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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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罰ゲーム。

「んじゃ、この前の続きからな」

「勝ったら?」

「いつもの『相手の言うことをなんでも聞く』で」

「わかった」


 私と直生は簡単にやり取りを済ますとゲーム機を取り出した。


「私のアイちゃん絶対勝つから。ていうか、めちゃくちゃ可愛いんだから」

「俺のリアだって」


 お互いフッと笑う。聞こえないゴングが鳴った。

 それがいつもの開始の合図。





「あー……もう……悔しいー……」


 私は掃除機片手にぼやいた。


「せーぜー頑張れ俺のメイドさん?」


 『メイドになって部屋の掃除しろ』という命令をし、椅子にのんびりと座る直生を振り返り、人差し指を突き刺す。


「だ・れ・があんたのメイドさんだ。ふざけんな」

「んじゃ、奴隷になるか?」

「……すみません。メイドでお願いいたします」


 直生はフッと笑うと、こちらへ近づき私のツインテールの髪の一房をくるくると指に巻きつけ遊び始めた。


「その格好も似合ってんじゃん」

「……あんた、こんな趣味もあったの?」


 私は自らが着ているフリルがこれでもかというほどついているメイド服の裾をつまんでみせた。

 いやー、彼氏がメイドコス趣味とか、世の中何があるかわからないねぇ。


「あーそれは……」

「私の趣味だよ!」


 いきなりソプラノの声が聞こえ、振り返ると随分と綺麗な女の人がいた。


「……華南(かなん)ちゃん?」

「あれ、びっくりさせちゃった?ごめんね莉音」


 彼女は直生の姉の華南ちゃん。

 高校二年の私より五つ歳上の成人した従姉だ。

 というか、なんなんだこの姉弟。そんなに私の寿命を減らしたいのか。


「このメイド服、姉貴のなんだ」

「ママたちには内緒だよ?」

「……うん」


 あの人達のことだからこれがバレてないってことはありえないんじゃないかなぁ。

 黙って見過ごしているに一票。


「莉音は色白だし、美脚だし髪もつやつやロングでかなりの美少女だからメイド服の方がくすんじゃうねぇ……」

「なぁ猫耳としっぽつけようぜ」

「いいね〜!白猫?黒猫?」

「服が黒いから普通に黒でいいんじゃね?」

「ま、まって。ちょっとあんた達一回落ち着いて。私、美少女でもなんでもないし、猫耳なんか付けないし」


 どんどん話が進んでいく中、私が慌てて口を挟むと二人はお互いに視線を交わし、目で会話をし始めた。

 くそぅ、姉弟め。


「何言ってんだ?お前に拒否権なんて無いんだよ。お前は俺の言うことだけ聞いてればいいんだ」

「きゅん……なんてなるわけ無いだろうが変態が。どこの少女漫画だよ」

「そうだよ!そこは壁ドンしながら言わなきゃ!」

「あはは。華南ちゃんちょっと意味がわからないなぁ」


 笑ってみせたが、自信ないな。引きつってる気がするね。


「莉音」


 不意に耳元で直生が低い声で私を呼んだ。


 不意打ちすぎたせいか、背筋が泡立つ。

何か違和感を感じて見てみると後ろから伸びる直生の手が私の着ているメイド服をまさぐって腰のリボンをほどきにかかっていたのだ。

 私はジト目で奴を見る。それに対して、直生は涼しい顔をしていた。


「……あんた何してんの」

「いや、付けないなら脱がせようかと」

「バカなの?変態なの?離しやがれ」

「はっどうせ変態ですから。猫耳か脱がされるかさっさと選べっ」


 カシャ


「「……………………」」

「じゃ、ごゆっくり〜」


 私の体温は一気に奪われた。横の直生も真っ青になっていた。

 直生よ、青くなるくらいなら、なぜあんなことをした!


「あ、姉貴……?今撮ったよな?今すぐ消せ‼︎」

「やなこった」

「華南ちゃん!その写真はやばいって!」


 追いかけようとした時だった。


「莉音ーー‼︎ご飯の支度手伝いなさーい‼︎」


 やっとお母さん達来たのかと思った反面、なぜこのタイミングなんだと思った。



 お、お母さん……。今、それどころじゃなくてよ……。

 猛烈に今、頭を抱えたい。

 この格好で夕飯の手伝いはさすがにないよ。


 あ、そうだ。



「お母さーん‼︎ただ今参りまーす‼︎」


 そう叫んで一歩踏み出したその瞬間。


「待って、莉音!その格好であっちに行っちゃダメ!パパとママにこの趣味バレる‼︎」


 いや、もうたぶんバレてますって。

でもそのことは作戦のために敢えて言わないでおく。


「じゃあ、あの写真消去して?」

「……はい」


 ちゃんと消去するところを見届け、私はメイド服からさっきまで着ていた制服に着替える。

 もちろん直生は部屋の外に追い出した。


「やっぱいいねー。JKは。JK最高!ブレザーもいいけど、直生のところのセーラーも中々だよー!今度私のお下がり着てみてよ!ね!」

「…………」


 横にいる成人女性がなんか言ってるけど無視した。別に他校の制服を着る趣味はないので。


「じゃ、今日は鍋なので早く来てね。それでは」


 返事を待たずに私はパーッと台所に向かった。





「莉音スーパー」

「……ドゥラァアイ……」


 そんな下らない会話があったとも知らずに。

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