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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
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ご機嫌な午前。

 香ばしい匂いに辛い匂い、肉の匂いに魚の匂い。

 そして、甘い匂い。


「まずは定番のチョコバナナから」

「はいはい」


 一本買うとじゃんけんを挑まれる。

 お店のおじさんにじゃんけんで勝つと二本貰えるだなんて素敵すぎだよね。

 白いバナナに茶色のチョコに色とりどりのスプレーチョコがかかっている普通のチョコバナナ。家で作ろうと思えば作れるが屋台の方が美味しいと感じてしまうからいつも必ず買ってしまうのだ。


「はい、勝ったからおすそ分け」

「二本食べねーの?」

「帯のせいでそんなに食べられないんだよ。はい次」


 りんご飴、わたあめ、クレープなどなど、どんどんお店を攻略する私。そのたびに手に持つ荷物の量が増える直生。


「よくそんなに金あるよなお前。まさかもうお年玉使ってんのか?」

「違うよ。お祭り時までに節約に節約を重ねてんの。でも、そろそろいいかな」


 屋台の人混みから少し離れた人気のないスペースに行き、お母さん達に電話する。

 数回コールが鳴ってやっと出たかと思うと、向こうがめちゃくちゃ騒がしいようで何度も聞き返されたが、ようやく会話が終わり通話終了ボタンを押した。


「お母さん達なんか昔馴染みと出会って話してるから先帰ってていいってよ」

「姉貴達は?」

「お兄ちゃんがまだ満足してないからもう少しいるって」


 そんなわけで私達は一足先に帰ることにした。


「ほら、半分持つ。私のだし」

「そこは全部持てよ。いや……いい。俺一応サッカー部だし」

「サッカー部腕力あんの?」

「サッカー部なめんな。帰宅部が」


 真偽はわからないが持ってくれるというのなら思いっきり頼ろう。


「帰ったらゲームしようよ。お正月ガチャが待っている」

「そうだな。ってかお前はこれ消費しなきゃいけないんじゃないか?わたあめやらりんご飴やらは今日中に食べた方がいいだろ」

「りんご飴は私が食べるけど、わたあめはあんたも食べていいよ。荷物持ってくれたから」

「……俺もゲームできねーじゃんか」

「バカが。あんただけ先にやらせるわけないじゃん」


 ニヤリと笑ってみせるとげんなりした顔を返される。バカだねぇ。さりげなく私が遅れをとるよう仕向けるなんて。せこい、せこい。


「……お前、今日はずっとその格好でいるのか?」

「え?そうだね。夕食時に他の親戚とか来るし。接待しなきゃだし」

「ふーん」


 なんだ、いきなり不機嫌になったぞ。今の話の流れでなんで急にこんなこと聞いたんだろう。


「精々、呑まされねぇように気をつけろ」

「お酒?未成年に呑ます訳ないじゃん」


 何言ってんだろうこいつは。顔を見てみると珍しく曇った表情を浮かべていた。


「酔った大人は怖いんだって言ってんの。お前ももう17歳なんだし、ちょっとは自覚しろ」

「…………」


 また子ども扱いか。でも私を心配してくれてるのはわかったので素直に頷いた。


「しかしお前、その格好でゲーム機いじるとか、かなりおもしろいぞ」


 おもしろいと言いながら真顔。しかし否定はできなかった。

 確かにおもしろい。普通カルタだろってお兄ちゃんに突っ込まれる気がする。


 そんな数時間後を予想しながら帰路についた。






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