大輝、ある月曜日の帰宅後。
「お兄ちゃーん、お兄ちゃーん」
「り、莉音⁉︎」
家に帰ってきた俺を満面の笑みで迎える莉音。滅多にない笑顔に俺は思わずデレデレとした顔で抱きつこうとしたが、スルリと避けられた。さすがだ、我が妹。
がっくりと肩を落とす俺をよそに莉音はリビングまで俺を引っ張って行き椅子に座らせ、笑顔で口を開いた。
「私聞いちゃったよー。華南ちゃん好きなのやっと自覚したんだってー?」
なんて眩しい笑顔だ。お兄ちゃんお前のそんな顔久々に見たよ。
……って、それはともかく、『やっと』?
「え、お前、俺が華南ちゃん好きなのずっと前から気づいてたのか⁉︎」
「あったりまえー。直生も前から気づいてたよ。相変わらずバカだねー」
眩しい笑顔で兄に毒づく妹。でも可愛いので許してしまう。
そうか、俺はずっと前から華南ちゃんが好きだったんだなぁ。
莉音は直生からこの話を聞いたのか?でも、この話題は直生とは結構前に……。
「で?で?どうなったの?付き合ったの?」
キラキラした目で俺を見る莉音。若干情報が遅れているみたいだが、そんなところも可愛い。
「……付き合ったよ。二週間前から」
「……え?に、二週間前?直生からこれ聞いたの昨日だよ?」
莉音は狼狽えた顔で聞き返してきた。
昨日は日曜日。
昨日聞いて今、俺に言ってきたのは、俺らは日曜日泊まってそのまま上原家から学校に行くから。ついでに言うと朝は起きる時間がそれぞれ違くて会わないから。
おそらく寝る直前に直生に言われたのだろうが……直生、莉音に言うにも時差ありすぎだったな。
俺も言わなかったのは悪いと思うけど。
「三週間前に直生に背中押されて華南ちゃんに告白して一週間返事を待って、ようやく付き合うようになったんだ」
「…………」
俺がそう言い、莉音はあんぐりと口を開けて黙ってしまったかと思うと今度はブツブツと「あいつ情報が遅すぎだ。金曜に会ったらどうしてやろう……」とか物騒なことを言い出した。
しかし、次の瞬間ハッとした顔でこちらを見る。
「じゃあ、もう一緒に寝てるの?」
ただ疑問を解決したいだけの純真な目。
……それいろいろと問題発言だぞ妹。
「お、お前な。それはよそではあまり聞かない方がいいぞ?」
「聞かないよ。それでどうなの?」
即答された。しかも目が爛々としている。
……ちょっと怖いぞ。
俺は言う内容が内容なのでどもりながら、莉音の両肩をがっしりと掴んだ。
「あ、あのな莉音。俺は直生みたいに……その、頑丈じゃないんだ」
「いや、どっからどう見てもお兄ちゃんの方が頑丈だよ」
はっきりと言われたが、違うんだ!体のことじゃないんだよ!この子はかなり頭がいい子なはずなんだが、ときどきこういう時がある。まぁ、男じゃないからなぁ……いや、だとしてもな。
……ああ、直生のおかげか。直生と一緒に寝ても何も起こらないという信頼があるからこんな風に質問できるんだろうな。
俺は息を深く吸い、吐いた。
「莉音。俺には直生のように好きな子が側で寝てて手を出さない自信がない。一応成人はしているけど、ちゃんと就職して華南ちゃんを守れるようになるまで華南ちゃんとは寝ない」
「……なるほど」
莉音も気づいたのか少し赤くなってコクンと頷いた。
それから互いに何を言っていいかわからず、しばらく黙っていた。
「……お兄ちゃん。おめでとう」
「え?」
「華南ちゃんと結ばれてよかったね」
莉音はそう言い、なんの嫌味もない顔で笑った。
改めて言われると照れるなぁ。
ポリポリと頰をかきながら「ありがとう」と答えた。
後日、こいつの手であっという間に母さんや上原家に広まったのは言うまでもない。
本当にさすがだ妹。




