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ラブゲーム!  作者: 和藤 結希花
12/54

コタツ解禁日。

 11月の下旬。

 朝起きてリビングに行くと、とてつもなく私が大好きなものが存在感を(あら)わにしていた。


「やったー!コタツがある!」


 ぼふっとコタツの中に潜り込み、顔だけを出す。

 うわぁ……、快適。もう出たくない。


 私の家は普通のテーブルしかないのでコタツで暖まることができない。ああ、上原家最高。


「出たな、コタツの(ぬし)


 ぬくぬくだらだらとコタツで暖まる私を見て直生は呆れた顔をする。


「じゃあ、コタツの主の命令。みかん持ってきて」


 そう言ってニコリと笑う。直生は一瞬顔を(しか)めたがくるりと体を台所の方へ向けた。


「自分でやれ、と言いたいところだが、後がめんどくさいから持ってきてやる」

「んふふー。よくわかってるねぇ直生」


『後がめんどくさい』って何のこと?

 まぁ、ご想像にお任せします。


 そんなわけで直生を程よく使い、私はすごく快適でご機嫌だ。みかんを持ってきた直生もコタツの中に入った。


「そういえば、おばさん達いないね。どうしたの?」

「お前、起きんの遅すぎなんだよ。みんなで買い物に行った」


 先程、朝と言ったがちょっとだけ訂正。

 今は午前11時。

 寒いからね。そりゃ起きるのも遅くなるよ。


「ふーん。あんたは行かなかったんだね」


 そう言いながらみかんを()き剥き。


「女の買い物について行ったって疲れるだけだろ」


 答えながら直生もみかんを剥き剥き。


 まぁ、それも本心かもしれないけど。

 大方(おおかた)、私が起きて誰もいない状況で寂しくないようにってとこだろう。


「逆に男の買い物ってどんな感じなの?」

「…………」


 私の問いにしばし黙り、考えている。


「……買う物はあらかじめ決めておいて、それだけ買いに行くって感じ……あくまで俺自身のことだけど」

「へー、無駄がないんだね」


 結構どうでもいいような情報だった。

 あ、でも。


「じゃ、私と買い物はできないね」

「え」


 私の言葉を聞き、直生が目を見開いて固まった。

だって私、寄り道ばっかだし。大型ショッピングモールではすぐスイーツコーナー行っちゃうし。

 いつも一緒に買い物に行く二人は私のそういうスタイルと同じだから気兼ねなくできるけど、直生は無理か。少し残念だけど。


「いや、お前となら別に買い物くらい付き合うし」

「いやいや、無理しないでよ。恋人同士でも合わないことだってあるでしょ」

「あー……だから、お前と一緒に行くことに意義があるっていうか」


「あーもう!このスーパードライガールが‼︎」と少し顔を赤らめながら直生は言った。久々だな、その呼び名。

 そういえば、恋人同士の買い物っていうことはさ。


「それは、デートってこと?」


 直球に聞くとますます顔を赤らめる直生。

 久々だな、こんなに乙女な直生。

 滅多にないのでよく拝んでおこう。


「……まぁ、春になって暖かくなってきたら行こうぜ」


 最後の方はもごもごとしてよく聞こえなかったがデートに誘われたのはわかった。

 しかも、私が寒いのが嫌なのを気遣って春に行こうと言ってくれている。


「そうだね。私も行きたい」


 彼氏にデートに誘われるのは純粋に嬉しいものだ。

 しかもそれは初デート。実は私達、デートに行ったことがない。いつも家でごろごろゲームばかりで。

 なので、私は一つ返事でOK。

 まだまだ寒いから、いつになるかはわからないが楽しみだ。


「ゲーセンでしょー、スイーツでしょー、あ、春なら桜フェアとかやってるから美味しいもの増えるだろうなー」

「はいはい。少しは奢ってやる」

「わーい。さすがだね、私の彼氏様は」


 お礼という訳じゃないけど、みかんの一房をポイっと奴の口の中に。


「はー……俺も尻に敷かれたものだな……」


 もぐもぐみかんを食べながら直生はため息を吐いた。

 前に伊織とのんに言った冗談が本物になってしまったようだ。いや、もう前からこんな感じだったかもしれない。

 少し微妙な気分になったが、まぁこれが私ってことで。


「あんたにもなんか奢ってやるよ」

「随分と上から目線だな。いや、彼女に奢られるのは男としてな……」


 直生は渋るけど、私は勝手にやろうと思う。

 春はこいつの誕生日でもあるし。


「楽しみだねぇ」

「……おう」


 まだ初冬。

 だけど、私達は早く春が訪れるのを待つのであった。

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