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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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宿題は計画的に。

 久しぶりに7時半過ぎに起き、花奈おばさん特製ほかほか和食の朝ご飯を食べている時だった。


『今年は比較的温暖のため、例年より早めの開花となるでしょう』


 緑、ピンク、白などの春らしい色の服を丁度いい割合で、着こなしているお天気お姉さんが可愛らしくニコリと笑ってそう告げた。


「今年はあったかいみたいだよ」

「ああ」

「でも花粉が心配だね」

「ああ」


 何を言っても「ああ」としか返ってこない。

 彼は別に怒っているわけじゃない。不機嫌ではあるかもだけど。


 今、直生の頭の中の大半は目の前の問題集のことで占められているのだ。

 カリカリカリカリ。テーブルを挟んで向かい側にいる彼は血眼で問題を解いているためシャーペンの音が鳴りやまない。

 なぜ彼は部屋で勉強しないのかって?私が今までぐっすり寝ていたからだよ。私が起きて来ても移動するのがめんどくさいからだよ。


「はかどってるー?」

「ああ」


 彼が今やっているのは春休みの宿題。いつものことながらギリギリまでやらないのでバカみたいに焦ってる。ちなみに今日は春休み終了二日前の4月5日。

 そんなバカな直生に対して、私はちゃんと毎日コツコツやってきたので大丈夫だ。

 まったく。明日デートに行くのわかってるんだからちゃんと計画的にやれっつーの。


 まぁ、今まで前日まで溜め込むこいつが、私とのデートがあるがゆえに二日前に終わらせようとしてるし、まだマシな方だ。


 今の私は何をしているかというと、テレビを見ながらこうやって焦る直生を高みの見物、というか邪魔してる。あー、おもしろい。


「もうすぐ春休み終わっちゃうねぇ」

「ああ」

「私のクラスねー、担任の先生が離任したから新しくなるんだ。クラス替えはないとはいえ、先生が変わるとクラスの雰囲気もだいぶ変わるから少し不安なんだよねー」

「へー」


 あ、「ああ」が「へー」になった。よりおざなりになった気がする。テレビから視線を外し、直生を見ると依然としてシャーペンと消しゴムをお供に問題集に向かっている。

 大変そうだなー。しかし、今回は取引も何もしてないので手伝いはしない。自業自得だ。何の報酬もなしに手伝うとか、私はそこまで優しくはない。けど。


「Xじゃなくて、Yに代入なのになー」


 独り言は言う。なんというか、間違ったままのを見逃すのは、なんかムズムズするというか不快だから。

 それに終わらなくて明日のデート中止になったら嫌だし。


「あ?ああ……」


 直生もこういうのはすんなり耳に入れてくれる。今はすっかりお勉強モードだから。


「占いの時間だよー!」というテレビからの声に視線を戻すと占いが始まった。私は8月23日生まれなので乙女座。おお、4位。まあまあいいじゃん。ラッキーアイテムはヘアピン。付けてないけど、別にどうでもいい。どうせこういうテレビの占いの結果なんて5分もしないで忘れるし。


「おい、牡羊座は?」

「……え?」


 問題集をから目を外し、テレビを食い入るように見る直生。

 ……なんだいきなり。こいつそんなに占いとか好きだったっけ……?


「まだ出てないけど……?」

「そうか」


 ちょっと引き気味になりながらテレビを見ると、ダバダバダバ……と音楽が流れ牡羊座と水瓶座が揺れ動いていた。

 これ1位か12位のやつだよ。ゴクリと唾を飲む音が聞こえた。え、何、こいつマジになってる?いやいや、こいつの性格的にありえないから。


 バーン!という効果音と共に直生の表情は死んだ。


『残念っ牡羊座は今日は12位!現実から目を逸らさずやるべきことはやりましょう!ラッキーアイテムは文房具!』


 何これ。思いっきり、直生に向かってさっさと宿題しろって言ってるじゃん。私はケラケラと大いに笑う。

 うーわ、この占い当たるねぇ。私もヘアピン付けてこようかな。当たるというなら話は別だ。

 ふと、直生を見ると机の上に伏せってしまっていた。


「ねぇ、なんであんなに夢中になって占い見てたの?」

「……宿題、なんとかならねぇかなって……」


 なるほど。藁にも縋るってやつか。

 そこまで切羽詰まってんだね、可哀想に。



 さっきも言ったけど、私は優しくない。


「なら、さっさとやれ」

「……はい」


 可愛い子……じゃなくて彼氏には旅をさせよってね。

 味噌汁をすすり、ニコリと直生に微笑んでやった。


 その時のやつの絶望顔がおもしろいといったらない。

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