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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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現実逃避。

「今日で二年生も終わりです。来年度から皆さんは受験生となります。その自覚を持って春休みを過ごしてください」


 先生がそんなテンションだだ下がりになる言葉で締め、ホームルームは終わった。


「莉音!のん!映画見に行こうよ!」


 終業式の日だったため午前中に帰れるのだが、さっそく自覚なしな子が現れた。

 のんも私と同じ考えらしく、呆れ顔。


「イオちゃん、先生の話まったく聞いてなかったんだねぇ」

「家に帰るまでが学校だ!つまりまだ春休みではない!」


 何その、家に帰るまでが遠足だみたいな屁理屈は。しかも正確には明日から春休みだし、帰ったからと言って春休みになるわけではない。


「それで、何の映画?」

「お、莉音は見に行きたいか!だよなだよな!」


 同調してないでさっさと質問に答えんかい。


「……帰るよ」

「ああ⁉︎待って待ってくれ!これ!これだよ!」


 見せてきたのは最近CMでよくやっている恋愛映画の広告。兄妹の禁断の恋的なやつ。


「ちょうど映画無料券三枚貰ったんだ!タダだし行こうよ!」


 そう言いニッカリと笑う伊織。


「……まぁ、タダなら」

「そうだね。タダだし」


 タダを理由に、私達は映画館へと向かった。




ーーー


「うぁああ!切なかったぁーー‼︎」

「伊織うるさ……」

「うぇええん!」

「のんも⁉︎」


 映画見てた間は大丈夫だったくせに映画終了後、すぐに堰を切ったように声を荒げて泣く二人。どうしたらいいの、私。道行く人達の視線が痛い。


 そんなに泣く内容だったか?

 ざっくり要約すると、女の子と男の子が兄妹なんだけど恋しちゃって、でもそれが親にバレてしまって離ればなれになるが、二人はまた会うことを誓う。しかし兄の方に縁談が来てしまい、うんたらかんたらする話。


 私とお兄ちゃんがちょうど兄妹で当てはまるのだが、まったく想像できない。むしろ超お断り。無いわーって思う。


「り、莉音は、悲しくないのか⁉︎」

「え?うん、まぁ」


 ……え、私がおかしいの?ちょっと冷めてるから?ドライだから?

 うん、それなら合点がいく。私がおかしいのか。そうか、そうか。


「人それぞれだと思うよーイオちゃん。それに莉音のとこ兄妹だし。ちょっと気まずいでしょ?」

「まさか、ああいうことがあっ……」

「ないよ」


 伊織がとんでもないことを言う前にぴしゃりと遮った。


「でも普通に面白かったとは思う。映像も綺麗だったし。カメラのアングルもなかなか……」

「莉音、視点がおかしい」

「あ、ちっちゃい名探偵君の映画のポスター!」


 伊織が指さす方を見るとちっちゃい名探偵君がスケボーに乗ってポーズ決めてる大きなポスターが。


「へー、春公開……」

「私は弟と見に行くぞ!」

「え、イオちゃん弟いたっけ?」


 私も聞いたことない。


「ああ!中二で、亜織(あおり)って言うんだ!」


 亜織……。その場合、伊織が下では?あいうえお順的に。


「親がなんとなくその年めでたそうな一音にお母さんの名前についてる織を付けたんだってさ!」


 なんとなくこの子とこの子の両親って似てるんだなって思った。めでたそうな一音って一体。


「いいなー。私の『のん』って名前なんか、のんって呼びたいからそう付けただけらしいの!小学校の時の道徳の時間の『私の名前の由来について』の発表大変だったんだから!」


 確かにのんって名前、可愛いし、呼びやすいと思う。でもまぁ、それ以前に。


「のんは名前の通り可愛いし、ぴったりだと思うよ」

「そうだ!のんにはのんって名前しかないと思う!」


 そう言うとびっくりした顔をした後、照れたように笑うのん。うん、可愛い。やっぱりのんはのんだよ。


「莉音は?可愛いよね、この名前」

「……確かお母さんがつけたんだよ。ジャスミンの花のように愛らしくて、音は優しく清らかでって意味で……。笑いたければ笑うがいい」


 うーん……。お母さんってあれでちょっと少女趣味なんだよね。そんな私は悉く逆らって生きてきた訳だけど。愛らしくないし、優しくもないし、清らかってなんぞや。


 そもそもジャスミン要素入れたいなら『茉莉(まつり)』か『茉莉(まり)』にしろって何度も思った。その後ろに『音』付けたら(ぼう)土管やらキノコやらが登場するゲームの主人公っぽくてなんか嫌だけど。


「莉音可愛いし、優しいし合ってると思うぞ?」

「少なくとも、『伊織』や『のん』って感じではないね。イオちゃんの言う通りだし」

「……どうも?」


 お世辞だろうが。可愛いとか優しいって言ってくれたおかげでちょっと沈んだ心が浮上してきた。そんな二人こそ優しいよ。


「そろそろ帰る?外もう暗いし」

「そうだねぇ。帰ろっか」

「おう!」


 三人で映画館を出て並んで歩いた。後どれくらいこのメンバーでいられるのかな。

 三年生になってもクラスは同じなのでこの二人とは一緒のクラスだ。

 しかし、それが終われば……。



「もう、受験生だねぇ」



 ……のんの一言がこんなに重く感じるのは初めてだ。私達は「そうだね」とだけ答えた。

 そろそろ現実を見なければ。でも、3月31日までは二年生だ。まだ受験生ではない。


 そんな伊織みたいな、いや……彼女よりも酷い言い訳を自分にした。

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