引きニートの新しい仲間
さて、今日をどうやって過ごそうか。金無し、家無し、友達無しの俺に残された選択肢は……野宿か。
「あ、あの!」
これは俺の事ではないな多分俺の後ろの人に言ってるんだ。これで後ろを向いて返事をすると絶対恥をかくソースは俺。
無視して歩き出そうとした瞬間、袖が引っ張られた気がした。そっと後ろを振り向くとそこには俺より少し背の低い銀髪ロングの美少女が上目遣いで袖を引っ張っていた。
「………天使だ」
おっといけないあまりの可愛さに天使が降臨したのかと思ってしまった。
「あ、あの、少しお時間よろしいでしょうか?」
「ももももちろん、おおおおーけーです」
うおおおおおおおお!きましたわー俺にとうとう春が……ありがとう神様俺を見放さずにいてくれて。いや待つんだ俺、一回落ち着こう。これはあれだ変な店に入らせて大金を払わせようとしてるんだソースは俺。
「ありがとうございます。それでは私の泊まっている宿でお話をしましょう」
ななななにー!ややや宿…だと!いや待て勘違いするな、ただ宿でお話をするだけだいやらしいことをするんじゃなくて、お話をしにいくんだ。よしオーケーだ。
「いや、オーケーじゃねーよ!」
なにがオーケーだ。ふざけんな全然オーケーじゃねーよ。お胸がドキドキだよ。心臓爆発しちゃうよ。
「お待たせしました」
「いえ、お構いなく」
「それではお聞きしたいことがあります」
なに、聞くつもりなんだろう?ま、まさか彼女は今いますか?とかきかれるんじゃ……待て俺早とちりは良くない。昔そう聞かれると早とちりして、今は彼女いませんって答えたら相手に何言ってんのキモって言われただろ。そして次の日学校に行ったらクラス中に広がって……今はその話は置いとこう。
「今日の魔物を全て倒したのはあなたでしょうか?」
「あの、あなたというのは辞めて下さい。俺のことはゼロと呼んで下さい」
「申し遅れました。私はリリィと申します」
「それでさっきの話だが、どうして俺だと思ったんだ」
「それはゼロさんが血まみれのフードを脱いでいるのを見たからです」
まさか、あの場面を見ていた人がいたなんて、俺としたことが……いやまだ誤魔化せるかもしれん。
「それは俺がゴブリンと戦ったからだよ。それと俺はまだFランク冒険者だ」
俺は決して嘘をついているわけではない。俺はゴブリンとも戦った。ただゴブリン以外とは戦っていないとは言っていないだけ。
「それは可笑しいですね。今日はCランク以上の人以外は町から出てはいけなかったはずです」
何それ?あのおっさんそんなこと一言も言ってなかったぞ。もう騙しきれんな。
「そうだよ。俺がやったよ。それで?」
「えーとですね。私と一緒にパーティーを組んで下さい」
「嫌だけど」
そんな疲れるようなことを俺がするとでも、俺はあまり働きたくないんだ。寝たいんだ。
「え!もしかして私のこと嫌いですか?」
やめてお願い。涙目で俺のことを見ないで超可愛いから。ここは心を鬼にして俺の信念を通そう。
「分かった。分かったから泣くなよ」
信念よりも可愛い子のお願いを優先してしまった。だって今にも泣きそうな子のお願いを断ることなんて俺には無理。
「ありがとうございます」
いい笑顔だ。
「それじゃ、これからよろしく」
「よろしくお願いします」
こうして新しい仲間リリィとパーティーを組むことになった。そしてゼロのぼっち生活に終止符が打たれた。