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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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心配症のサンタさん。

 朝起きて一番に目にしたのは綺麗に包装してある箱。なぜか枕元に置いてあったのだ。


「……なんだこれ」


 起き抜けでボーッとした頭を叩いて起き上がり、箱を凝視する。え、ほんとに何これ。時期はずれのサンタさん?


 箱をひっくり返してみるとラベルが貼ってあって、『名称:菓子 原材料名:砂糖、小麦粉、植物油……』と色々書いてある。


「……ホワイトデー?」


 なんつー渡し方だ。



 よく見ると20個入りって書いてある。……倍返しどころじゃないね。すんばらしい。


 ベリベリと包装紙を破いていくと可愛らしい箱が見える。開けてみると、クッキー、マドレーヌ、カットされたパウンドケーキなど、いろんな種類の洋菓子が詰めてあった。


 美味しそう……。今食べたい。すぐ食べたい。一個くらい、いいよね。マドレーヌの小袋を一つ取って破いた。甘い香り……いただきま……。


「メシが先だコラ」

「ぎゃっ」


 パクッと食べる前にその手を引っ張られ阻止された。しかもマドレーヌ奪われた!

 誰か言わずともあいつだ。


「いいじゃん。朝ごはんも食べるよー」

「寝ぼけてるな?いつからそんな行儀悪くなったんだ。いい加減さっさと起きてこい」


 ほんとだ。いくらなんでも人様の布団の上で何か食べるなんてこと絶対にしないのに、どうしたんだ、私。私の方がこいつより真面目度高いのに癪に障る。

 なんかいつもより尋常じゃないくらいにお腹がすくし……。


 ん?そういえばなんでこいついるんだ?


「直生、あんたなんでここにいるの?」

「部屋の主人(あるじ)が自室に来て何が悪い」


 こいつ何言ってんだというようなバカにするような顔で言われたが、何言ってんのはこっちのセリフだ。


「あんたいつもなら私の睡眠妨害しないように部屋には来ないじゃん」


 前みたいな例外はあるけど、最近はこいつは負けてない。悔しいことにむしろ私が負ける割合が多い。


「……お前、今何時だと思ってる?」

「え?10時くらい?」

「2時だバカ」


 直生の言葉に一瞬で頭の中で反芻する。ニジ……にじ……2時?


「……午前の?」

「午後」


 なんてこった。

 ハー……とため息を吐くと呼応するように直生もため息を吐いた。

 やばいな、朝ごはんとお昼ごはん過ぎちゃったんだ。さすがに私も自分でドン引きだ。


「……11時に寝たから、13?14時間?」

「15時間だ」


 うわぁ、いくらなんでも寝すぎだよ私。

 ……うぅ、お腹すいた。とりあえず何か食べなきゃな。

 そう思った途端ぐぅ、とお腹が鳴り、咄嗟に手で抑える。


 ……ええ、一応恥じらいますよ。一応彼氏の前ですもん。一応……。

 何ニヤニヤしてんだそこ。


「ぐふふ……」

「気持ち……悪い、よ……その笑い方……」


 ツッコミもいつもより弱々しくなってしまう。

 ああもうかっこ悪い。顔に熱が集中するのを感じ頭を下げた。ツラァ……。


「莉音」

「⁉︎」


 名前を呼ばれ、そちらを見ると、奪われていたマドレーヌを口に押し込まれた。いや、今も尚押し込まれている。

 待って待って苦しいっつーの!慌ててもぐもぐ口を動かし全部食べた。

 なんだこいつ。何がしたかったんだ。お行儀悪いんじゃなかったのか。


「……何だ、そんな睨みつけて。可愛くねーぞ?」

「何はこっちのセリフだよ!詰まるとこだったじゃん!」

「腹減ってんだろ?」

「ぺこぺこだよ!」


 叫んだせいか、寝すぎたせいか、クラっと目眩がした。

 あー……疲れた。もう一眠りしようかな。今ので少しは腹が満たされたし。

 ドサッと寝っ転がる。


「おい、まだ寝る気か?」

「なんか寝れる気がする」

「やめろ」


 直生はぎゅーっと私の頰を引っ張った。それはもう容赦なく。痛い痛いと目を開けると直生は予想外の表情を浮かべていた。


「……何度も起こしたのに、全然起きなかったから、その」


 そう言いながらあちこちに視線を彷徨(さまよ)わせる。あれ、これは……。


「……もう起きないかと心配になった?」


 まさか、枕元に置いておいたのは私を起こすためのお供え物的な何かだったりするのであろうか。

 直生は黙ったまま更に頰を引っ張る手に力を入れた。超痛いのでお願いですからやめてください。


「一応……」


 直生のその声は普段から考えられないほどに切なくて。

 私、前に倒れて2、3日起きなかったことがあって、物凄く心配かけたことがあったんだよね。思い出しちゃったのかもしれない。


「……ごめんなさい。起きなくて」


 私は素直に謝った。

 大切な人が目覚めなかったらすごく不安になるよね。自惚れてしまうくらいにはこいつに大切にされていることはわかっている。だから、尚更。


「……今度、昼過ぎても起きなかったら、またメイドコスな。もちろんお前からの復讐はなしだ」

「絶対に起きてみせます」


 即答した。無理。嫌だ。絶対に嫌だ。


「それは残念だ」


 まったく残念そうには見えない、ホッとした顔でそう返された。なんだかんだ、メイドコスよりも私を心配してくれてる。

 なんだかむず(かゆ)いので何か食べようと考えなしに箱に手を伸ばすとパシッと軽く手を叩かれ、「まずメシを食え」とベッドから抱き下ろされた。

 さっきはそっちから無理矢理食べさせてきたくせに……。


「直生今日休みだったのにお昼ご飯リクエスト聞くのまた延期になっちゃったね。ごめん」

「……別にいつでもいいけど」


 ボソリと言った直生に苦笑する。


 こうやって今日も直生に甘やかされてしまうのだ、と。


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