家財宅急便で送られてきた”嫁”
すいません思い付きで書きました。別連載もあるため不定期です。
ピンポーン
玄関の呼び出しが鳴らされた。ここはアパートの一室である。この部屋の主人たる青年木崎洋介はその呼び出し音で起こされた。今日は大学も主だった講義を取っていない関係もあり、ゆっくりと惰眠をむさぼるつもりだったのに・・・全くなんだ?と不満そうに起きて玄関に向かう。催促して鳴らされている玄関へ
「はぁ~い・・今開けますよってな」
開け放たれた扉の前に立っていたのは
「家財宅急便?・・・なんか頼んだ覚えはないんだけどな・・・」
横にした大型冷蔵庫クラスの荷物を運ばれた、洋介は人違いではないのかと荷物の住所あて名、送った人物、送ったものの名称を確認する。そしてそこで絶句してしまう。
送り先、送った人物はいいだろう。送り先は間違いなく自分の住んでいる場所、名前になっている。そして送ってきたのは自分の祖父である。ここまではいい。次の項目が問題である。そこに書かれていたのは
『嫁』
という一文字だったのである。米ではない『嫁』である。何度も確認をした。目をこすり顔を洗って再度見てもそれは変わらない。何なのだこれは・・・嫁の文字の後にハートのマークが書かれていることも謎だし・・・なんだかイライラしてくる。
(これはきっと・・・嫁入り道具か何かの書き間違いだそう・・・俺の場合嫁ではなく婿なのだが・・・きっとそうに違いない・・・まさかあの祖父であっても・・・・・・・・・)
破天荒な祖父を思い出し・・・なんだか不安になってくる。この大きさだきっと鏡とかに違いない・・・あるいはタンスとか・・・きっとそうだそうに違いない・・・。
そう思いつつも開けるのが怖くなりためらうこと数分ようやく荷物の中身を確認するため梱包を解き。出てきた箱のふたに手をかける。
「南無三!!」
勢いよく開けた其処には
「すーすー・・・むにゃむにゃ・・・すー」
パタンと箱のふたを閉める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええーっと
洋介は自分の携帯を素早く取り出して一つの電話番号をコールした。
やけに南国な呼び出し音がかかる、なかなかでない。早く出ろ!と思ったその時
「わしじゃ!なんじゃ洋介!!」
「わしじゃ!じゃねーよ!!なんだよあれ!じいちゃん!!なんで家財宅急便で『女の子』を送ってんだよあんたは!!」
「おーおー、届いたか?そこな娘はお前の『嫁』じゃ!どーせおぬしの事じゃから彼女の一人もおらんじゃろう?ありがたく思え」
「だーーーー。意味わかんねぇ!!なんだよそれは・・・ち、ちょっと切ろうとするな・・・あっこら!!」
電話を切られた。再度コールしても今度は電波自体がつながらない。
「ああーーもう!!わけえわかんねぇ・・・それに」
祖父が切る前に最後に言っていた言葉がまた問題だった。それは
『その娘はな・・・”訳アリ”じゃよ・・・お前なら救えるな・・・』
そう言って切ったのある。
しょうがない・・・とりあえずこのままにしてはいられない。洋介はようやく重くなってしまった腰を上げて問題の箱に再度手をかける。
やはり女の子である。自分より一つ二つ下くらいの年齢だろうか・・・よくよく見ると見惚れるほど美しい容姿だ。黒いストレートの長い髪に整った顔立ち。そこらのテレビに出てくるアイドルなどかすんでしまうほどである。その娘さんが寝ている。完璧に熟睡しているのだ。
「よくこんな中で眠れるもんだな・・・・・とりあえず起こすか」
娘の肩に手を添えて揺らす。「おーい」と声をかける。数回の後娘の瞼が開かれた・
「・・・・・・・・・・おはようございます・・・・」
「ああ・・・おはよう」
「あなたは・・・洋介様でよろしいのでしょうか・・・?」
「あ・ああ俺は木崎洋介だ・・・あんたは・・・」
「私は・・・立上真由と申します。・・・旦那様」
随分と何というかその容姿も含めて人形のような人だなと思った。美しいんだがどこか空っぽのような感じがする。
「とりあえず。立上さん旦那様はよしてくれ。どうせじいちゃんにそそのかされただけなんだから・・・それよりも君が知っているこの状況を俺に教えてもらえないかな?なんだか俺この状況がさっぱりなんだが・・」
そこでようやく自分もスタートラインに立てるというものだ。
立上さんの話はこうだった。
まず彼女は祖父の”仕事”の途中で会った娘さんであり、しばらくは祖父祖母と一緒に暮らしていたらしい。(この辺孫の俺はまったく知らされていなかった。)そうして何とか彼女の”訳アリ”事情を押さえていたらしいのだが先日祖父祖母が大きな”仕事”を受けることになってしまい。彼女の”訳アリ”事情を押さえられない事態になった。そのため対処ができる俺に任せることになったらしい(相談とか一切なしに)。そしてなぜだかどうせ預けるのならば孫にはいい相手もいない。嫁にしてしまおう。器量や容姿も問題ないし花嫁修行も祖母からお墨付きをもらっている。完璧だ!!(完璧じゃありません!!俺に相談は!?)
そうして今この状態になっているらしい・・・・・なんだそれは?
「・・・・・はあーーーーーー。・・・君はそれでいいのか?立上さん?」
「・・・いいとはどういうことでしょうか?・・・旦那様?」
「だから・・・旦那様はよしてくれ・・・・つまり俺のところに・・・・そのなんだ嫁?に来るとかなんとか・・・」
「・・・では洋介様と・・・私は構いません・・・私は空っぽですから・・・考えないですべてお任せてしまった方が・・・私には・・・」
洋介は自分の頭をガシガシかじるとこう言った。
「・・・どっちでもいいとかどうでもいいとかじゃなく君の意見は?・・・・・・そうか・・・」
絶望しているのだこの娘は・・・自分ではもう何も考えたくないほどに・・・経験しているのだ本当の絶望を・・・そうして自分というものを閉ざしてしまっている。
(空っぽか・・・やれやれ・・・じいちゃん、ばあちゃん・・・俺にどうしろってんだよ)
「とりあえず、じいちゃんたちの”仕事”が終わるまではここにいてもいい・・・そのあとはじいちゃんたちと要相談だ・・・」
「私はお気に召しませんか・・・洋介様・・・」
「お気に召すとかお気に召さないとかの問題じゃないよ・・・立上さん・・・」
「・・・・私の事は真由でいいです・・・洋介様」
「・・・・わかったよ・・・真由さん・・・とりあえず追い出すとかはないから・・・その箱の中から出ない?いい加減に・・・」
今までの会話はいまだ箱の中から体を起こしている真由としていたのだった。
箱を片づけて、入れてもらったお茶を飲みつつ彼女を見やる。
綺麗だなとは思う・・・。俺も男だきれいな女性を見るのは好きだし、こんな娘が嫁になるのだったらうれしいだろう、だがそれよりも彼女の”訳アリ”事情・・・つまり彼女から感じているこれは・・・確かにやばいな・・・。
「それで・・・単刀直入に聞くけど・・・君の”訳アリ”事情って・・・」
俺がそういうと彼女は背を向けて着物を脱ぎ始めた。
「はっ?ち、っちょっと待っって!いきなり!なんで脱ぐ・・・・・の!!」
彼女の美しい白い肌が現れたのだが・・・そこには一部普通の女性とは違うところがあった。
背中のほんの一部ではあるがそれは赤い鱗であった。
「私は・・・・この現代において最後の純潔の龍の生き残りなんです。」
彼女龍神真由はそう口にしたのだった。
10月中にはもう一話書きたいな・・・とは思ってます。