達がそのオーラにギョッとした顔をしてたのには全く気づかず歩みを進めた。


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