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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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春が来た、春が来た。

 春風に運ばれて来るもの。

 花の匂いに、花びら、葉っぱ。

 良くないものなら、花粉や黄砂とか。


 でも、運ばれて来るだけじゃない。行ってしまうものもあるのだ。


 どれだけ拒否しても、風は勝手に吹く。大好きなものまで奪っていってしまう。それが嫌で嫌で仕方なかった。



ーーー


「ど、どうか、ご慈悲を……!」

「観念しろ」


 ズルズルと引きずられて無慈悲な悪魔の手に落ちてしまった私。ああ、私の大好きだった場所が解体されて行く……。


「4月になったのでコタツは撤去でーす」


 直生が私を取り押さえている間に華南ちゃんがバサッとコタツ布団を引っ張って洗濯しに行こうとする。

 ちくしょう上原姉弟め。たまに無駄なチームワーク披露するんだから。

 ああ、あれが無ければ、布団が無ければコタツとは言えないよ。ただのちゃぶ台だよ。


「せめて、夏まで……夏まででいいから……」

「暑いわ」


 4月とはいえ、まだ寒いよ?凍え死にそうなんだけど。だけど、そんな我儘通じるわけもなく。


「わかったよ……。ゲームしよ……」

「切り替え早いな、おい」


 ズルズル引きずってもしょうがないじゃん。また冬に会おう、心の友(コタツ)


「あ、そういえば直生。デートどうすんの?」

「んぐふっ」


 私の言葉に反応したのは直生じゃなく、通りすがりのお兄ちゃんだった。何その気持ち悪い声……と白い目でお兄ちゃんを見る。直生もまた同様である。


「……どこ行きたいんだ?お前は」


 キモいお兄ちゃんから視線を戻し、直生が聞いてきた。私は側に積み上げられていた雑誌の中から今月の地域広報を取り出し、とあるページを見せつける。


「桜フェアだよ、直生。ここしかない」


 ここ、と指さしたのは近くの大型ショッピングモール。以前、伊織とのんとバナナパンケーキ食べに行った所だ。


「ああ、なんか前に言ってたな。じゃあここにするか」

「うん。わーい奢りー奢りー」


 まだ一言も奢るとは言われてないけど、前に了承されたしいいだろう。本人も「はいはい」って言ってるし。


「あ、そだ。あんたにも奢るよ」

「やめろ。絶対やめろ」


 何度言っても聞き入れなさそうなのでしぶしぶ諦めた。


 再び広告を見る。何度見ても全然飽きない。桜ロールケーキに桜あんぱん、桜パフェ……。桜って付けるとなんでも可愛く美味しそうになるから不思議だよね。


「顔がすごいニヤけてるぞお前。そんなに楽しみなのか?」


 挑発するかのように言われたが、本当に楽しみなので普通にコクンと頷いた。


 すごい楽しみだよ。

 直生と二人で出かけられるっていうのがまず嬉しい。それに……。


「いっぱい食べるね、私」


 スイーツが大好きすぎるから。

 私の言葉を聞いた途端に目を私の腹に向ける直生。嫌な予感がする。


「……太るぞ」


 ほら見ろ。こんなにもデリカシーって言葉が似合わない男はいないんじゃないだろうか。

 これで2回目だな。そろそろお灸を据えなければ。


「それ、NGワード。イエローカード」


 次言ったらレッドカードになります。一般人でも知ってるこのルール。サッカー部のこいつが知らないはずはない。


「レッドカードになったらどうなる」

「もちろんご退場願います」

「どこからだよ」

「人生、というグラウンドから……」


 スッと目を細めてみせると彼はあっという間に真っ青に。なんまいだーなんまいだーと唱え始めた。

 ……何の効果あるんだっけ、それ。


「あはは、冗談だよー」

「全く冗談に聞こえなかったんだが」


 笑ってみせるも直生は未だに青ざめている。……そんなに怖かったの?


「で?いつ行く?5月8日までやってるみたいだけど」

「……なら、お前が良ければ今度の日曜日で」

「わかった。大丈夫、いつでも暇人だから」


 帰宅部なめんなと、いつかの直生のように張り合ってみたものの、何故かまったく格好がつかなかった。




「……ん?」


 私はカレンダーを見た。

 ……こいつわかってて今度の日曜日って言ったのか?チラリと奴の顔を見てみるも、そんな下心あるようには見えなくて。うーん、偶然か?偶然なのかな。


「……なら、それまでに準備しなきゃ」

「は?」

「なんでもない」


 怪訝そうにする直生に首を振りながら、頭の中はフル回転していた。



 4月6日。楽しみで仕方ないな。


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