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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
21/54

着てよ。着ないよ。

 ケーキを作り終えた私達はその後満足するまでゲーム三昧。やっぱクリスマスは強い。レアものがいっぱい出て来て、いつもよりすごく楽しかった。

 私達のクリスマスは作ったケーキでも食べて終了で別によいのだが、家族達はそうはいかない。


「莉音ちゃーん!このサラダ持ってってもらえる?」

「はーい」


 夜になり、みんなが家に帰って来ると、私達女性陣はバタバタと動き出した。


「後はチキンが届くの待つだけか」


 テーブルの上にはずらりとクリスマスのごちそうが並んでいる。お母さんと花奈おばさんがそれはもう楽しそうに作っていた。グラスが足りてるか確認していると華南ちゃんがやってきた。


「りおーん。実は私ミニスカサンタの衣装持ってるんだ。せっかくだから着……」

「嫌だよ。自分で着なよ」

「このサイズもう入らないんだよ。莉音なら入ると思うし」


 サイズ……。私は彼女の体のある一部分を見た。そして自分のを見る。そりゃ、そんなに大きければね。入らないでしょうね。


「入る入らない以前に着たくないんだけど」

「前もメイド服着てたじゃん」

「あれは罰ゲームだから着たの」


 本当にあの罰ゲームは最悪だった。そんなにメイドが見たいなら自分が着ればいいのに。

 あのメイド服罰ゲームの後、私が直生に勝った時にはとことん使ってやった。まだまだこれからも使ってやるが。


「えー、同じようなものでしょー」

「まぁ同じっちゃ同じ……なのかな」

「じゃ、着ようよ!」

「着ないよ」


 むーっとむすくれた顔をされたが、そういうのは彼氏にしてやるべきですよ、華南ちゃん。きっとメイド服でもミニスカサンタでも着てくれるでしょうよ。


「ていうか、華南ちゃんコスプレ趣味ってバレたくないんでしょ?」

「ああ、それならもうバラしたから大丈夫」

「え、そうなの?」


 あんなに必死に隠していたのに何かあったのだろうか。


「えへへ、ちょっとね」

「ふーん」


 まぁ、本人がいいならそれでいいのだろう。

 お兄ちゃん以外みんな知ってたと思うが。


「で、着てよ」

「いや、着ないよ」


 なんかいい方向に話が流れて行ったのになぜ戻してくるのか。


「ね?直生喜ぶと思うよ?」

「いや、別にこんなことで喜ばせようと思わないし」


 私は了承しないし華南ちゃんも引かない。

 ああ、もう(らち)があかないな。どうしようか。

 そう思ってるとピンポーンとインターフォンが鳴った。ボタンを押して「はーい」と返事をする。


「こんばんはー!チキンのお届けに参りました!」


 若いお兄さんの声が聞こえた。ナイスタイミングだお兄さん。


「じゃ、私受け取りに行くね」

「行かないでー!莉音!」


 行くなと腕が私の腰に巻きついてきた。ほどこうとしたがびくともしない。意外と力あるな……華南ちゃん。


「駄々こねないでよ成人女性。ほら、配達のお兄さんが待ってるから行かないと」

「えー、ママー」


 華南ちゃんは花奈おばさんに呼びかけたが、お母さんと女子トークしているようで聞いていない。


「すみませーん!誰かいませんかー⁉︎」


 ああ、お兄さんが困ってる……。外は寒いはずだ。迷惑かけるじゃないか。

 うーん、ちょっとベタだが……。


「あ、お兄ちゃん!」

「え、大輝くん?いないじゃん」


 …………いや、ここは手を離すとこでしょ。がっちり腕回したままなんですけど。


「……わかった。着る」

「え?」

「ただし、二人っきりの時ね」


 手が緩んだ瞬間、ガバッと無理矢理手をどかすと急いで門まで走って行った。

 外に出ると雪が降っていてすごく寒い。今行くよお兄さ……。


「まいどありー!」


 そしてバイクの音が遠ざかっていった。

 え?私まだ受け取ってないんですけど。


「うはー、寒いな。あれ?莉音?お前何してんだ?」

「……お兄ちゃん?」


 お兄ちゃんの手にはチキンの入った箱が。

 途端によぎる、さっきの約束。私、しなくていい約束しちゃった?


「お兄ちゃん……KYだよ」

「やればできる子?」

「それはYDK」


 なんかもうどうでもよくなり、その場に座り込んだ。この後のことなんて容易に想像できる。身ぐるみ剥がされてミニスカサンタコスさせられるんだ。


「ふふ……」

「うわ怖!どうした莉音⁉︎」


 その後、クリスマスパーティーが終わると、予想通り華南ちゃんの部屋で着させられた。


「はい、目線こっちー!睨まないでー!」


 そしてなぜか撮影会が開かれましたとさ。

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