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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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甘くて、暖かくて、優しい雪の日。

 直生の貰ってきたチョコも消費し終え、久々に雪がどかどか降った二月も後半に差し掛かったある日。

 今日は土曜日なので予定のない私は上原家のコタツでゴロゴロしようかと思っていたのだが。


「莉音。雪かきしてきなさい」

「えっ」


 お母さんが指さすのは窓の外。今は雪がやんでるが、庭は真っ白な銀世界になっている。


「えーと……外に出て雪かきするんですか?」

「当たり前でしょ?さっさとお願いね。私は家の掃除するから」


 スタスタ行ってしまったお母さん。

 なんという強引さ。とても紗凪おばあちゃんと孝おじいちゃんの子どもだとは思えない。


 今日は私とお母さん以外みんな用事があるので誰も手伝ってくれないし、私一人でか……。


「はぁ、行くか……」


 コタツのぬくもりが恋しいが、しょうがない。私は立ち上がって防寒対策を始めた。





「うわっ、寒っ」


 外に出るとやはり尋常じゃないくらい寒い。防寒対策として、耳あて、マフラー、手袋、コート、あとカイロ五枚を貼っつけてるけどダメだこりゃ。よし、戻ろう。


 玄関のドアを開けようとすると窓からお母さんの顔が見えた。めっちゃこっち見てる。しかも何か訴えかけるような目だし。

 ……さっさとやれって言ってるな、これ。


 泣く泣く回れ右をして立て掛けてあった雪かきシャベルを手に取った。


「てか、こんなに広い庭、一人で雪かきするの……?」


 お母さんって絶対に鬼だ。鬼にしか見えない。

 先日の豆まきの時に豆当てたらお母さんの中の鬼が消えたのかな。失敗したなー。


「…………」


 現実逃避しても寒いだけなのでさっさと始めることにした。


 ザクザクザクザク。

 降りたてなのでさほど固まっておらず、割とスイスイできた。


 夢中になって雪かきしていたせいでいつの間にかお昼を過ぎていたらしく、お母さんに家に入るよう言われる。


「午後は大輝帰って来るし、あの子にやってもらうから大丈夫よ。ありがとう」


 そう言ったお母さんの顔はとても優しくて。


「……鬼が消えた」

「は?」

「なんでもない」


 いかんいかん。口を滑らせてしまった。鬼が復活する。


 防寒着を脱いでコタツの中であったまっているとお昼ご飯が運ばれてきた。お母さんが作ってくれたんだ。とても甘い香り。


「ホットケーキ……久しぶりだね」

「そうね……お父さんがいた時以来かしら……」

「…………」


 ボソリと呟かれた最後の方の言葉は聞き取れるか取れないかくらいの大きさだったのに、私の耳にはしっかり聞こえた。


「……美味しい」

「そう?良かった」


 同じくコタツに入り、ホットケーキを食べるお母さん。


 前までは、父がいた時までは頻繁に作ってくれたホットケーキ。今の今まで作ってくれはしなかった。だって、これは父の好物でもあったから。……思い出してしまうから。私の甘党はたぶん、父親譲りなのだ。


 しかしなぜ、今日は作ってくれたのだろう。


 この疑問を口には出してなかったのにお母さんは答えてくれた。


「あんた、雪かき頑張ってくれたからね。ご褒美よ」

「……そっか」


 すごく、すごく甘い、優しい味。

 あの時からずっと変わらないみたい。


 お母さんは私を泣かせようとするのが上手いな。前にもこんなことあった気がするし。直生の前でも泣いたことないのに。


 いや、お母さんだからこそなのかもな。

 今にも涙が溢れそうでパチパチ瞬きした。


「あんた泣き虫ねぇ」

「まだ泣いてない」


 せっかく我慢してたのに、そんなこと言われたら涙出てきちゃうじゃん。ポタ、とテーブルに雫が落ちる。


 息がつまるくらいにホットケーキをパクパク食べて涙を殺そうと頑張ったけど、全然止まらない。


 お母さんの方が悲しいはずなのに、ごめんなさいとしゃっくりをあげながら言うと頭を撫でられた。


 それが暖かくて、また涙が溢れる。



 甘くて暖かくて優しい、そんな雪の日だった。

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