進路。
あっと言う間に冬休みが終わり、学校が始まった。
相変わらず外は寒くて死にそうになるし、外にいていいことはない。しかし天気はいいので室内の窓側の席はなんとも暖かい。そう、眠くなるほどに……。
「起きろ山寺!テスト中だぞ!」
「……終わってますけど」
「終わっても起きてろ!センター試験では許さなれないぞ!」
新学期早々にある実力テストの最中なのにプンスカ怒る先生は私を叱るだけ叱って見回りを再開したようだ。
……センターねぇ。私は大学に行くのだろうか。それとも専門学校か、就職か。
あれ?そういえば華南ちゃんって受験生……。
「華南ちゃんってどこに就職するの?」
金曜日になり、上原家に行き、花奈おばさんにそのことを聞いた。華南ちゃんはまだ帰ってなかったのだ。
「華南はねぇ、結婚式場から内定もらってるのよ」
「え、結婚式場?」
「そうそう。ドレスコーディネーター」
「…………」
えー、初耳。ああ、でもコスプレ趣味だからかな。そういう装飾関係の仕事に就きたかったのかも。
「みんなをびっくりさせるためにまだ秘密にしてるみたいだから、知らないふりしててね?」
人差し指を立てて口元に当てる花奈おばさん。可愛いけどさ。
「それ、私に言ってよかったの?」
「うふふー。莉音ちゃんが聞いてきたんじゃない。私は答えただけよー」
「……そうだね」
笑顔がなんだか黒く見え、逆らう言葉なんて言えもせず私は深く頷いた。
「莉音ちゃんは将来何になりたいの?あ、直生のお嫁さんって答えはダメよ。それはもう決定事項だから」
「……それがね、全然決まってないんだ」
お嫁さんのとこはスルーします。全力でスルーします。
「色々あったけど、高校は昔から憧れていたところに入れたじゃん。でもその後どうしようとかはまだ決めてなかったんだよね」
『色々』。その言葉に花奈おばさんは悲しそうな顔をする。ああ、やってしまったな、と心の中で呟いた。
「そんな顔しないでよ。私はもう大丈夫だから」
「莉音ちゃん……」
「それよりも進路。花奈おばさんは高校卒業後どこに行ったの?大学?」
「……ええ、大学よ。調理師の免許を取るために」
なるほど、調理師か。私も料理は食べるのも作るのも好きだしそれもいいかもな。
「優おじさんは?」
「あの人はね、すぐに就職したらしいわ」
「え、今の会社に?」
「ええ。パソコンの扱いがうまかったから、重宝されてるみたいよ」
特技があると会社でも優位な立場に立てるのか。特技……ゲーム?……ダメだな。
「……難しいね。どうしよう、今年はもう受験生なのに」
「焦ることはないわ。自分の選択に後悔のないようにじっくり選ぶのが一番よ」
そうは言ってもなー……あ、そういえば。
「……ねぇ、直生は?直生の進路は?」
「あの子もコンピュータ系が好きだからそっち系の学部がある大学に行くんじゃないかしらね」
「へぇ」
そうだったな。あいつゲームだけじゃなく、メカとかも大好きだからな。
でも私はそういうの得意じゃないし。
「莉音ちゃん。うちに花嫁修業しに来ちゃったら?」
「へ?」
「どうせ、嫁いじゃうんだから、ね!」
「それはイヤ」
「ええー」
いやいやいやいや。花嫁修業って……。進路希望調査の用紙になんて書くの。その他の欄に、『上原家に花嫁修業』って書くのか?冗談じゃない。
「いい解決策だと思ったんだけどなー」
「まったく解決してないよ。でも一番いいなって思ったのは調理師免許取ることかな。スキルアップすればみんなに作るご飯、もっと美味しくできるようになるだろうし」
そう言うと「り、莉音ちゃん……っ」と感極まった声で名前を呼ばれ、抱きしめられた。く、苦し……。
その時、ガチャリと音が聞こえてドアが開いた。
「ただいまー……何してんの」
「直生っあなたのお嫁さん最高よ!」
「あっそ」
「嫁じゃないし」
……まぁ、いつかはなりたいと思わなくもないけど。




