痛いけど、あの頃よりずっといい。
『はっじまるよー』の可愛らしい声に私達は身構えた。
太鼓系ゲームの超難易度高いバージョン。 今日は気分を変えてそちらをやっていた。
家のゲーム機なのでボタンをただひたすらに連打、連打、連打。
正直指がイカれそうだが、私は罰ゲームの際、何を命令しようかほくそ笑んでいた。
……その天罰が当たったのだろう。
「イターッ指つった!」
私はゲーム機を手放し親指を握りしめ、あまりの痛さに悶えた。
その横で私と対戦していた奴はというと。
「よし、勝った」
余裕で私に勝ち、パーフェクトを決めていた。いや、彼女苦しんでるのにほっとかないでよ。
睨んでいると直生はため息を吐き、手を差し出した。
「ほら、指貸せ」
「残念ながら私の指は取れませ……イタい!はい、どうぞ!」
あろうことか、私の指をグギギ……と曲がってはいけない方向に曲げてきたので、さっさと指を差し出した。
冗談の通じない奴だ。
「最初っからそうすればいいんだよ」
奴の顔はまったくの無表情だが、怒っていない。呆れてはいるが。
親指の付け根辺りをもみもみと優しく揉んでくれた。気のせいだと思うけど、もう治ってきた気がする。試しにクイッと曲げてみたらめっちゃ痛かったので本当に気がしただけだった。
直生はなぜあんなに連打したのにつらないのだろう。
「経験値だろ」
「あ、声に出てた?」
「バッチリ」
経験値なら仕方ない。
直生は小学生の頃から始めていて、私は中学生の中頃に始めたから。
「もっと早く始めればよかったなー」
努めて明るく言ったつもりだったが直生の顔は曇ってしまった。
「……お前は、仕方なかっただろ」
「……そだね」
頭がおかしくなるくらいにあの頃は勉強漬けの毎日だった。父が出て行くまでずっと。
ゲームなんて一生やらないと思ってたのに今は、やり込んでこのザマだ。
でも、悪くない。むしろあの頃よりずっといい。
「ペンだこが潰れた時の方がもっと痛かった」
「あっそ」
とても短い返事。だけど、揉む手つきがもっと優しくなり、手のひらまで揉んでくれた。
「そこ、痛くないよ」
「俺がやりたいだけ」
ぶっきらぼうに答える直生に「あっそ」と返して、奴が満足するまでじっとされるがままになっていた。




