お正月。
「明けましたね」
「……明けたな」
目が覚めてすぐ目の前にいる奴に新年の挨拶をすると寝ぼけた声で返された。時計を見ると8時。どうしようもう少し寝ようかな。
「今日は初詣に行くらしいからすぐ起きろよ……」
「……そう言うあんたが今にも寝そうだね」
うつらうつらと二度寝しようとしているので頰をベシベシと叩く。
「うー、やめろやめろ。起きる……起きるか……ら……」
「…………」
ベシベシ再開。
いつもは私の方が起きるの遅いのになんだか新鮮だ。今年は目覚めのいい正月だな。
やっと起きた直生は欠伸をしながら睨んできた。
「もう少し可愛く起こせよ」
「可愛くないので無理。じゃ、私着替えに行くから」
「ここで着替えりゃいいじゃん」
「…………」
ニヤッと笑う直生にフルパワーで絶対零度の視線を送る。
こいつたまに変態なんだよね。
スタスタと直生の部屋を立ち去り、お母さんが寝泊まりしている部屋へと行った。ここには私の着替えなど家から持ってきたものがいろいろ揃ってるのでいつもここで着替えている。
「あら莉音、おはよう」
「お母さんおはよう」
お母さんは鏡台の前に座って髪を整えていた。
その横でパパッと着替えて、髪を二つに結う。うー、寒い寒い。
「あんた今日は着物着るのよ?髪型それじゃあダメでしょ」
「あ、そうだった」
慌てて髪をほどき、櫛で直す。
「花奈ちゃんがあんたの長い髪セットするの楽しみにしてるから。ちゃんとお礼言いなさいよ」
「はーい」
私の髪は腰くらいまである。これをいつもは二つに結んでいるのだが、まとめるのは大変だ。花奈おばさんありがたや。
支度が終わりリビングへと行くと、みんな揃っていた。あけましておめでとうと言い、急いでご飯の支度を始めた。いや、ご飯じゃないな、おせちだ。昨日女性陣が作ったおせちの入った重箱を台所から持ってきて、テーブルに乗せていく。9人分。結構な量です。
だけど、食べ始めるとどんどんなくなっていく。いつもなんだけど、お兄ちゃんと直生の食べっぷりがすごいのだ。直生はわかるが、お兄ちゃんは成人してるから成長期終わったはずなんだけどな。男ってそういうもん?
「莉音、箸が止まってる。食わないならよこせ」
「いや」
あんたのお腹はブラックホールかと突っ込みたくなるほど食べまくる直生。
私は取られないように、栗きんとんがてんこ盛りの皿を直生から遠ざけた。
「うっわ、朝からよくそんなに甘いもの食べられるよな」
「朝からすごい量食べるあんたに言われたくない」
スイーツ大好きな私にとって栗きんとんは正月料理の中で一番輝かしい料理。二番は黒豆。
こんな掃除機のごとく食べてるやつに取られちゃたまんない。
「ほらほら、直生も莉音も喧嘩しないで早く食べなさい。初詣に行くんだから」
「「……はーい」」
別に喧嘩していたわけじゃないけど、孝おじいちゃんにそう言われてしまったので素直に返事をし、食べ始めた。
ご飯を食べ終わり、後片付けなどが済むと花奈おばさんに部屋に呼び出された。そこには既に華南ちゃんもいて、着物を選んでいる。
「莉音ちゃんも選んじゃって」
花奈おばさんが指を指したところには赤、黄色、青、緑、桃色、水色など様々な色の浴衣が。毎年変わるこの着物達は一体どこから用意してきたのか。聞いても答えてくれないのでもう触れないでいる。
「私、青にしようかな!」
華南ちゃんはさっそく決めたようだ。
あんま目立つ色はちょっと遠慮したいので赤と黄色は除外。桃色、水色は可愛い過ぎる。よって除外。じゃあ緑か。
「莉音ちゃんは赤が似合うんじゃないかしら」
「私もそう思う!」
「え、絶対似合わないし。私には綺麗過ぎるよ」
赤の着物には、大きな白い花と小さな金の花がちょうどいい割合で刺繍されていてとても綺麗。絶対に着物に着られるよ、私。
「はいはーい。絶対似合うのでけってーい」
「ちょ」
「じゃあ化粧とヘアセットやっちゃうからこっちにおいでー」
強引過ぎる。
抵抗する暇もなく、化粧とヘアセットをやってもらい、着付けてもらった。
「あ、ありがとう。花奈おばさん」
「いーえ。可愛いわねぇ」
差し出された鏡を見るとそこに私はいなかった。毎年のように思うんだけどやっぱ化粧って怖いなぁ。これだけ化けられれば綺麗な着物を着ていてもなんとか見れなくもないだろう。
「莉音可愛いー!」
「華南ちゃんこそ可愛いよ」
スタイル抜群の華南ちゃんの着物姿は大人な色気を出していて、ああ、成人してたんだよなーと思わせる。
「じゃあ早く男どもに見せに行きましょ!」
「うんうん!ほら莉音行くよー!」
馬子にも衣装。簡単に予想できる未来にため息をつきながら華南ちゃん達の背を追った。




