着てよ。着ないよ。
ケーキを作り終えた私達はその後満足するまでゲーム三昧。やっぱクリスマスは強い。レアものがいっぱい出て来て、いつもよりすごく楽しかった。
私達のクリスマスは作ったケーキでも食べて終了で別によいのだが、家族達はそうはいかない。
「莉音ちゃーん!このサラダ持ってってもらえる?」
「はーい」
夜になり、みんなが家に帰って来ると、私達女性陣はバタバタと動き出した。
「後はチキンが届くの待つだけか」
テーブルの上にはずらりとクリスマスのごちそうが並んでいる。お母さんと花奈おばさんがそれはもう楽しそうに作っていた。グラスが足りてるか確認していると華南ちゃんがやってきた。
「りおーん。実は私ミニスカサンタの衣装持ってるんだ。せっかくだから着……」
「嫌だよ。自分で着なよ」
「このサイズもう入らないんだよ。莉音なら入ると思うし」
サイズ……。私は彼女の体のある一部分を見た。そして自分のを見る。そりゃ、そんなに大きければね。入らないでしょうね。
「入る入らない以前に着たくないんだけど」
「前もメイド服着てたじゃん」
「あれは罰ゲームだから着たの」
本当にあの罰ゲームは最悪だった。そんなにメイドが見たいなら自分が着ればいいのに。
あのメイド服罰ゲームの後、私が直生に勝った時にはとことん使ってやった。まだまだこれからも使ってやるが。
「えー、同じようなものでしょー」
「まぁ同じっちゃ同じ……なのかな」
「じゃ、着ようよ!」
「着ないよ」
むーっとむすくれた顔をされたが、そういうのは彼氏にしてやるべきですよ、華南ちゃん。きっとメイド服でもミニスカサンタでも着てくれるでしょうよ。
「ていうか、華南ちゃんコスプレ趣味ってバレたくないんでしょ?」
「ああ、それならもうバラしたから大丈夫」
「え、そうなの?」
あんなに必死に隠していたのに何かあったのだろうか。
「えへへ、ちょっとね」
「ふーん」
まぁ、本人がいいならそれでいいのだろう。
お兄ちゃん以外みんな知ってたと思うが。
「で、着てよ」
「いや、着ないよ」
なんかいい方向に話が流れて行ったのになぜ戻してくるのか。
「ね?直生喜ぶと思うよ?」
「いや、別にこんなことで喜ばせようと思わないし」
私は了承しないし華南ちゃんも引かない。
ああ、もう埒があかないな。どうしようか。
そう思ってるとピンポーンとインターフォンが鳴った。ボタンを押して「はーい」と返事をする。
「こんばんはー!チキンのお届けに参りました!」
若いお兄さんの声が聞こえた。ナイスタイミングだお兄さん。
「じゃ、私受け取りに行くね」
「行かないでー!莉音!」
行くなと腕が私の腰に巻きついてきた。ほどこうとしたがびくともしない。意外と力あるな……華南ちゃん。
「駄々こねないでよ成人女性。ほら、配達のお兄さんが待ってるから行かないと」
「えー、ママー」
華南ちゃんは花奈おばさんに呼びかけたが、お母さんと女子トークしているようで聞いていない。
「すみませーん!誰かいませんかー⁉︎」
ああ、お兄さんが困ってる……。外は寒いはずだ。迷惑かけるじゃないか。
うーん、ちょっとベタだが……。
「あ、お兄ちゃん!」
「え、大輝くん?いないじゃん」
…………いや、ここは手を離すとこでしょ。がっちり腕回したままなんですけど。
「……わかった。着る」
「え?」
「ただし、二人っきりの時ね」
手が緩んだ瞬間、ガバッと無理矢理手をどかすと急いで門まで走って行った。
外に出ると雪が降っていてすごく寒い。今行くよお兄さ……。
「まいどありー!」
そしてバイクの音が遠ざかっていった。
え?私まだ受け取ってないんですけど。
「うはー、寒いな。あれ?莉音?お前何してんだ?」
「……お兄ちゃん?」
お兄ちゃんの手にはチキンの入った箱が。
途端によぎる、さっきの約束。私、しなくていい約束しちゃった?
「お兄ちゃん……KYだよ」
「やればできる子?」
「それはYDK」
なんかもうどうでもよくなり、その場に座り込んだ。この後のことなんて容易に想像できる。身ぐるみ剥がされてミニスカサンタコスさせられるんだ。
「ふふ……」
「うわ怖!どうした莉音⁉︎」
その後、クリスマスパーティーが終わると、予想通り華南ちゃんの部屋で着させられた。
「はい、目線こっちー!睨まないでー!」
そしてなぜか撮影会が開かれましたとさ。




